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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
126/162

まじかるココナッツびたー 『大人の冒険』1

 


「ではそろそろ行くとしようか」


 待ってましたと云わんばかりに一人の青年は上下に深く頷いた。

 偉大なる男の背中はとても大きく誇らしい。

 その背中に付いていけば、きっと望んだ世界を見ることができるのだろう。


 この世界に訪れてからこんなにワクワクしたことがあっただろうか。


 育児に追われ

 懐の寂しさに追われ

 年下の美少女上司の顎に追われ

 頭がイカれた狂言を放つ男に追われ


 そして現実に追われ


 青年は自身を省みることができなかった日々を思い出す。


 全てはこの日のために生きてきたのだと確信した。


 そして、、、、





「「「「王子様だーれだ?」」」」

「ぬぅわぁんだっとぉおおおっ!?」

「やったー!!」

「よし!」

「・・・・」


 陽気な掛け声が響き悲しい嗚咽と歓喜に満ちた叫びが世界を轟かす。

 ただ一人の勝者と地に落ちる敗者への羨望と嫉妬の眼差しは心を抉り取った。

 しかしこれが全てではない。

 繰り返すがこれが全てではない。


 本当の勝負は今から始まるのだから。


「はぁい!私です、3番が5番をハグです」


 可愛い系の女性が右手をちょこんと挙げながら盛り上がりそうな命令を宣告した。


「それとぉ6番が7番の大事なところをキス♪」


「「「きゃあぁぁぁっ♪♪」」」


「キャ、キャロさん?」

「くっパプリア、、、仕方ない」

「いやいや!?ちょっと待ってキャロさん!?」

「、、、、、」(ブラク)

「ははっははははは」(ギルド長)


 瞳の輝きが180度違うであろう歓声が上がった。

 それはそうだろう。イケメン美少年であるパプリア、そしてイケメン美男子たるキャロの濃厚な口付けが見られるのだから。腐りきった腐の心を誰しもが持つわけではないといえども女性ならば、そういったことに少しも興味がないわけはない。いけないという制約があっても、この場では止める者がいないのだ。

 そう!!ここは欲望をさらけ出す場である。


 そして美男子と美少年の甘くトロけるような絡みは、、、、


 そんな光景を安堵した表情で眺めながらギルド長は大笑いしていた。お腹を抱え、そして両隣に美女を侍らかせて。美女の適度なスキンシップと煽てが続く有意義な接待に気分は最高潮である。一方、その隣には大柄で無口な大男が美女を膝に乗せたまま固まっていた。その姿まさにオーガのごとく顔を真っ赤にさせたまま彼女に好き放題されている。その頬にはうっすらと赤い唇の後が残されていた。


 そして一同が大いに盛り上がる中、新顔の青年は地獄の入口を突き進んでいた。

 3番を選んだ青年は5番の目の前の女性をハグしなければならない。


 しかしその女性は、つい先日知り合ったばかりの方である。大盛況に終わったマジックライブショーの後、装備品を調整するとかなんとか言い出して消えた彼女はこの場所に何故か参陣している。このフットワークの軽さといい、なぜこの店の嬢として勤務しているかといい疑問は尽きない。


 筋肉に覆われた厚い体を持つその女性は、子供達の装備品と服やステージ衣装などを手がけてくれたあの方である。分厚い胸元から見える腕は青年の太ももよりも太く立派だ。筋肉の洗礼に恵まれたであろう彼女のちらりと見える腹筋も大胸筋も何もかもが逞しく抱きしめられたら、それだけで昇天いや絶命しそうだ。


