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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
116/162

8幕:魔法のカードと初心者の洞窟1

 

 管理された林の中道の至る所で大絶叫が響き続けている。


 輝くナイフが飛び交う度にその都度発生するのだが誰も気にする様子はない。

 時折、見えない何かの糸で知らぬ間に消滅することもあれば燃えるダガーが赤い弧の軌跡を生み出し対象ごと消し去った。


 結果、その連鎖が終わるまで数分にも満たなかった。

 当然、当人たちに焦り見られなかった。

 今回成り行きで参加した彼以外は、、、


「二人ともお疲れ様。タイミングバッチリだよ」

「当然よ!!私が補助に徹してあげてんだから問題はないわ」

「ココもココもがんばったもん!!」

「二人ともえらいえらい。はぁーそれにしてもゴーストって案外簡単に倒せるんだね。お兄ちゃんはあーいうのはちょっと気持ち悪いけど普通の魔物よりは楽な相手で助かるかな。魔石も落ちるみたいだし、、、でも常日頃こんなのと戦ってるなんて、、、パプリアくんは凄いね」


「いえ、、、、」(パプリア)


 雑魚ではないがゴーストである。

 駆け出しの冒険者は苦戦は必須だろうし、それに通常は物理で倒せない輩を楽な相手とは、、、

 それも十数体の群体である。

 臨時で付きそうことになったパプリアが騙し手を食らったような顔をしていると黒い髪を靡かせた女の子の声が響いた。


「蒼兄次っ!!」


 突如として魔素の流れが集約し黒い稲光となって弾け飛ぶ。

 そして中から異形の形をしたものが這いずり出ようとしている。

 そんな魔物へと閃光のように動いた者がいた。


「ブルーベ流、、、一輪刺し!!」


 異形のものの少しだけ出かけた顔面へ向けダガーによる突き出しが炸裂した。結局、這い出ることなく塵となった消え去る輩は一体何だったのだろうか。そして抜く動作で後ろに迫ったゴーストの首と胴体を切り離した。


 唖然とした表情を浮かべるパプリアに困った顔の蒼葉が近づいてきた。


「パプリアくん、、、これ絶対おかしいよね」

「絶対おかしいです」


 パプリアは即答した。

 自分を打ち倒した幼女-------絹のようにながれる髪をサイドに束ねた女の子。

 もう一人の幼女-------金色のふわふわした髪を二つおさげのように纏めた女の子。

 その二人が光輝く何かで暴れている。


 二人のことは言うまでもない。

 彼女に師事して以来、そして魔物討伐へと同行して2回目。

 同じような光景を見てから確信を持ってパプリアは答えた。


 そんなパプリアに気乗りしない表情のまま蒼葉は口を開いた。


「『嘆きの洞窟』までに行く道のりがすでに中級以上のような気がするし、、、何よりアンデッドって弱いはずないよね。相性が悪くないからこそ今は大丈夫だけどちびっ子達にトラブルか何かあればこっちが詰むでしょ」


 ブルーベルさんは状況を的確に捉えているらしい。

 こんな魔物たちの群れの中で震えることなく戦え、かつ戦況を見極めながら先を見つめる。

 絶対おかしい。

 二人の幼女はすでに論外である。

 何も語ることはないだろう。

 世界の深さと広さ、つまり現実を知る機会だと思えばよかった。

 だからこそ彼女に師事した。


 でも、、、

 今魔力を使った素ぶりを感じることができなかった。

 魔力なしでゴースト系を撃破?

 この人が最低ランクでいること事態がすでにおかしい。

 どこが駆け出しの初心者なのだろうか。


 謎だらけの彼に向けてパプリアは思い思いに口にした。


「ブルーベルさんどうしますか?」

「正直帰りたいです。でもいくつか確認しなきゃいけないことがあるから『嘆きの洞窟』までは確認しようと思うけど、、、パプリアくんいい?」

「念のために持ってきといた聖水もありますし、、、師匠たちが元気だから入口までなら大丈夫だと思います。ただし予定してた夜営は止めた方がよさそうです」

「そうだよね、、、チビたちが嫌がるけどそうしよう。これ絶対ブラクさん案件だからギルドに報告決定してから後は任せよう。それにしても久しぶりのクエストで何でこんな目に、、、」


