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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
133/162

10幕:嘆きの亡者とリンベル冒険団 5




我を少しずつ取り戻しながらラズはバラバラになった弟を抱きしめた。

深く強く両手いっぱいに力を込めながら。


どんなに痛かったことだろうか。

どんなに辛かったことだろうか。

どんなに苦しかったことだろうか。


何もできなかったという自分への責だけが現実としてラズの心を締め付けた。

胸の奥底から湧き上がるほどに。


この世界では生きるアンデッドとなった3人に残された道は何もない。

ラズが知る限りアンデッドが生かされることはない。

例え神官がこの場にいたとしても救えないだろう。


もし救えるとしても、、、それは魂だけなのだ。

弟であるストーロを、たった一人だけの弟を、血の通った人のストーロを救うことは二度とできない。


だから今は絶対に離したくはなかった。


そんな震えるラズに二人の女の子が近づいた。



「・・・・」(ラズ)

「ココナちゃん、ココアちゃん?ちょっと!?」(グミ)



そして近づいてきた二人がストーロのバラバラになった体を元に戻し始めたのである。

さらに二人に寄り添って見かけたことがない子供達も手伝い始めた。


「おい!?なんでボンド使ってんだよ!?」(クラム)

「何言ってんの?バラバラだからボンドでくっつけてんの!!この私が言うんだから間違いがないの、これで絶対大丈夫なんだから!!」(ココア)

「おぉぉっ!?さすがはココアちゃんすごいもん!!あたまいいもん!!」

「当たり前じゃない!!だって私は子供じゃないもん!!」

「ココアちゃんさっきあおばおにいちゃんにだっこしてもらってたのに!?それにひらきなおりがはやすぎるもん!!それとクラムもすこしはてつだうの!!」(ココナ)

「いやいやいやいやいや!?ぜったいオカシイだろ!?」(クラム)

「どこが可笑しいのよ!?完璧じゃない!!ほらリチェもここを支えて!!」(ココア)

「うん、、、おねえちゃん。おててこっち?」(リチェ)

「うん、そのままだもん」(ココナ)

「いや、、、どうみても右手と左手が逆だよな?」(黒桃)

「何を言ってるんですか黒桃くん!?これは完璧です。これは花まる丸々ですよ黒桃くん!!」(ティア)

「いや絶対上下左右逆だろ、、、」(黒桃)


「えっと、、、とりあえずみんな僕の体で遊ばないでよ、、、」(ストーロ)


少しずつ人の形を取り戻す弟への子供達の必死の想いがラズの胸を締め付ける。


ストーロ、、、


ポロポロと頬を流れる何かをそのままにしながらラズはその光景を眺めることしかできなかった。


ストーロ、、、、、



!?


ぺろり。

その時、巨大な生温かい何かが顔中を覆い尽くした。


ペロリ。


粘着質のある生暖かな何かで撫でられた。


!?!?!?!??!?


はっとしてラズは顔を上げた、、、そこに眼前に何かがいた。

今のラズの涙があふれんばかりの瞳ではあまりに大きすぎて焦点が合わないようだ。

どうやらそれは巨大な何かだ。


何かが顔を、、、、舐めてる!?


あまりの巨体ゆえか、ありえない信じられない光景のためかラズの意識も思考も全てが置いてけぼりだ。

それでも数秒後、追いついた意識がその巨体を端から端へと少しずつ視界に納めていく。

目の前にはとてつもなく大きな牙、爬虫類特有の巨大な瞳、そしてその体格にふさわしいほどの舌。

それらがさきほどから自分の顔を上下左右に愛撫する。


ど、ど、ど、、、、ドラ、、、ゴン、、、、、、どらごん?


ドラゴン!?!?!?!??!?!!?!?


ドラゴン!!!!!!!!!!


