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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
117/162

8幕:魔法のカードと初心者の洞窟2

R2.6.2 少し修正しました。 

 間間から差す木漏れ日は実に心地よい空間を作っていた。

 そのため林の中でもふかふかな緑の絨毯が広がっており腰を下ろすには問題ない。

 アンデッド系の魔物が全く出現しなくなったこともあり、一同は洞窟直前の茂みの中で休憩をとった。


 ちびっ子たちの探索呪文の結果、周囲に魔物はおらず、またゴースト系といったアンデッド系の魔物から強襲を受ける時に現れる魔力溜まりといった違和感も見られず。そのため張り詰めていた緊張の糸はぶつりと途切れ再度集中するには時間が必要らしい。


 結局、今のうちに簡易な食事を取ることが最適であると大人組は判断したのだった。




 蒼兄が宙から取り出したのは白いクリームが添えられた黄色とオレンジのふわふわのケーキだった。クリームの下には何かの果物が添えてあり水々しくて美味しそうな香りがふんわりと漂っている。どちらの香りもお腹を刺激するには最高のものだ。


 そんなケーキのデザートはいかにも3時のおやつにピッタリだとココアは思った。


 ゴクリと喉が鳴るのを感じながら一口づつフォークで口の中に運んでいく。


 もちもちしてふわふわなケーキはとろけるクリームと一緒に口にすると極上の美味しさである。そわそわとしたココナがこっちを見ながら目を輝かせており自分を見つめていた。だから期待通りだと軽く頷いて返事した。

 そしてそのケーキを彼女も頬張りだした時、蒼兄が何かこっそりと内職をしているのに気づいた。


 ココアは背中越しに近づき静かに観察した。


 左端を閉じた小さな紙の束には見たことがない文字が刻まれている。

 たぶん知らない文字である。

 何と書いてあるのかは、、、わからない。


 そうココアは判断した。


「蒼兄ケーキ食べないで何書いているの?」

「これはね簡易なステータス表を書いてるんだよ。あとで楽しめるだろうと思って」

「ステータスねぇ、、、お兄何に使うの?」

「すてーたす?じがわかんないもん!!」

「まぁ違う国の言語だしね。えっと簡単に説明すると、、、」


 蒼兄は書いている内容をざっくりながらも教えてくれた。

 隣ではココナだけでなくマロンやヤキニクもなになに?と耳を傾けている。

 そしてケーキのせいで顔が溶けているパプリアも近づいてきてちょこっと遠慮がちに覗き込んだ。


 やっぱりみんなも気になるようだ。


 リストNO.1


 氏名:ブルーベル

 レベル:5

 職業:マジシャン

 装備:中古のダガー

 中古の投げナイフ

 仕込み道具

 初級の防具コートタイプ

 魔物皮のバッグル

 マジックカード


 スキル:ブルーベ流戦闘術

 ブルーベ流魔導術

 笑顔の魔法

 料理

 ピアノ


「じゃーん。何かいいでしょ?」

「おぉーっ?ココもココもしりたいもん!!」

「仕方ない、、、お兄ちゃんから見たステータスを発表します」

「「「おぉぉぉっー!?」」」


 そんなやり取りの後に蒼兄が一枚だけカードのような紙の束をめくると楽しそうに続けた。

 少しだけ集めの無印だったものに可愛いイラストとともに読めない文字が書かれている。

 蒼兄も中々センスがいいと思う。


 リストNO.2


 氏名:ココナ

 レベル:5

 職業:魔導使い

 装備:魔法の杖

 小さなナイフ

 魔導布の服、ぼうし、靴、

 魔法のバッグ


 スキル:ブルーベ流戦闘術 初級

 封印されし魔法 中級

 魔術 初級

 使い魔召喚


「ふふふ、、、こんな感じかな」

「ふういんされたまほう?か、かっこいい!!」


 ココナだけずるい。

 それに何だか無性に悔しい気がしたのは気のせいではないだろう。

 だから蒼兄の左手の裾をぎゅっと掴んでちょっとだけ引っ張った。

 するとどうだろうか。

 はいはいと言わんばかりのぽんぽんと大きな掌が頭に返された。

 温かくて自分より大きな手はそのまま自分の頭を左右に往復した。

 ちょっと嬉しくなったけど悔しい気持ちは変わらない。


 それから蒼兄はにこりとしながら続けた。

 どうやら次は自身の番らしかった。


 リストNO.3


 氏名:ココア

 レベル:5

 職業:魔導使い

 装備:魔法の杖

 小さなナイフ

 魔導布の服、ぼうし、靴、

 魔法のバッグ


 スキル:ブルーベ流戦闘術 初級

 封印されし魔法

 封印されし魔術 中級

 魔術 初級

 使い魔召喚 




 悪くはない。

 悪くはないけどやっぱり何だか悔しいような気がした。

 自分の実力と評価はこんな低くは見積もれないはずだからだ。

 でも私は子供じゃない。

 だから湧き上がる悔しさを無理やり沈ませると気になる一言に注目した。


 マジックカード?


