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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
124/162

9幕:海底神殿と謎の儀式5

 

 大規模魔法陣の中央に浮かぶ黒い影はその姿を現世に露わにすると静かに口を開いた。


「けけっけけっけ、、、血が足りんのぉ。やはり高貴な血が必要じゃわい」


 数十人の人間たちの生き血をギリギリまで使っても足りないのだという。

 まだ生きてはいるもののこれ以上の摘出は死を招く。

 こんな賭け要素の強いことで自分たちの首を絞めるのも痕跡を残すのは些か問題がある。それなりの人物が調べれば特定こそできないものの概ね把握することはできる。

 それは自分たちへの元へとたどり着くだけの機会を与えてしまうことになり命取りになりかねない。


 二人にとって完全犯罪など当たり前のことであり朝飯前のことだ。しかし今回は当初の予定とは違い故意に情報が漏れるようにしてある。ラクスラスク近郊に不逞の冒険者を集めるように誘導していたのだ。本来は彼らを利用するつもりだったのだが、、、


 今更何を言い出すのだろうかと二人は息を揃えた。


「何言ってんですかこのジジイは?」

「高貴な血?そんなもんねぇだろ」


 二人の率直な意見はいざ知らず世紀の大死霊術師は続けた。


「念のためとは思っての豚に用意させたんじゃぞ」


「旦那を豚呼ばわりかよ、、、」

「用意って何をですかね?」


「そりゃ高貴な血の人物じゃて」


「「?」」


「とりあえず活きの良い公国の王女と皇国の皇子だけは掻っ攫ってやったわ」


「「はぁぁあっ!?」」


 驚愕の真実に二人は仰天した。

 貴族ならまだしも他国の王族を二人も拉致。

 言葉通りならばこのダンジョン内にその二人を監禁していることになる。

 自分たちに秘密裏に。


「あの豚野郎じゃなかった、、、旦那わざと黙ってやがったな」

「はぁぁ、、、これひょっとして私たちに濡れ衣被せるつもりじゃないですよね?」

「いやまさか、あの豚野郎なら、、、ん待てよ」

「とりあえず?」

「けけっけけっけ、、、豚は他にもたくさん用意しといたみたいじゃぞ。結局、送られてはこなかったがの」

「たくさん?あれ?最近、何か世界的大事件ありましたよね?」

「あったな。住民のほとんどが意識不明の重体、、、まさか、、、」


 二人には思い当たる節があった。

 その話題の件とその首謀者らしき人物のことを何度も話したのだから。

 だから二人は揃えて口にした。


「「英雄街壊滅事件」」


 思っていた以上の事態の重さに二人は頭を抱えた。

 至極真っ当に考えてみればこれだけ伏線があったにも関わらず、こんな事態を想定していない時点で自分たちがいかに能天気な平和ボケに陥っていたかを思い知らされていた。


「おいおい冗談じゃねぇぞ。とんだ博打を引かされたもんだぜ、、、あの豚野郎一遍殺しとくか」

「何だか読めてきましたよ、、、私たち二人とも売られましたね。あのクソ頭」


 しかし聞き耳を立てていた死霊術師は戯言として笑い捨てた。

 そんなこと些細なことだからだ。


「けっけけけ、、、それは失敗すればの話じゃろうて召喚ならばほとんど終わっとるぞい。本来の姿に戻すのに必要なのが高貴なる血じゃて。まぁ他にもあるがのぉ」


「あの豚野郎、、、逃げ場なくしやがって最後までこき使うつもりかよ」

「はぁぁ、、、それより逃げ道は用意してますからキリがいい所でジジイに任せて撤退しますよ」


 その時、数体のゴーストが天井より飛来し声もなく囁いた。

 どうやら死霊術師に何かを伝えたらしい。


「よいよい。ほら客が来たようだじゃぞ。さっさと案内してこんか」

「このジジイ今ココで殺してやりましょうかね」

「けっけっけ、、、もう何べんも死んどるわい。若人はせっかちで叶わん」

「まぁ俺様は少々楽しめたら後はトンズラさせてもらおうか」


「けけっけけ、、、じゃあ締めと行くぞ。【召喚】」


 死霊術師が放つ魔力とともに床一面の魔法陣は流れ出た血を取り込みながら不気味に輝くのだった。







 体が重い。

 頭がクラクラする。

 視界が揺れるしぼーっとする。


 でも歯を食いしばって何でもないふりをした。

 多少反応が遅れるのは仕方がなかった。


 蒼兄が出してくれた甘いケーキやお菓子がなかったらきっと立ち上がることはできなかっただろう。何とか力を振り絞りいつものように歩き続けた。


 彼女の母が放った制約の呪術のようなもの?は彼女の体を十二分に侵した。

 結果、何が起きたかは分からない。

 ココア自身それを確かめる余裕がないほど衰弱していたからだ。

 顔には出さないものの不調は余計な汗となって体を濡らした。

 子供が掻くには異常なほどの汗の量だった。


 きつい、辛い。


 そんなこと口が裂けても言いたくなかった。

 ただかなり長めの休憩を取ることになったのが幸いだった。黒桃とティアの二人の登場のおかげで長い休憩が取れたし気が紛れたものの体調だけは一向に戻らない。

 ココアにとってこれ以上動き回るのは限界に近かった。

 すでに思考もおぼつかないし顔を上げるのもやっとだ。

 でも作り笑顔だけは崩さない。


 それは同じ制約を少しだけ肩代わりしたであろうココナにも言えたことだった。幸いなことに彼女にかかった制約による負担はほとんど見られなかったようだが、、、


 結局、甘いおやつに舌鼓を打った後、二人は横になったヤキニクの暖かな体に小さな体を埋めたまま丸くなる。マロンがクッションになってくれているおかげで地面から熱を奪われることもない。


