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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
134/162

10幕:嘆きの亡者とリンベル冒険団 6

 


 おかしい、、、この悪寒どういうことだ?


 この大広間自体が肌寒いわけではない。

 いくら海中海底にある神殿の地下、それも大きな空間である。

 環境を考えると体感温度は当然低くなる。だから初夏の地上よりも肌寒くなることは仕方ないことだ。

 だが闇組織の生え抜きであるコアンにとってそんな条件など気にも留めないほどのことだった。


 理由は単純だ。

 奴の異常さに気づいてから何かに肌を通して感じる何かに危険な気配を感じているのだ。これまで命を掛けた任務など数多、結果身についた感覚は嘘を語らなかった。しかしそれが何なのかは分からない。当然その理由も原因も分からない。


 その時、対峙する二人を尻目に大きな光の本流が迸った。

 偶然だが空間中に広がった光を遮り奴の影とコアン自身の影が一直線上に繋がった。


【影刻み】


 これでいつでも奴を始末することができる。


 奴の影にコアンの術式が刻まれた。

 これで一瞬で首を落として終わらせる。

 そう決心しコアンは目の前の男に視線を向けた。


 柔らかくて人の良さそうな顔をしている平凡な男だ。

 心底戦うことには向いてなさそうで大成しそうにはないだろう。

 コアンが虫けらをみるような視線で殺気を向けるも誠実そうな目をした黒髪の青年はコアンから目を背けることはなかった。

 痩せ型の体格も肉付きも本来の冒険者とは比べ物にならない。

 本来は冒険者としてはやっていけないだろう人種なのだろう、、、そう思えた。


 しかし奴は一歩たりとも人質たちとの道を明け渡すつもりはないらしい。

 特にあの心底うざいガキたちとは。


 道理でガキたちに懐かれている訳だ。


 後ろには実験動物扱いされたガキたち、そして同僚二人の姿が見える。

 特にこの数ヶ月、成人したばかりのあいつとは年齢が近いこと、業務を手伝ったことも何度もあり多少の親近感は覚えたのは間違いない。隣の年上の先輩には自身の無茶振りを当たり前のように考える上層部とは違いまるで女神様のように感じてきた。


 今そんな二人が何かを会話しているがはっきりと聞き分けるには距離がある。


【だい、、、ま、、、し?】


 しかしコアンは今信じられないことを読み取った。

 内容を把握するなど手段はいくらでもある。

 その一つがたまたま目に入っただけだ。


 ガキが口にした言葉、、、いやその口の動きを読み取ったのだ。

 読唇術など当たり前の技能でありこの距離からでも何の会話がされているのかは把握できる。



【ラズさん心配はいらないわ。蒼兄は大丈夫、、、それにダークシャドーだし、、、】


 ダークシャドー、、、?

 その一言に突如湧いた疑問とともにそのまま会話は続いた。


【ココアちゃん?とにかくブルーベルさんを助けなきゃってココナちゃんまで?】


【だいじょうぶだもん】


【???】


【だってお兄ちゃんは大魔導士だもん】




 、、、大魔導士。こいつが大魔導士?


 意味が分からない。


 どう考えてもありえない。

 世界でも片手に数えられるだけの存在の一人がこの優男!?


 馬鹿馬鹿しい、、、


 コアンはそう決めつけて切り捨てた。


 そして一瞬だけ生まれた思考と先ほどから感じていた悪寒とを綺麗さっぱり消すとそのまま心を閉ざした。

 相手を知ることは己の手を鈍くさせる行為だ。

 これ以上の戯言はもう必要がない。


 心を影に仕舞いコアンは動いた。


 コアンが動いたのと蒼葉が動いたのは同時だった。

 お互いが相手の呼吸と瞬きの一瞬の違いを認識していたことになる。

 少しは認めよう。素人ながら筋はいい。

 だがそれだけだ。


 すでにコアンはその場にはいない。

 音もなく目の前から消失したのである。


 ではどこにいるのだろうか?


