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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
115/162

7幕:リンベル冒険団と飛び込みライブ6

 


 程よく薫る麦酒の香り、香ばしくローストされた魚介類、辛めの香辛料で味付けされた魔物肉煮込みなど酒と名物料理たちが無性に絡み合い鼻腔とお腹にこれでもかと突き刺さった。


 弾ける泡の爽快さで喉を潤しながら白のフードを被った少女はテーブルに並んだ料理を次々と口にする。そのどれもが麦酒との相性が良くジョッキもフォークも止まることはない。

 それでも数分後、少女は一人だけ口をつけている状況に辟易しながら呟いた。


「二人とも食べないんですか?これ美味しいですよぉー」

「「・・・」」


 返ってくる言葉はないが二人の様子が先日よりも何だか明るいことに気づいた。

 というよりそんな空気を嗅ぎ分けたのだ。


「もぉ二人とも何か良いことでもあったんですかぁー?」


 違いに相反した男女はお互いに明後日の方を向き目線を合わせようとしない。

 この二人はいつもこうなのである。

 お互いにどこが気に入らないんだろうか。

 常日頃からこうして反発し合う上に、子供のように言い合うこともあれば大人同士でマウントを取り合うかのように行動することも多々ある。

 主張するだけ主張して違いに譲ることはない。


 それがお互いの色恋沙汰になるととんでもない辛口になることも多い。


「いい人を見つけたの」

「ほう?」

「刺激的な出会いだったわ」

「ふ、ふん。どうせいつもの獲物の話なんか面白くもない。君の男を見る目はナンセンスだ」

「何を言うのかしらこの鈍感男は、、、」


 はぁー、、、口を開けばすぐこれである。

 どうしてこの二人はいつもこうなのか。


「それより私も素敵なレディとの出会いがあったんだ。それに面白いものを手に入れた」

「あ、あらいつものナンパの話?」

「女性の話だが小さなレディたちの話さ」

「あらあなたロリコンだったのね。犯罪者は檻の中に入るべきだわ」

「ん?君の知的センスのなさは発言にも現れるらしい」


「「、、、、」」


 はぁー、、、

 売りことばに買いことば。

 どうして毎度お互いに衝突し合うのだろうか。

 出会って数年以上だと言うのに二人の距離と関係は依然として変わることはなかったらしい。

 透き通るような水色の髪を持つ彼女は誰もが頷くほどのエルフの美女である。

 そして対峙する彼も何人もの女を甘い甘言で軽く口説き落とせそうなほどの美男子である。

 そんな二人が揃えばどこでも注目の的になるのだが、どうやら今日は騒がしくてそれどころじゃないらしい。


 いつもの空気に嫌気がさした彼女は話題を変えることにした。

 手始めは簡単なことからだろうか。


「それよりキャロは中々良いお店を選びましたねぇー。料理もお酒も美味しいですよぉー」

「それには同感だわ。このハーブの効いた魚介類のローストはすごく美味しいわ」

「そうか。それは良かったよ、少し前に知り合ったこの町の冒険者仲間の親御さんのお店なんだが。ちなみに今日は先ほどのその可愛らしい小さなレディたちから招待を受けたのさ。それと僕はこのシチューが最高だと思うんだが、、、」

「あなたまさか、、、本物だったの?」

「ん?何か誤解されてる気がするんだが、、、」

「今の流れだと誤解されてもおかしくないですよぉー」


 怪訝な表情を浮かべるが冗談だと気づいているだろう。

 彼が苦笑いしながら両手を上げて分かっているさとサインを上げた時、店内が暗くなり前方のステージの方から人が飛び出てきた。


 二人に気遣うあまりライブの始まりを聞き逃したらしい。


 語部のお嬢さんが後ずさると軽い爆発とともに何かが出現した。


 小さな女の子二人とこの辺りでは見かけない格好をした男性が一人。

 そして黒い小さなスライムと仔牛が一匹ずつ。


「それよりも何かいいことでもあったのかしら?」

「ん?同感だ。今日はいつもより尾の調子が良さそうだ」

「これはきっと男ね」

「ん、同感だ。その耳の挙動不審さが疑わしい」

「「さぁ、、、」」

「お姉さんに、、、」

「お兄さんに、、、」


「「話してごらんなさい」」(キリッと)