 思い当たる節はない。

 一緒に旅するようになってから一月以上経つがそんな魔道具を使ったことはなかった。

 もし本当なら一度見てみたい。


 それから次はマロンたちの番だねと言って次のカードを書き始めた。

 マロンもヤキニクも自分のことが気になるらしくソワソワ、フリフリしている。

 そしてさらに近づいてきたパプリアもワクワクしながら事態を眺めているようだ。


「蒼兄、マジックカードって持ってたの?」


 そんな中で私は気になった一言を口にした。

 うちのような貧乏パーティは魔導具を手に入れる機会は滅多にないはずである。


 まさか借金をして購入したのだろうか。

 それとも誰かに騙されて、、、

 いやまさか一人でダンジョンに潜っていたのだろうか。

 もしくは偽物を本物と言い張って、、、


 でも蒼兄がマジックカードというのならそれは本当なのかもしれない。

 あの時の映像魔石で見た光景が只者じゃないということを物語っている。

 つまり蒼兄は《大魔導士》であり、そんな人間がはっきりと口にしたのである。


 そして不安と期待とが入り混じったココアの前にそのカードの束はぽんという音とともに出現した。






 ギルドブースの掲示板に高額の賞金首の手配書が掲示された。

 間違いなくここ数年で一番の超大物なのだろう。

 本当にSクラスならば金額も億越えは確実であり実力も犯罪歴も考えようがないほどのバケモノだ。しかしそれは今は関係ない。


 今現在ラズにとってそれどころではなかった。

 大切な家族が行方不明だと目の前で消失したのだと叔母から告げられたのである。ここ数ヶ月

 の水面下で起きていたことがついにラズの前に現実となって直面したのだ。

 ラズは震える手に無理やり力を込め歯を食いしばって立ち上がった。

 そして涙が止まらない叔母を奥の椅子に座らせてから引き出しから一枚の紙面を取り出した。


 平時より見づらくなったが所定の記入を済ませ自身のサインを記してからギルド長室まで駆け込んだ。

 そこにはラズと同じように辛辣な表情を浮かべたギルド長の叔父が佇んでいた。


「ラズ、、、」

「叔父さん、、、ギルド長、緊急依頼を!!」


 これ以上は言葉にならない。いやできない。

 目尻に涙が溢れてくるのがわかる。

 不安が不安を呼び心がどんどん圧迫されていく。

 今崩れればもう立ち上がれないだろう。

 ストーロのことを思えば思うほど心が締め付けられていくのだから。


 それでも冒険者ギルドの職員としての立場こそが今、ラズをラズとして石壁のように支えているのだ。


 だからラズは必死に訴えた。

 そんな彼女を叔父であるギルド長は優しく受け止めた。


 そして力強く宣言した。


「ラズ、グミと一緒に情報の精査と今動ける冒険者の選定に当たれ!!非常事態宣言だ!!その間に緊急指名依頼を出す!!急げ!!」

「はぁいっ!!」


 力強く飛び出したラズは真っ先にグミの元へ駆け寄った。

 彼女はちょうど手配書片手に何か複雑な顔を浮かべているところのようだった。

 それが突如、怪訝な表情に変わる。

 しかし今はそんなこと気にする時ではない。


「先輩、、、たった今、非常事態制に」

「ラズ来ちゃダメっ!!」


 その時だった。

 突如、二人の足元の感触が消え去ったのだ。

 まるで世界がこの世から消えてしまったかのような、、、

 そして気がつけば全てが黒一色に染まり、、、


 やがて意識が少しずつ消えていくような感じがした。


【陰遁影喰いの術】


 そんな声が聞こえたような気がしたが、、、重くなる瞼を前にラズの意識はぷつりと途切れた。

 そしてそのまま闇の彼方へと消え去っていくのだった。



何かを企む蒼葉o(`・ω´・+o)キリッ!!:しばらくカードゲームで大人しくさせよう。


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