 そんな彼女は息も絶え絶えな青年の次の行動を待っているらしい。

 はぁはぁと何と鼻息が荒いことだろうか。まるでその姿はサーブされた皿の上に狙いを定めた猛獣だ。


 くっ!!だが、、、


 だがこの場は王子様の言うことを聞かなければいけない。

 場が盛り下がる行為は最低の行為だった。

 だから青年は恐る恐る両手を彼女の背中に回し優しく抱きしめる。まるで子供を抱きしめるように慈愛に満ちた女神の心を無理やりに持って、、、


 しかしそれがいけなかった。


「これで5回目ねぇ、、、もう私が大好きだなんてぇ、、、はぁっはあっ、、、ぶるーべるちゅあぁんんっ!!!!」

「ぐふぇえっ」


 飢えた猛獣は感激し己の真の力をその両腕を通して解き放った。



 大人の冒険を求めて。

 大人の夢と希望を求めて。

 大人の時間を求めて。


 心から望んだ大人の世界は、、、、、無情にも残酷だった。


「おーい?ブルーベルくん?、、は寝たみたいだから休憩だね」

「美男子と美少年の絡み、、、ぐふふふ、、、ごちそうさまでした」

「じゃあそろそろ次行こ次?」

「はぁはぁはぁっ最高だわ」

「じゃぁ私も休憩するね、、、ブルーベルくんこっちおいでー」

「、、、、」(死んだ目をした青年)


 露出の多い衣装を纏った女性たちがうまい具合に場を盛り上げ、掻き乱しながら各々を観察し巧みに接待を続けていく。ゲームがあまりにも酷い内容の時は、それなりのフォローを必ず忘れないため、そこまで酷い結果に終わることはない。それぞれがプロとしての意識を忘れることはないからだ。


 それが例えアルコールを飲みすぎ顔を真っ赤にさせたとしても。


 一人の可愛らしい女性が死んだ青年の頭を露出した膝に乗せながら果物の盛り合わせから一粒のチェリルの実を掴み取った。人差し指と中指でつまみ取ったチェリルは宝石のように真っ赤で水々しい。


「はぁい、もぉちゃんとお口を開けて、あーん」

「、、、、」

「はぁいお利口だね、、、よくできましたぁ。次は何にしようかなぁ」


 青年のサラサラした黒髪を手に馴染ませながら彼女は誰にも分からないようにニヤリとほくそ笑んだ。さて次はどんな命令でこの男の心を痛めつけようかと考えるだけで火照る顔の緩みが止まることはない。もちろん顔には出さないが。


 彼女が嗜虐心をうっすらと燃やしている一方で、ゲームは進んだ。


「5番が1番の、2番が4番の、7番が8番の胸に顔を埋めるっ!!」

「えっ!?」

「やったーパプリアくんが私の胸に飛び込んでくれるんだって」

「、、、、」(顔を真っ赤にしたパプリア)

「もぉ可愛いんだから、、、おいでお姉さんが優しくして、あ、げ、る♪」


「ははっはははパプリア、この桃源郷は楽しいもんだぞ」

「もぉギルド長ったらおイタはいけませんからぁ」

「おっと手じゃなく顔だったな」

「もぉースケベなんだからぁ」

「パプリアお持ち帰りされてもいいんだぞ」

「もぉーギルド長ったら」


「ブラクさんももっと積極的にきていいんですよ?」

「、、、、」

「ブラクさんかわいい」

「、、、、」


「3番が6番の人を膝に乗せて愛の告白、それから濃厚なキス」

「ん?僕の番かな?」

「やったーキャロさんからの愛の告白」

「僕の膝の上においでハニー、君だけの甘い時間を今から捧げよう」

「きゃっ♪」


 綺麗な年下の女の子が膝にちょこんと座るとキャロは腕を回しながら彼女の顎を自分の顔に近づけ近づけ近づけ、、、、


「君の瞳を僕だけの、、、ん!?ど、どうして君がここに?」


 囁かれた言葉は彼女ではなくあさっての方向へと向けられた。

 そして突然の来訪に一同は凍りついた。


「あらどうしてかしらね?私たちも混ぜてくださらないかしら?」(鋭利な目をしたエルフ美女)

「はぁ、、、ギルド長は全くいつまで帰ってこないのかと、、、それからブラク後で話があるんだけど大丈夫よね?」(冷たい目をしたメガネ美女)

「叔父さんに、ブラクさん、パプリアくん、キャロさんまで、、、この下衆がっ、、、」(光がない目をした絶壁美少女)


 そこにはとんでもない美貌を持つエルフの女性と先日婚約が決まった知的な美女、そしてオーガンのオーラを纏う絶壁の美少女が蔑んだ瞳を向けていたのだった。



 

この世の地獄を味わった青年(0д0∥):オトナノボウケン,,,,,


恐れ入りますが、、、、蒼葉の心からの絶望に同情した方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。


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