 ココナの意識は消えるように途絶えたのだった。

 それからどれくらい時間が経ったのかは分からない。


 寝静まった二人を見守りながらパプリアは当たり前のことを口にした。


「やっぱり子供なんですね」

「ほんととんでもない子供たちだよね、、、異次元過ぎる」


 パプリアから見ても、そして蒼葉から見ても二人への印象は変わらないらしかった。

 小さな女の子ながらも大の大人を簡単に手玉に取るほどの魔法や魔術をポンポンと放つ二人も、こうして見れば普通の子供であり何もおかしなところはない。


 そんな二人の可愛らしい寝顔は柔らかな空気を作り出していた。


「でもブルーベルさんも人のこと言えませんからね」(呆れ顔のパプリア)

「え?それより黒桃くんとティアさんのことは、、、」(疑問な蒼葉)

「あとはギルドに任せましょう」(キリッとしたパプリア)

「、、、、」(ココア)


 少しだけ戻った意識の中でココアは重たい瞼を少しだけ抉じ開けた。

 そこにはうっすらと開けた先に渋い顔をする蒼葉と変な視線を送るパプリアの姿があった。

 二人で何かの会話をしているらしい。


 それから視線を横にするとさらさらした金色の髪が至近距離に写った。

 ココナが自分の方に頭を傾けているらしい。

 どうやら先ほどから肩が少しだけ重かったのは彼女のせいらしかった。

 くすぐったいけど伝わる体温はとても温かい。

 そんな当たり前に安堵しつつココナは視線を少しだけ泳がせた。


 蒼兄とパプリアは今だに二人で会話している。

 ほかにテイアも黒桃も傍で同じように静かに寝息を立てている。

 ココナは隣にいるしマロンもヤキニクも傍にいる。

 たまにコツコツ当たるヤキニクの頭が冷たくて気持ちがいい。

 いつの間にかオシャレな被り物をしておりとても強そうだ。


 後でちゃんと褒めてあげなくちゃ、、、


 ココアは肌に伝わるドクンドクンとした鼓動を感じながら重たくなる瞼への抵抗を止めたのだった。




 そして強い何かの衝撃音とともにココアは目が覚めた。

 幸いなことに先ほどよりも少しだけ体調はマシであるらしい。あれだけぼーっとしていた意識がはっきりするほどには鮮明に感じるからだ。2、3重に見えていた指も今は一つのままである。

 今なら完璧に親指を取る魔法ができそうだ。


 それよりも何が起きたのか、、、まだあまり言うことを聞かない体を動かしながら視線を泳がした。


 広くて薄暗い空間の中、地面には幾何学的な紋章が広がっており赤く輝いている。

 何かの魔法陣のようだ。

 しかもとびきりの大規模術式でありそれはすでに作動してしまっている。いやまだ作動中であるのかもしれない。


 その輝きが飛んだり消えたりとチラついている。

 誰かが魔法陣の上を飛んだり跳ねたりしているのだ。時折何かがココアの方へ飛んできたりとしており随分と派手に動いているらしい。


 自分の頬に飛んできたものを目にするとココアは意識を改めた。


 違う。誰かが戦っているのだ、、、と。


 赤い鮮血を撒き散らしながら。


ブルーベル(*´ω`*):お昼寝の時が一番楽。



●登場人物

ココナ:金髪の女の子。スイッチ大好き。

ココア:黒髪の女の子。出っ張り大好き

蒼葉ブルーベル:料理とピアノと奇術が得意な元大学生。生活費と育児に苦悩する冒険者。

マロン:透明な黒色の小さいスライム。ココたちの使い魔1。

ヤキニク:小さな仔牛。ココたちの使い魔2。

ラズ:冒険者ギルド受付にしてまな板美少女。

グミ:商業ギルド及び冒険者ギルドの職員にして美女。ラズの先輩でありブラクの婚約者。

ギルド長:ラクスラスク冒険者ギルドのギルド長及び商業ギルドギルド長代行

ブラク:《鬼面》という二つ名を持つB級の大柄な冒険者。顔は怖い。

キャロ:ラズの王子様2。ローグで泥棒でイケメンの凄腕冒険者。

アイラ:エルフの美女。詐欺師であり凄腕冒険者。

ケモミミ少女:神官。凄腕冒険者。

パプリア:ラズの王子様1。数種の魔術を使える剣士の少年。ココアの舎弟。

コアン(フードの人物):ラクスラスクにて暗躍している。表向きは行政部の派遣社員、裏は東の国の闇組織『風月』の構成員。

謎の男:共和国の聖守護騎士セイントガードで裏組織の下っ端の女好き。

ストーロ:ラズの弟。少し体が弱い。

クラム:ラクスラスクのガキ大将にしてココアの舎弟。ココナと将来を誓う。

小さな少女1:武器屋の娘にしてココアの舎弟。

小さな少女2:ココたちと一緒にヤキニクに乗り街中を爆走した女の子。

死霊術師:アンデッドを操りし、生み出した者。名乗りをあげる間も無く無残にも惨殺される。

死神:レイスの最上位種との噂がある霊体の魔物。鎌を持つ。

レイス:主に人型の霊体の魔物。ゴーストの上位種。

ゴースト:霊体の魔物、人型、動物型、多々あり。

スカル:骨だけの魔物。人型、動物型あり。




恐れ入りますが、、、ココナとココアの二人が心配な方、パプリアのように現実から目を背けたい方、もし良ければブックマークや評価、twitter等でシェアしていただけると嬉しいです。




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