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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
第0章 ホルクスの街と英雄街
13/162

10幕:ココと秘密のルール 『脅威の飼猫愛好会』

 


 この街の男たちは秘密を抱えている。

 それはとても重要な秘密だ。

 この秘密を知り、共有し、そして遵守することはこの街の男にとって課せられた使命である。



 お出かけの日。

 綺麗な青い空がとても清々しい。

 街中でも小鳥たちは気持ちよく鳴いてあちこち飛び回って遊んでいる。そんな小鳥たちを気にすることもなく黒い野良猫が通りの端でだらしなく寝そべっていた。時折子供達や猫好きのお姉さんたちがその野良の頭を撫でにきているのだが、動くそぶりすら見せないほど心地良さそうだ。


 休日ともなれば街中の商店はとても賑わっている。

 次から次へとお客さんが商業区中を歩き安いものや質の良いもの掘り出し物なんかを求め訪れていた。


 蒼葉たち四人も今日は日用品の買い出しと夕食の材料を求め街の一番賑わう通りへと足を運んでいる。


 そんな時、、、

 とある八百屋にてその事件は起きた。

 今日の夕食の食材を手に入れるためだったのだが。


「ローロちゃん今日はルーリちゃんと一緒におつかいかい?」

「お兄ちゃん、こんにちは。みんなで一緒にお買い物です。今日はお友達をお兄ちゃんに合わせたくて連れて来ました。あとお姉ちゃんも連れて来ました。」


 そう言ってローロちゃんはココの手を持って紹介する。

 八百屋のお兄さんは柔らかい眼差しでローロちゃんとココに対応している。


 それから彼女は左手に繋いでいた実姉を前に押し出した。

 柔らかかった眼差しはもうそこにはなかった。


「お兄ちゃんいつもお世話になります。何か良いのないかなって来ちゃいました。」

「ルーリちゃんいらっしゃい。」

「お兄ちゃん」

「いやールーリちゃんは今日も可愛いね。今日さっきねいいオレンギが入ったから少し持ってきなよ。サービスだよ。」

「いつもありがとうお兄ちゃん。お仕事お疲れ様。こんどランチ来た時にサービスするね♪」

「♡♡♡♡♡♡。おっと、ルーリちゃんこれも持って来なよ。」

「お兄ちゃんいつもありがと♪」

「、、、、、、。」


 ルーリさんがデレデレのお兄ちゃんの右手を両手で握りしめた。

 美少女は強い。


 お兄さんのハートを射殺しオレンジっぽい果物と購入予定の野菜をもらうルーリさんとローロちゃん。

 どちらも満面の笑みだ。

 そしてぼそっと自分にだけ聞こえるように、、、


「晩ご飯のデザートゲット!」

「無料で果物が手に入りました。」


 この姉妹、、、できる!!

 これで何件目だろうが、次々と無料か格安で晩御飯の材料を獲得してく様は美少女がいかにこの世に恵まれた存在であるかを物語っている。男の自分などそんな土俵にすら立てない存在なのである。