 パーティの臨時の同行メンバーにパプリアに白羽の目が立ったのはつい先日のライブの日である。ステージ上で繰り出されるマジックとダークシャドーたちの手に汗を握る熱い立ち振る舞いは心が馳せるような感じがした。そして気がつけば麦酒が進み視界が揺れていたような気がする。


 その後、挨拶しに来てくれた師匠とその保護者とのやり取りでいつの間にか皆で魔物退治に行くことが決定しており、隣ではお姉さんに任せなさいというドヤ顔のラズさんの顔を最後にパプリアは記憶が飛んでいる。後日、その彼から必死に謝れたのだがパプリアには逆に申し訳ない気持ちになった。実は師匠であるココアとクエストに出かけることはこちらが頭を下げてでもお願いしたいことだったのだ。


 ただ問題は初心者専用のダンジョンである『嘆きの洞窟』までの道のりがすでに初心者用ではなくなっていることだろう。

 状況は刻一刻と変化しており不測の事態が生じれば切り抜けるのは難しくなる。

 先日のレイスの群れとの戦闘の件もあって今の己の力量と限界はすでに把握している。


 この場で冒険者として一番経験を積んでいるだろう自分が選択をミスすればパーティメンバーに死人がでるかもしれない。しかし保護者である彼が安全第一を理由に危険を可能な限り避けたいと思うのは仕方ないことなのだが、二人の力を知っており、そして現状を見ればまだまだ余裕がありしばらくは簡単に切り抜けられるだろうとも思える。


 だからパプリアはブルーベルを見て静かに頷いた。

 そして蒼葉は重たい口を開いた。


「リンベル探検団注目。移動時は前衛、お兄ちゃんとマロン。中衛はココナとココア。後衛はヤキニクとパプリアくん。戦闘時はヤキニクは二人の護衛とそれから索敵。ココアとココナは魔導中心の遊撃スタイル。全体への通信呪文を忘れないで。最初の迎撃はお兄ちゃんとパプリアくん。あとは臨機応変に対応。マロンは援護中心ね。不足の事態があれば撤退します」



 ココは静かにその作戦を聴きながら横目で手をつないでいる彼女に視線を泳がせた。

 もちろんこの時、ココアがニヤリとしていたことは言うまでもない。


 クエストはまだ始まったばかり、、、冒険はまだ終わらないのだから。





 間も無く昼に差し掛かる頃だった。

 先日よりも強くなった日差しはラクスラスク中に降り注ぎ1日の過ごしにくさに大いに貢献した。そして偶然だったと思わずにいられないほどのことが起こった。

 風がピタリと止んだのである。


 ラクスラスクは海に近いこともありほぼ一年中風がほぼ止まない土地である。そのためその風の力を利用して各地に風車が建てられ穀物を砕いたり小川の堰を動かしたりなどなど大自然の恩恵とともにあった。だからこそ第一次産業から第三次産業まで程よく発達したのである。一方で遊泳可能な砂浜辺りは地形上、風の影響を受けることは少ないのだが、そこだけは例外である。


 特にこの時期は弱くなっても無風になることはないはずだったのだが、、、


 長袖のシャツ姿だったラズは肘上まで捲り肌を見せながら固唾を吞み続けた。

 額に浮かべた汗をハンカチで拭いながらも、この地に今何が起きているのか事態を把握するために先輩のグミと共に昼を抜いて応対し続けている。


 今、行政棟には町中の人たちの多くが詰め掛けていた。

 きっかけは些細なことから始まっていたのだろうか。


 町の人たちが神隠しにあったかのように突如として行方不明となった。

 新聞や会報で騒がれていた件である。

 最初はぽつりぽつりと。それがここ2、3週間立て続けに起きていたので誰もが魔物の餌食になったのだろうと推測し自分ではなかったことに安堵していた。


 しかし事態が急変したのである。


 詰め掛けた人たちの話によると昨日のうちに少なくとも十数人も消え去ったとのことだった。そして今朝になってさらにその倍が消え去った。

 詳しく話しを聞いてみると誰もが影の中、もしくは暗闇の中に引きずり込まれたとの証言が多く見受けられた。

 大人から子供まで、、、どうやらそこに似通った法則性はないらしい。

 ただ十中八九、この辺りで急激に増加したアンデッドの件との繋がりだと確信したラズは考えられるだけの類似点を探すことにした。


 いやそれしか今はできなかった。


 同じ施設内で働く行政組の職員たちと連携し情報を主査した結果、ラズの推測は正しいだろうということが考察された。

 しかしただそれだけである。

 今、ラクスラスクに何が起こっているのか判断するには得られる情報が圧倒的に足りていない。隣席の先輩であるグミを見渡しても静かに首を左右に振るばかりである。またギルド長も不足の事態のためかわからないが今は手を離せないでいるらしい。


