まじかるココナッツびたー 『大人の冒険』2
何故だろうか。
どうしようもない想いにキャロはうなだれた。
だがなぜかはわからない。
彼女がいつにも増して怒りを露わにしている。
何が理由なのかわからない。
だから仕方がない。
キャロ自身は何も悪いことはしていない。
しかし目の前に佇む顔なじみの言動はいつもよりドギツかった。
気になる人間との接触を違和感なくやれる機会だった。
そのついでに遊んでいるだけなのに、彼女から届く視線には怒りと嫉妬、それからありとあらゆる負の感情が籠められた視線がキャロに送られ続ける。そして口にすれば罵詈雑言の嵐。口調だけは丁寧なものの中身はとにかく酷い。
信じがたい行為だ。
彼女が気になると伝えたからこそキャロ自身は動いたというのに。
しかも彼が気になって仕方ないと言ったから尚更、積極的に調べるようにしたというのに。
あの蔑んだ瞳の奥は一体何を考えているんだろうか。
キャロには分からない。
隣では自分と同じ犠牲者たちが地獄を味わっている。
だがあれは仕方がない。
キャロとしてもあれは彼らが悪いと確信している。
ギルド長も友人たるブラクもフィアンセという者がありながら遊んでしまったのだ。
少なくともこっそりと遊びつつバレないようにすればよかったのだ。
堂々と遊びに行く宣言をした行為も悪いが、普段の信頼の無さが滲み出ているようだ。
だからこれは責められて当然のことだろう。
「ラ、ラズ?どうしてここに?ここは子供が来るところじゃない!!それに子供は寝る時間だぞ!!」
「あぁぁん!?誰の胸が子供ですって!?」
「ぎゃやあっあああっ!!そんな硬いもので殴られたら明日の仕事ができない!!」
「あぁん誰の胸が硬いですって!?」
「ぎゃあぁぁっ!!ラズハラだ!!モラハラだっ!!ロリハラだっ!!」
「誰が幼児体型だって?」
「ぐふっ!!そんなこと言ってない、、、グミこの子をこの悪魔を、、、」
「悪魔でも胸があるですって!?」
「ぎゃあぁぁっ!!、、、、、、、、」
「それでパプリアくんはどうしてこんなところに?」
「、、、、」(落ちたパプリア)
余計な一言の前に絶壁少女からの折檻は何度も続いた。
瀕死のギルド長はできる部下に助けを求めるのだが、この日ばかりは相手にしてもらえないらしい。部下には部下自身やらなければいけないことがある。
そしてオーガ化した彼女の凍りついた瞳もまた別の方向へと切り替わった。
一方、そのできる部下の方でも修羅場が展開されていた。
「ギルド長死になさい、、、、それよりブラク何か言うことあるわよね?」
「、、、、、」
「うん、それで?」
「、、、、、、」
「ほぉー婚約者を放ったらかしにしてどういうつもり?」
「、、、、、」
「へぇーそんな言い訳通用するとでも?」
「、、、、、、、、、、」
大の大男が地面に頭をつけ必死に謝罪を敢行していた。
その大きな背中はとてつもない哀愁が漂っており誰も視線を合わせようとはしない。
その姿はまさに歴戦のB級だった。
「「「「「、、、、、」」」」」」
一方、別のテーブルでは顔を真っ赤にしたパプリアが先ほどの女性たちの胸元に顔を突っ込んだまま介抱されておりキャロは無償に羨望の思いに駆られた。3人を見てすぐに離脱した彼女たちは流石というべきだろうが、、、キャロは連れ去られた彼を見つめた。
何と羨ましい光景だろうか。
パプリアは先ほどの女性たちに囲まれ桃源郷を味わっている。
ラズの声が彼に届いたはずだが、起き上がることはない。そんな最高の場所にいるパプリアだが、お酒は強くない。だからそのまま潰れたものの人知れず秘境という名の天国へと旅立つテャンスを掴んだのである。
だがこれは流石のキャロにも嬉しさ半分、もったいなさ半分と言わざる得ない。自分ならば絶対に酔ったふりをしてあの状況を最大限に楽しむというのに。あの淫らな膨らみの魔境にはそれだけの価値がある。あそここそまさに天国というところだからだ。
そんな彼の羨望の眼差しに気づいたのだろう。
冷酷なエルフ美女は凍りつくような雰囲気を纏いながらキャロに口を開けた。
「どこを向いてるのあなたは?」
その瞳に生は宿っていない。
だが臆することなくキャロは彼女の問いを突っぱねた。
「ん?君は僕の彼女か婚約者か何かかい?君には関係ないだろう?」
この一言で場が氷付いたことをキャロは気づいていなかった。
この世には絶対に言ってはいけないものがある。それも最悪のタイミングで。
「そうね、、、あなたの言う通りだわ」
「そうさ。僕は独り身だから君に言われる筋合いはない」
一瞬、キャロには背筋が凍るほどの殺気が突きつけられたような気がした。
だがそれはすぐに誤解だと気づけた。
彼女はニコリと微笑みだしたからだ。
そして、、、とある青年の頭を自身の太ももへと導いたのだ。
死んだ目をした青年の方に近づきSっ気のあるレディから彼を強奪し自身の太ももへと添えた。
「あっ!?ちょっと!?」(Sっ気レディ)
「ん、、、君は何を、、、してるのか分かっているのか?」(キャロ)
「あらあなたはいつから私の婚約者になったのかしら?そんなこと言われる筋合いはないわ」(エルフ美女)
そう言い放つとエルフの美女、アイナはブルーベルの頭を優しく撫で始めた。
キャロ自身全力で遠慮被りたいほどの洗礼を浴びた彼も今は昔の話、穏やかな表情を浮かべるまでに復活したらしい。そしてタイミングが良いと言うか悪いと言うかそんな時に彼は目覚めた。
「あれ?アイラさんどうしてここに?」
「ブルーベルさんこんばんわ」
「あっこんばんわ、、ってごめんなさいアイラさん、膝枕?」
「いいんですよ、、、お酒飲んでるんでしょう。このまま休んでてください」
「は、はい」
キャロに見せつけるかのような柔らかな眼差しをアイラは目の前の青年に送った。
それは普段、キャロには絶対に見せない顔だった。
なぜか解せない。
何でだろうか。
キャロ自身はアイラのことは心底、どうでもいい。一々口うるさく事あるごとに衝突する間柄だ。むろん相性は最悪と言ってもいい。腐れ縁とはいえ今日まで一緒にいるのですら不思議だった。
そんな彼女に調査対象の彼が身を肌を許している。どうでもいいのだが、あんなことを目の前でされていては無償に不愉快というか何と言えばいいのか表現することはできないが腹ただしい気がする。
そんな己を切り替えるべく視線をさらに隣に切り変えた。
どうやらパプリアを囲んでいた女性陣の中で今は筋肉のレディが彼を抱擁する番になったようだ。しかしそんな様子を覗いても見つかる答えなどない。
全く分からないな。
そんな感情を二人に浮かべつつもキャロは己を冷静に分析しようとするのだった。
この世の天国を味わいつつある青年(*´∀`*):オトナノボウケン♪,,,,,
恐れ入りますが、、、、蒼葉の天国に賛同したい方、もしよろしければ評価やブックマークやシェア等していただけると嬉しいです。