「それで君は何かね?」


 ドスの効いた声、そして終いには人を殺せそうな感じである。

 彼の後ろからドス黒い何かが噴き出しているのが見える。そのオーラはどんどん黒く、そして荒々しく彼自身をそしてその周囲を覆い尽くさんと漏れ出ている。


「亜麻猫亭の従業員のマイケルです。よろしくお願いします。」

「!?」


「ローロちゃん、ルーリちゃん、それからココちゃん、これでも食べてて。お兄ちゃんはちょっと男同士で込み入った話があるから。」


 果物屋さんのお兄さんは素早くカットした果物を3人に出すと蒼葉の腕を強引に引っ張っていった。

 そして一人だけに聞こえる声で、、、


「てめぇが噂の『縄張り荒らし』か。てめぇにはフルーツは一欠片もやるつもりはねぇ。ちょっと裏にこいや。」


 この野郎、自分にだけ対応が違う。

 右手には包丁を持ち、今にも蒼葉に襲いかからんと見定めているようだ。しかもその声に隠せないほどの殺気を含んでいる。

 もちろん自分にだけである。


「てめぇこの街のルールを知ってんのかぁあ?」

「え?ルール?」

「んだよ!!おい、集まっているな。」

「、、、。」


 果物屋の野郎に連れて行かれた裏手には、多くの男性の方々が集まっていた。

 これまで買い物に行ったお店の男たちがいる。

 それだけじゃない、全く知らない男どもがたくさんいる。

 どう見ても全身に殺気をみなぎらせて、、、


「てめぇが俺たちの亜麻猫三姉妹かいねこの縄張り荒らしとはねぇ?」

「おい教えてやんよぉおぉぉおお!!」

「この街で一番結婚したい、尽くしたい、尽くされたいNO.1、長女の『亜麻猫の女神』、レールナさん。」

「この街で一番の美少女、あの娘に罵られたい、踏まれたい、彼女にしたいNO.1の次女の『亜麻猫の堕天使』、ルーリちゃん。」

「この街で最大の癒し、ココロがほわほわ、ほっこり和みたい、お兄ちゃんと言われたい笑顔NO.1、三女の『亜麻猫の妖精』、ローロちゃん。」

「で?何で俺たちの縄張りにてめぇがそこに入るんだ?」


「「「俺たちの可愛い飼い猫たちの縄張りによぉお?」」」


 最後は恐ろしいほどにぴったりなユニゾンだった。

 蒼葉は瞬時に理解する。

 なぜこんな対応を取られたのか、なぜこの場所に連れて行かれたのか、その理由とそしてこれから起きるであろう予測と惨劇を。


 それで縄張り荒らしなんですね。


 美人三姉妹が営む人気食堂兼宿『亜麻猫亭』に突如、身元不明の男が働き始めた。

 自分たちの承諾なしに、無断で。

 それも長女と次女の年齢に近い自分が彼らに承諾もなく距離的に近い所にいる。 

 おまけに今日はそのうちの次女と三女とお買い物。だが側から見れば妹連れのデート、もしくは家族ぐるみの付き合い。

 そんな憎たらしいほど羨ましい蒼葉を彼らは宿敵とみなしたわけだ。

 たぶんこんなところだろう。


「そりゃ従業員ですので。亜麻猫亭の従業員マイケルです。宜しくお願いします。では私はこれで、、、。」


 素っ気ない挨拶を済ませ蒼葉は振り返った。

 こういう人たちは相手にしてはいけない。クレーマーは相手にしてはいけないのだ。


 だがすぐに回り込まれてしまった。


「あぁ?無料で帰れると思ってるのか、この泥棒猫がぁ。てめぇにはたっぷり教育しないといけねぇよなぁあ。」

「「「なぁ!!」」」


 顔がピキピキとヒクついている。

 ヤクザ張りの強面顔で。

 こんなのココのように小さな女の子じゃなくても怖いはず。


 そんな強面の男たちはこの街の裏ルールを各自がこれでもかと叫びだした。



『ホルクスの街 飼い猫100のルール』

 1.絶対に抜け駆けを禁ず。

 2.二人きりになるようなシチュエーションを禁ず。

 3.個人的な都合で独占を禁ず。

 4.手作り料理等独占禁ず。

 5.飼い猫の生活空間に入るべからず。

 6.飼い猫触るべからず。

 7.無用な接触を禁ず。

 8.頭を撫でることを禁ず。

 9.お兄ちゃんと呼ばれることを禁ず。

 .

 .

 .

 上のような場合、前もって皆に知らせること。

 違反者には極刑を与える。


 長すぎるので以下略。

 要するに飼い猫に近づくな、甘えるな、エサやるなだと。


「つまりテメェはこのルールを違反してやがるんだよ。」

「縄張り荒らしマイケルてめぇをブラックリストに殿堂入りだ。」

「てめぇはこの街の女の子に近づいちゃいけねぇんだ。」

「俺らの飼い猫に手出しちゃいけねぇんだよ。近づいちゃいけねぇんだよ。」


「「「だからてめぇも会員入りだよ。強制的に。」」」


 この街の男たちは息ぴったりだ。

 ため息が出るくらい。


 これだからクレーマーは、、、。

 どう処理しようか。

 すべての罪を知らないマイケルに押し付けるつもりだが、どうしようか。


 彼らが言うことを右から左へと流しながら悩んだ。

 どうやら当分解放してくれる気はないようだったから。あとバカらしくて相手をする気になれなかったから。






 落ち着かなかった。


 お兄ちゃんがそばにいなかったから。


 この場にローロとルーリがいなかったらもっとひどいことになっていたかもしれない。


 ローロとルーリの二人が彼女にとって不安を取り除くことができる人間であったことには違いない。


 ただ蒼葉だけがいないこの状況は彼女にとって何かが限りなく足りなかったのだ。


 だから落ち着かなくなって八百屋のお兄さんと一緒に行ってしまった蒼葉の後を追うように歩いて行った。


「あおばおにいちゃん?」


 路地裏で大きな男たちが蒼葉を囲んでいた。


 それだけではない。


 この路地裏は知らない男の人間で埋め尽くされていた。


 しかも皆大声で何かを叫んでいる。


 猫を甘やかしちゃいけない?飼い猫に手を出したらいけない?