 その時、姿を消したコアンは蒼葉の背後にいた。

 影を伝い瞬時に移動したのだ。

 その時間はコンマ何秒にも満たない一瞬の出来事である。


 だからこそ気づいた時にはもう遅い。

 チャクラを込めた苦無はダガーごと切断するだろう。


 これで終わりだ!!


 だがタイミングよく小さな石がコアンの目の前に炸裂した。

 あまりの強さ眩しさゆえに奴自身も何もかもが消失するほどだ。


 閃光弾、、、光の属性石か。

 奴の首元から爆発するかのような光が迸りコアンの両目を遮った。

 だが問題はない。

 感が良いことも自身の動きが読まれていたことも計算の内だ。

 当然、そうくるだろうことも。


 そしてコアンは光の本流の渦中、瞬時にその苦無に纏いしチャクラを伸ばし目下の影を切り裂いた。

 光の本流でできた奴自身の影ではなく己の影に向けて、、、


【奥義 影斬り!!】


 そしてドサリと鈍い音が鳴り何かが転がり落ちた。

 考えるまでもない。


 自分の仕事が終わっただけのことだ。

 ただそれだけのことである。


 そしてコアンは苦無を懐に仕舞い込んだ。


 残すはこの場の残された目撃者を全て始末するだけである。









 信じられない光景に皆が血の気を引いたような顔を浮かべる中、突如、声が響いた。


「あおばおにいちゃんっ!?」

「馬鹿なっ!?」


 そして間髪入れず右から左へと何かが飛んでくる。

 それは細身のナイフに属性石と、、、、あらゆるものが入り乱れていた。

 ただ避けれないほどではないし捌けないほどでもない。


 胴体から首は切り離した。

 だから、、、これはガキたちの!?


 そう確信しコアンは両手に苦無を構え全てを弾き返した。

 ナイフはそのまま飛んできた方向に、属性石も反応させないよう注意しつつ弾き返した。

 その最中に切り離した胴体の行方を念のため視界の片隅に捉えようとした時だった。


 致命的な一瞬の僅かな隙を見せたコアンの元へさらに何かが飛来した。


「ちっ!?」


 それは黒い何かだった。

 炸裂する寸前の至近距離で確認できたのは小さな長方形気味の薄いカード。

 表目に黒く光る謎めいた刻印や文字が刻まれており黒く輝いている。

 影を操るコアンだからこそ認識できた芸当だ。


 ただし一目見ただけで術式を解読できるほど博識ではないしそんな時間もない。

 己の周囲に張り巡らしたチャクラと肌で気配を状況を探ったコアンは思わず舌打ちした。


 くそがっ!!


 謎の刻印と共に黒く光るカードが複数、鋭利な弧を描きながら次々とコアンへと炸裂したのだ。

 炎に雷に氷、数多の属性の多種多様、まさにオンパレードである。

 威力も属性も違うカードが立て続けに見舞った。


「くそっ!!何だこれはっ!?」


 しかしとっさに影を纏った彼女に雑な攻撃は通じない。

 飛来した数多のカードにはそれぞれに込められた力を発するがコアンの堅いガードを突破するまでには至らないようだ。


 それもそのはず纏った影にその全てを吸収させるているのだ。


 ただしそんな致命的な隙を晒したコアンへと突き刺さったのは一振りの細いステッキだった。

 どこにでもあるようなステッキがコアンの胸ごと影を貫いたのである。


「ぐっ!?」


 目の前にすーっと現れたのは胴体から首を切り落としたはずの男だった。


「全く動けないでしょコアンさん?さぁタネも仕掛けもない魔法の数々、、、コアンさんには楽しめたかな?」


 体の自由が効かず片膝を崩れ落ちようとするコアンはその反動で垣間見た。

 自分の影に深々と突き刺さった一振りの鋭利な何かを。

 そしてその柄に視認できないほどの糸が括り付けてある。


 なぜ動けないかなんて分かるわけがない。

 こんな糸もダガーも先ほどから使用していたものと同じもののはずだ。

 ダガーがステッキに?に見えたはず、、、意味が分からない。


 しかしだからこそ疑わざるえない。

 自身の影に突き刺さったダガーに秘密があるのかと。

 だからコアンは思案した。


 他に何かある!?