 はぁ、、、

 どうして二人はこんな時だけはすごく竜があうのだろうか。

 そして他人のことに関しては鋭すぎる。

 自分たちのことに関しては鈍い癖にもう少し自分たちのことに振り分けてもいいのではないのか。


 そんな煩わしい感情に呆れ果てながら少女は二人に視線を向けた。

 興味津々な二人の瞳は少女から少しも逸れることはない。

 まるでドラゴンにでも見つめられた時のような圧力である。

 たぶん誤魔化しても根掘り葉掘りと二人は問い詰めてくるだろう。

 この二人の息が揃った時ほど、そして飲んでいるときほど厄介なことはないのだ。


 ただ二人の言うことは真実だった。

 だから少女は本心を口にした。


「少し前からずーっと人を探していたんです」


「「それで?」」(息がぴったりの二人)


「それでですね、、、」


「「それで!!」」(さらに息がぴったりの二人)


「たった今、、、、見つけましたよぉー、、、」


 少女の視線の先は遠くのステージの上へと向けられた。

 ピカピカの魔石灯のライトで照らされた壇上では今もなおダークシャドーという物語が演じられており時おり見せる『彼の魔法』が何よりの証拠だった。


 久しく見ることがなかった少女の笑顔に二人は微笑ましい顔を浮かべた。

 そして確信した。

 これはまるで恋する乙女の顔ではなかろうかと。

 大人としてこの恋を後押しするべきではなかろうかと。


 この時、少女は気づいていなかった。


 二人が今宵最高の酒の肴を得たということに。

 そして二人が黒い笑みを浮かべていたことに。






 ライブが終わり三人は知り合いの顔を見つけては挨拶に向かった。


 目的はもちろんあれである。

 手始めは最前列の席に座るこの町で一番有名な男である。


「ぎるどちょうー!!」

「この手があったのに気づかないなんて。ココナ、金づるじゃなかった今日のご飯が見つかったわ」(ぼそり)


 にっこりと笑うココナの声はとても嬉しそうだった。

 ニヤリと微笑むココアの表情はとても黒かった。

 最前列に位置するギルド長の顔は赤く、そして笑っていた。

 テーブルの上には数多くのジョッキが散乱しており食事には邪魔になりそうなほどだった。


「はーははっはは。ちびどもかっこよかったぞ!!ココナもココアもよく頑張ったな!!それとココアは渋くて良いキャラを突いている、、、まるで俺みたいだ」(口元がキラリ、、、ギルド長)

「二人とも本当に頑張りました、偉いわね」(グミ)

「ココアちゃん、ココナちゃん、次もまた見たい!!」(ラズの弟ストーロ)


 いきなりの自身への褒め言葉に戸惑ったのかココナはそっぽを向いた。

 その顔は赤みを帯びており正面から見れないほど気恥ずかしいようだ。

 それでも彼女ははっきりと口にした。


「と、当然よ。でも、、、ギルド長だってカッコよかったわよ。それにあんなに盛り上げてくれるとは思わなかった、、、」

「ぎるどちょうのやくずるいもん!!かっこいいもん!!」

「はーははっはは。子供にこんなことを言われたらギルド長としては報酬をやらなきゃならんな」

「「わーい♩」」(笑顔になる二人)

「今日は色々と助けていただいてありがとうございました」(蒼葉)

「せめてもの罪滅ぼしだよ、、、今日はお腹いっぱい食べるといいさ」(ギルド長)

「二人とも良かったね、、、ギルド長からクエストが出ました」(蒼葉)

「ぷっwそうね、、、ご飯をいっぱい食べるクエストかしらね」(グミ)

「はっ!?きんきゅういらい?」(ココナ)

「緊急クエストね」(ココア)

「それで大家さんとラズさんは固まったまま動かないんですけど、、、?」(蒼葉)

「この二人似た者同士でね、もう少ししたら動き出すから。今はまだ夢の中なのよ」(グミ)

「「、、、」」(妄想中の二人)