 意味がわからなかった。


 殺してやる???


 そしてたくさんの男たちが叫び出す光景など彼女にとって恐怖以外の何者でもなかった。


 そんな恐怖の矛先があおばおにいちゃんへと向かっている。


 危険だ。


 あおばおにいちゃんが殺される!?


 あおばおにいちゃんが大ピンチだ。


 誰も背が小さい自分には誰も気づいていない。


「あおばおにいちゃん!!!」


 ココは大きな声で叫んで大きな人たちをかき分けてお兄ちゃんに飛びついた。


 男たちは驚愕した。


 小さくて可愛い可愛い金色の子猫がいきなり目の前に現れ憎きクソ野郎に飛びついたのだ。


 綺麗な金色の髪の毛、エメラルドグリーンのつぶらな瞳、、、etcは男たちのハートを鷲掴みにした。


 同時にどす黒い感情が湧き出てくる。


 なぜ自分ではなくあいつなのか、なぜ自分たちではなくあの男なのか。


 自分たちの飼い猫に手を出した憎き雄猫へと。



「貴様、飼い猫に手を出した上に、新たな子猫まで、、、、。」

「なんだこの可愛すぎる子猫は!?」

「新たな子猫だ、いったいどこから迷い込んだんだ?」

「妖精にも負けない可愛さだぞ!?」

「これは『迷い子猫』だ。『ホルクスの迷い子猫』だ。」

「可愛すぎる、餌付けしたい!?」

「しかしなぜなぜなぜ????」

「ぐぎぎぎっぎいぎ、、、。」

「貴様だけなぜ??」

「貴様が!!!???」


 突然の出来事に慌てふためく男衆だったが、だんだんと同じことを呟き出した。

 悪魔の様に、、、


「許さん許さん許さん、、、。」

「許さん許さん許さん、、、。」

「許さん許さん許さん、、、。」

「許さん許さん許さん、、、。」

「許さん許さん許さん、、、。」

「許さん許さん許さん、、、。」



「「「裏切り者は許さんぞ!!!」」」


 男たちの憎悪が最高潮に達したようだ。


 蒼葉の胸に飛びついたココは、いきなりの怒声にハッとして振り向いた。


 そんな子猫を見て強面たちの顔が一気に柔らかくなっていく。


「ひっ!?」


 だがココは恐怖に駆られた。


 この人たちは普通じゃない。


 こんなコロコロ表情が変わるのは人間じゃない、きっと正体を隠したゴブリンか悪魔か魔物なのだと。


 そんなやつにお兄ちゃんは襲われようとしていたのだ。


 すかさずココは魔力を練った。


 次の瞬間、眩しい光とともに男たちが倒れていた。


 ピクピクと体を痙攣しながら、そして白い煙を出しながら、、、。


 光で眩しくして誰にもわからないようにして気絶するくらいの電の魔法を浴びせたのだ。


 しまった、たりなかった?


 一番前の強面の男だけがゆっくりと立ち上がった。


 さすが人間に変装したモンスターだ、たぶん上位の魔物でこの中のボスに違いないとココは確信した。


 なのでココは杖を取り出して、最後の一匹をえいっと頭をぶん殴って気絶させた。





 終わった。


 危険は去った。


 人前で魔法は使っていない。


 人に魔法は使っていない。


 お兄ちゃんと約束した通りだ。


 魔物だったのだ。


 そしてここには自分とお兄ちゃんの二人だけ。


 それも街中でバレないように全員を一瞬で終わらせた。


 保険のために眩しくしてわからなくした。


 とても怖かったけど今度は恐怖に負けずに上手くやれた。


 お兄ちゃんと約束したとおり。


 そしてココはお兄ちゃんを助けたのだ。


「おにいちゃん、まものはやっつけました。」


「、、、。」


「おにいちゃん?」


「ココお兄ちゃんとのルールは?」


 抑揚のない声におそるおそる振り向いたお兄ちゃんの目は全ての光を失っていた。








ココ:あおばおにいちゃんもうだいじょぶー (・`ω・)ドヤッ

蒼葉:(;゜Д゜)ファッ!?

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