どどどどどどふぉdfどふぉd・・・・


・・・・


そのままラズの意識は途絶えた。




「こら!!ヤキニクもトンコツもそろそろ元に戻らないと蒼兄に叱られるんだからね!?」(ココア)

「「!?」」

「おやつ抜きになっても知らないから!!」


黒髪に真っ赤な紅の瞳を持つ女の子がボンドの扱いに苦戦しながら声を上げると、、、ぱふんという音とともに白い靄のようなものが広がった。


中から這い出てきたのは小さな4本足の四獣、そして纏う白黒のまだら模様。

そして何かのカワイイ骨の被り物をした小さな仔牛が慌てたように静かに項垂れていたのだった。












()()()()()()の鋭利なせめぎ合いは何度となく続いた。

しかし互いに致命傷までには及ばない。


駆け出し(ルーキー)の癖に鬱陶しい。


それがふと抱いた感想だった。

死角からの一撃も絡めてからの急所攻撃もかろうじて躱し、そして避け続ける。

そのほとんどが薄肌を捉えたくらいだ。ちょっとした流血は見られるものの致命傷からはほど遠い。


それも時間の問題だが、、、、


目立つ衣装から一転して黒い衣装に変え髪も黒に肌も褐色に変えたコアンはほぼ全てが闇と同化していると言っていい。手持ちの暗器も何もかもが闇の世界と同じ保護色なのだから、素人のこの男にはさぞやりにくいことだろう。


ガキたちとジジイがやり取りをしている中、この男を狙い続けた。

この男が抜忍だということが発覚したことにより自身が予定していた計画は、大幅に修正するに至った。結局血生臭いものへと切り替えることになりそうだ。

そう思案した。


ジジイの残虐性や嗜好性を見る限り早々に確立が低いことは分かっていたことだったので、こうなる予感と予測はしていた。だがコアン自身は不用意な殺生は好まない。ただし殺さないほど甘ちゃんではないし日陰者のシャドーとして相手を始末することに躊躇いもない。これまでこの手で数々の屍を生み出してきたのである。しかし攫った住民の多くは記憶と血だけを抜いて生かす予定だった。


だが目の前のこの男だけは必ず殺ることを誓った。

こいつだけは確実にこの場で首を落とす!!


どこの里の抜忍までかは今は特定できない。

だがコアンがかつていた里もそれを全て傘下に納める東国、そしてその東国直轄の最強の闇組織であり生え抜きである彼女が所属する『風月』は掟を破る者は絶対に許さない。裏切り者には絶対なる死を与えることが血の絆よりも固い掟なのだ。


だから目の前の男をこの場で確実に始末する。


Sクラスの賞金首に間違われたのが運の尽きであり、不運にもこの場で出くわしたこと事態がこの男にとって人生で一番不運なことでしかない。不幸な男だと思うが同情はしない。だからこそ抜忍だという真実を隠せて入れば、まだ少しは生き残れるチャンスはあったかもしれないというのに。


しかしこれ以上、興味がない男の話などさっさと切り捨てるだけだ。


元が最低クラスの冒険者ならば、ここまで粘れていること事態が奇跡だが、どこかの里に所属していた抜人という過去がその幸運を維持できている所以だろう。しかしそれもすぐに終わる。例え毒や薬、術を使わなかったとしても。


少しずつ速度を上げ手数を増やし追い詰めていく。

より深くより鋭利に。


幾度の大きな衝撃の広がりとともに地下室中が明かるく照らされた。

影使いにとって、それは有利にも不利にも働く。

だが光の中だろうが、何だろうが、どんな条件も関係ない。

例え闇に溶け込む黒色の保護色を纏う姿が今は一人だけこの場から完全に浮いていたとしても、、、格上であるコアンにとって格下であるこいつはいつでも殺せる獲物でありハンデにもならない。