「夢?」(蒼葉)

「まぁそういうことだから君もたっぷりと楽しみなさい。なんならこの後もどうかね」

「ほぉそれは、、、『大人のクエスト』ですね」

「はーはっははは。そうだとも。また後で声をかけるからゆっくり楽しむといい」

「楽しみです」


 蔑んだ視線がグミからギルド長へと飛ばされるが蒼葉は気づかないふりをした。

 世の中には触れてはいけないものもある。

 触らぬドラゴン祟りなし。


 ココには何のやりとりだったのかは分からなかった。


 それから一同は立て続けに知人たちへと声をかけた。

 武具屋一家では親父さんが号泣していた。

 美人の奥さんは今だにそれを宥め続けており大変そうである。

 そしてココたちより幼さそうな女の子はココアと無事師弟の契りが結ばれた。


 その後、ココたちは漢の女の人に可愛がられ涙を流されながら抱きしめられた。

 今日着ている衣装は全てこの人が用意してくれたらしい。

 蒼葉お兄ちゃんがお尻を撫でられて逃げ出したので、ココもちゃんとお尻を撫で返したのだ。

 なぜだか二人とも可愛い可愛いと泣いて喜ばれたのでびっくりである。

 そしてさらにびっくりなことがあった。

 ちゃんとお礼の挨拶も伝えたところ急に立ち上がりテーブルの上の品々を一気にお腹に入れたのだ。なんとこれから今日中にココたちの装備品の調整をするのだとういう。

 今からはもう寝る時間なのにココには本当にビックリである。


 次に商店街の人たちにお礼を述べると色々な褒め言葉をいただけたのだった。

 中でもクラムの様子は凄く、キラキラの瞳を真っ直ぐに向けて二人を賞賛した。

 そのクラムの勢いがすごいのでココはとても胸が踊った。

 だからココはクラムに飛びついたのだ。

 そしたらクラムが顔を真っ赤にして逃げ出そうとしたのでココは魔術で拘束してからいい子いい子してあげたのだ。なぜかクラムが気絶したのでココはびっくりである。

 今日はびっくりの日である。



 一方、にやにやとクラムを見つめるココアはクラムを少しだけ虐めようとしてふと後ろを振り返った。そこには怪訝な表情で舎弟2号を見つめる蒼葉兄の気配を感じたからだ。

 だからココナは慌ててカウンターを指差した。

 その席にはブラクの姿が見えておりちょうどいい。


「ほうこれが例のプロポーズの男の子、、、これはちゃんと挨拶をしなければ」

「蒼葉兄、あっちにB級冒険者のブラクがいるから挨拶に行くわよ。後は、、、あれキャロたちはさっきまでそこにいたのにどこいったのかしら。まぁいいわ、パプリアもカウンターにいるから紹介するわ。そうそうこのお店ブラクの実家なんだって、だからお兄よろしくね」

「ココア、お兄ちゃんはクラムくんと大切な話があるんだ」

「だめお兄!!今は営業がさきでしょ!!」

「お兄ちゃんはまだ二人のお付き合いを認めたわけじゃない」

「蒼兄!!子供の言うことなんだから」

「せめて紹介だけでも」

「蒼兄今はこっちが先!!」


 しかめっ面を浮かべる兄の手を無理やり引っ張ってココアはブラクの元へと突き進んだ。

 隣には舎弟1号のパプリアもいるし尚更ちょうどいい。

 それにカウンター越しに店長やらスタッフにも顔が売れるだろう。


「ほら蒼兄ったら!!」


 ココナから視線を外さない蒼葉兄の腕を掴むとマロンとヤキニク、そして落ち着いたココナを呼び寄せ店内を駆け巡った。恥ずかしいからほとんど他任せだったのだが、、、


 結果、帽子の中は思っていた以上の重さになったのであった。


やるときはやる子ココア(๑• ̀д•́ )//:営業は大事!!


恐れ入りますが、、、ココナとココアに癒されたい方、ついに大人の冒険に行けるかもしれない蒼葉に賛同したい方、もし良ければブックマークや評価、twitter等でシェアしていただけると嬉しいです。




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