 道具以外だと、、、忍術?魔術?

 いや、、、待て。そんなことこの場で瞬時に!?

 そもそもこの短時間でどうやって?

 まさか、、、、術を利用された!?


 そう悟ると思考の行く末は簡単だ。これこそまさに影使い、シャドーのお株を浮かぶ行為である。そして最大の侮辱行為以外なにものでもない。


「ぐっ・・・・お前、、、何者だ?」


「言ったでしょ?ただの大魔導士だって、、、でも今はシャドーだけど」


 だからコアンは心の中で舌打ちした。


 くそっ!くそっ!!くそっ!!!!くそがっ!!!!


 そして辿り着いた答えに絶句した。


 こいつ本物だった、、、のか、、、








 青年は瞳を閉じ両手を少しだけ傾けるように顔の前に掲げ大切な魔法の言葉を口にした。その声は、冷たく力強く、、、そして静かに響いた。

 まるで部屋中の全てに空間中の全てに自身の想いが伝わるように。そして届くように。


 この手に力を、、、


「eins、、、」 


 この呪文に想いを、、、


「zwei、、、」 


 この世界に魔法の奇跡を、、、


「、、、drei」 



 心地よく響くフィンガースナップが振りかざされ闇の中へと消え去った。

 その場には何もなかったかのように全てが綺麗さっぱりと。

 ぽつりと佇む一人の青年だけを残して。


「子供たちのあの輝く目が対価なら悪くないかな、、、これにて閉幕」


 青年がそう呟きながら、いつの間にか手にした帽子を瞬時に消してみせたのだった。





心が騒めくラズ(〃ノ∀`〃):ブルーベル、、、サン



●登場人物


ココナ:金髪エメラルド色の瞳を持つ女の子。冒険大好きな純Dランク冒険者。

ココア:黒髪ルビー色の瞳を持つ女の子。探検大好きな純Dランク冒険者。

蒼葉ブルーベル:生活費と育児に苦悩する最底ランクの冒険者。なお商業ギルドではCランク。《縄張り荒らし》の二つ名を持つ。

マロン:黒色の小さいスライム。ココたちの使い魔1。

ヤキニク:仔牛の使い魔。ココたちの使い魔2。

トンコツ:ココたちの新たな使い魔。元の姿は竜の疑惑あり。

ラズ:冒険者ギルド受付にして鉄板美少女。

グミ:商業ギルド及び冒険者ギルドの職員にして才媛の美女。ラズの先輩でありブラクの婚約者。

ギルド長:ラクスラスク冒険者ギルドのギルド長及び商業ギルド長代行

ブラク:『鬼面』という二つ名を持つB級の大柄な冒険者。土下座もBクラス。

キャロ:ラズの王子様2。ローグで泥棒でイケメンのCランクの冒険者。

アイラ:エルフの美女。詐欺師でありCランク冒険者。

ケモミミ少女:神官。Cランク冒険者。

パプリア:ラズの王子様1。数種の魔術を使える剣士の少年。ココアの舎弟。Cに近いDランクの実力者。

コアン(フードの人物):ラクスラスクにて暗躍している。東の国の闇組織『風月』の構成員。影を使う。

謎の男:共和国の聖守護騎士セイントガードで現在は裏組織の下っ端。女好き。

ストーロ:ラズの弟。少し体が弱い。

クラム:ラクスラスクのガキ大将にしてココアの舎弟。ココナと将来を誓う。

リチェ:武器屋の娘にしてココアの舎弟。

小さな少女:ココたちと一緒に街中を爆走した女の子。すうぃーとを参照。


死霊術師:アンデッドを操りし、生み出した者。名乗りをあげる間も無く無残にも惨殺される。

我謝髑髏:コアンの口寄せ獣。妖魔と呼ばれる魔物。人型の大型のスケルトン


ティア:銀色の髪、青色の瞳に白い肌をした少女。純真無垢の箱入り娘。

黒桃:黒の瞳に褐色の肌、短めの黒の髪をした少年。護符術を使う謎の少年。




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