「ラズちゃん!!」


 そんな時、受付に顔を真っ青にした叔母が詰め寄った。

 彼女はギルド長の奥さんでラズとストーロが住むアパートの大家でもある。

 小さい頃から世話になっており彼女が心から信頼できる一人だった。


 その彼女は声を震わせながらラズへと恐る恐る口にした。


「ラズちゃん、、、ごめんね。叔母さん何もできなかったごめんね」

「どうしたの?おばさん落ち着いて、、、、ゆっくりでいいから何があったか話して」

「ごめんね、、、」


 受付から飛び出し泣き乱れる叔母の背中を摩りながらゆっくりと椅子に座らせる。

 机前に掲げていた札はすでに休止中に代えている。

 起点を効かせたグミが取り替えたのだ。


 ラズが心から感謝しながらも意気消沈とした叔母から受け取った言葉は信じられない言葉だった。


「いきなり地面に黒い渦が発生したの、、、そしてストーロちゃんとクラムくんたちが、、、」

「えっ?」

「消えちゃったの、、、」


 それは昨年に母を亡くしたラズにとって恐怖以外の何ものでもなかった。

 身に寒気を感じ肌も何もかもが凍りつくような気がする。

 肘上まで捲っていたにも関わらず風がないにも関わらず暑さを感じなくなった。


 ラズがどうしようもない現実を受け入れきれないでいる時だった。

 唐突に現れた女性が不自然にも自分に声をかけたのだ。

 本来その仕事は彼女ではない職員がやることだったのだが、、、ラズは全く気づかないでいた。


「ラズさんここに新しい手配書置いときますね。それから行方不明者のもついでに。どこかの国のお姫様が誘拐されたそうで、何でも黒い地面の渦に引きずり込まれたらしいですよ」


「えっ?」


「それから手配書のはもっと凄いですよ久しぶりの賞金首でSクラス。どうやら誘拐の件に関わってるみたい。その国から追加報酬があるようですし、、、この人どこかで見たことあるような気がするんですけどねw」


 そうラズに囁くと彼女は笑顔でその場から立ち去った。

 その声は無性に喜びに満ちていたような気がしたのは気のせいだっただろうか。

 上ずったような声だけがラズの中に印象に残った。

 先日、問題を起こしたばかりの派遣の彼女がなぜ上機嫌だったのかは分からなかったのだがそんなことを考えている時ではない。

 叔母の言う通りならば、、、ストーロの安否を考えるだけで吐き気がしそうだ。


 震えだす手を必死に抑えつけながらラズは考えた。

 しかし思い浮かぶだけの最適解が導き出されることはなかったのだった。


ブルーベ流始祖:o(`・ω´・+o) インスピレーションと思いつきは大事!!



●登場人物


鈴宮蒼葉:魔法と魔術を身につけることが夢な新人冒険者。自分関連のことは思いつきで名前を決める。

ココナ:魔法が得意な女の子。こっそりとつまみ食いを続けることを決める。

ココア:魔術が得意な女の子。蒼葉に黙って何か企み続けることを決める。

マロン:黒くて小さなスライムの使い魔。頭の上に乗り続けることを決める。

ヤキニク:小さな仔牛の使い魔。毎日お昼寝することを決める。


ラズ:冒険者ギルドの仕事ができる新人受付嬢。王子様をターゲットにすることを決める。

グミ:商業ギルドの受付嬢。上司も部下も操るのを決める。

ラクスラスク冒険者ギルド長:元B級の凄腕冒険者。仕事をサボることを決めている。


キャロ:C級のイケメンローグ。映像魔石を手に入れることを決める。

アイラ:C級の美女。ブルーベルに何かすることを決める。

謎の少女:C級の謎の美少女。何か行動を起こすことを決める。


パプリア:D級の冒険者。ココアの舎弟になることを決める。




恐れ入りますが、、、童心が疼き続ける蒼葉に賛同していただける方、もし良ければブックマークや評価、twitter等でシェアしていただけると嬉しいです。




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●新作です。 ロリコンドMの人形使いは幼女に顎で使われる!!

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