それを証拠に今の奴の顔には余裕がなく肩で息をし揺れている。

体力ももう尽きかけているのだろう。

同僚に声をかけることもガキたちの心配をすることすらもできやしない。

そんなことに気を移した途端、苦無か影が奴の首を落とすことだろう。

そうなれば全ての痕跡を影に消し仕事は終了だ。

先に美味しいものを食べに行った相方は大方味わうだけ味わってすでに逃亡し終えていることだろう。


さっさと面倒ごとは片付けて同じように身を隠してから休暇を満喫するつもりだった。

しばらくは神聖国にでも行き賭場で遊び尽くすのもいいだろう。もしくは世界を越えて『蒼の世界』を旅するのも一興かもしれない。


当分は面倒な国の上の顔も怖い頭の顔も見なくて済むのだから。


そんな思考が顔に出ていたのだろうか。

目の前の男が口にした。


「コアンさんは逃げなくていいんですか?」

「は?」


裏切り者の戯言だと思い切り捨てた。

済ました顔で聞いてくる奴の首をそのまま切り落とすつもりだったが。

普段ならば毒を仕込んだ刃を利用するためすでに決着がついていたことだろう。


だが男は倒れない。致命的な隙だけは見せない。


さらに速度を上げ切り刻む。

フェイントを入れつつ全てを急所へと狙いを定め突き刺した。

しかし刺突は僅かに外れた。


ダガーでその切っ先を逸らしつつ半身で躱されたのだ。


ちっ!?

コイツどんどん動きが早く!?良くなってる!?


数度の刺突と斬撃の打つかり合いの後、二人は距離をとった。

仕切り直しだ。


二人を含めた空間がさらなる光を帯びていく。

ジジイたちとガキたちの方はかなり派手にやり合っているようでこの術もガキたちが仕込んだもののようだ。影使いにとってはあまり良くない状況だが問題はない。ジジイたちのやり取りを視界の端に捉えつつ対峙するコアンにまたしても声がかかった。


「気づいてました?」


「・・・・」


「こっちは時間稼ぎすれば勝ちだっていうこと」


「・・・・」


「体が大きいほどバランスを崩すのって意外に簡単なんですよね」


「・・・・」


「まだ成人してなかったんですね」


「・・・・」


「3番目の姿が素顔でしょ?」


「・・・・!?」


「コアンさんも()()()()()()()()()()()()()可愛いのに、、、それと仲間が来てくれたみたいです、ほら?」


「!?」


コアンが突如音がした後ろを振り向くのと男が何かを投稿するのは同時だった。

慣れた手つきでその眼前のナイフを弾き視線を戻す。

隙を多少生じたところで通じることはない。

だが、、、


「お前っ!?」


コアンが凝視した先では我謝髑髏と融合したジジイが倒れこみ、、、そして昇天した。


仲間はブラフ!?あのジジイの役立たずがっ!!


コアンに湧いた感情を知ってか知らずかこの男はなおも語りかけた。

まるで子供に聞かせるように優しく静かに囁くように、、、


「コアンさんもう一度言いますね?」


「・・・・」


「今逃げないと後悔しますよ」


「・・・・」


この時初めてコアンは目の前の男の異様さに気づいた。


何かがおかしい。

何かが違う。

纏う空気が放つ雰囲気の何かが。

まるで人が様変わりしたかのようだ。


だから彼女が自然と口にしたのは必然だったのだろうか。

うっすらと笑みを浮かべる目の前の男のことなど少しも興味なかったはずなのに、、、


「お前、、、何者だ?」


澄ました顔をした男は息を吐きながら口を開いた。


「ただの大魔導士」


その笑えない笑みをうっすらと浮かべる男の戯言などコアンにとって信じるに値しない。

そんな虚言だった。





せっかく変身したのに残念なトンコツとヤキニク(;´・ω・);´・ω・)


蒼葉(・_・?):ヤキニクの頭の被り物?可愛いけど、、、あれ?そんな模様だったっけ?



トンコツ:ココアとココナの新たな使い魔。ドラゴンの骨?こっそりと秘密理に契約したらしい。名付け親はココア。魔力を込めヤキニクの体を借りることで立派なドラゴンに変身できた(元に戻れた?)模様。原理不明。

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