表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
111/162

7幕:リンベル冒険団と飛び込みライブ2

 

 店内中央の空いた箇所に作ったテーブル8つくらいの臨時スペース。

 そこはロープで仕切られ誰も入れないように遮られていた。

 さらに段差が付けられた特設ステージは店内のとこからでも注目を浴びることだろう。

 天井に仕掛けられた魔石灯のスポットライトが直接照らされるように調整されているからだ。

 すでにステージを取り囲むようにテーブルや椅子は整えられている。

 飲食をしながら楽に見れるようにと店側の配慮が伺える。


 その最前列にラズとグミは位置取った。

 そしてラズの隣には彼女の弟、ストーロがニコニコしながら大人しくしていた。その逆には大家の叔母が静かに料理に舌鼓をうっている。

 一方グミの隣には、『鬼面』ことブラクの存在はなく、、、どこからか駆けつけたギルド長がラガーのジョッキを片手に胡座をかいていた。


 先輩の婚約者であり小さい頃からの顔なじみである彼は図体が大きいので最前列だと邪魔になる、そう言ってカウンターの片隅で一人寂しくお酒を嗜んでいる。時折、ラズやグミが視線をそちらに向けるとちゃんと合図を返してくれる辺り優しく律儀な性格がにじみ出ているようだ。


 一方のギルド長は家族特権だとかギルド長特権だとか笑いながらズカズカとラズたちのテーブルに押しかけてきたのだ。その顔はすでに分かるくらいには赤く、そして何処と無く緩い。

 どうやらハシゴしてきたらしい。


 こんな時は近づかないでほしい、、、ストーロの教育に悪いからだ。

 仕事が終わってまだ1時間だというのにこの早さには呆れるばかりである。


 お店がオープンして30分くらい。

 最初こそ僅か数人だったにも関わらず、すでにお店は満杯だった。

 すぐ後ろを見渡せば先日知り合った深緑の帽子や服を着ていた王子様が座っていた。

 ラズの視線に気づいたのが、王子様スマイルを向けられて乙女の心は最高潮に変わった。

 最初は少しだけ感じていた緊張感も次第に強くなる一方である。

 それも乙女が穿つ感情がはるかに優るのだ。


 しかしその隣に視線が移った時ラズの淡い心は砕け散った。

 本来ラズがいるべき場所に先輩のグミにも負けない美人が座っているのである。

 それも自分よりも遥かに格上の恵体。

 間違いなく相手はSクラス、自称Cクラスのラズの子供体型では叶わないほどの戦力だろう。


 しかも二人の距離が間違いなくただならぬ関係であることを彼女は瞬時に悟った。

 他に白いフードを被った小さな子供のような人もいるらしかったが彼女の心には他者を判断する余裕はない。


 戦わずして崩れ去った乙女心から目を逸らし、、、ふらふらと視線を泳がせながら店内を観察する。

 ほとんどが顔見知りであるため彼女に気づいた誰もがアイコンタクトを送ったり手を掲げたりグラスを傾けたりしてくれた。ほかにも小さな娘さんを連れてきている武具屋さん、ストーロの親友のクラムくん家族に近所の住民やよくお世話になる商店街の人たち。

 それから子供服店の店長さんはラズに熱いウィンクを送ってくれたし、おもちゃ屋さんの従業員さんはこちらを見て愛想笑いで返してくれた。


 ここにいる6割くらいのお客さんはラズとグミが1日かけて声がけした結果である。

 地元の人間が大部分で残りはだいたい冒険者だ。ラズやグミがいかに町の人たちや冒険者、ギルド会員に好まれているかを物語っているだろう。そして残りは新規でふと立ち寄った人たちだろうか。


 あれだけ面白いことをやれば流石に集まってくれるのかな。


 オープンテラスでも新たに詰めかけた人たちでいっぱいである。その合間を忙しなくスタッフたちが往来している。彼女たちはラズやグミたちと同じ年頃のスタッフであり、わざわざ二人が声がけしてお願いしたのである。残念なことにこのままだと今夜は休む暇もなく働きづめになるだろう。


 そう確信しながらラズはこの中に新たな王子様がいないか視線を泳がせたのだった。

 手持ちの紙の束だけには視線を移さないようにして、、、





 演劇風マジックライブショー。


 ラクスラスクに立ち寄るまではマジックショーで日銭を稼いでいる。

 蒼葉とココナとマロン、ヤキニクによる『蒼葉の魔法』と『ココの魔術』を利用した簡単なマジックショーである。

 その際、まだピンと来なかったらしいココアには裏方に徹してもらい見学してもらった。


 毎回違う場所とはいえ同じような構成のマジックだけでは自分たちに飽きがきてしまう。

 かといって他にできることは少ない。今後の課題ではあるのだがその数回も外の広場を使い演じた。

 当然ながらピアノはない。

 そもそもピアノは大変貴重なものでお店に置いてあることはないようだった。

 楽器なしで即興といえども生活のためにはやらざる得ない。


 だからココナに刺激を与えココアにものめり込めるようにと試行錯誤した。


 蒼葉が何とかできることは料理に、ピアノ、そして『蒼葉魔法』という『奇術』と中指との戦い以来使えるようになった『変な魔法』の組み合わせである。

 本物の魔法や魔術は、、、残念ながら、、、次元魔法?時空間魔法?なにそれ?

 ちびっ子二人が凄いなんて言うもののそれは間違いである。

 あのちびたち二人が凄すぎるのだ。

 魔法とは火や氷、風を使ったものであり決して花を咲かせたり耳を生やしたりするものじゃない。自分のあんな得体の知れない魔法など、、、ないに等しい。

 使えるようになったと糠喜びしたものの冷静に考えれば複雑な気持ちである。


 常時使えるその奇妙な魔法は、、、


 ・距離や大きさに関わらず物を出現させる、消失させる、保管する、取り出せる

 ・瞬時に着替える


 大まかな事象はこのくらいだろうか。

 しかしこれだけでも常には使えずほぼ安定しないし制約も多いらしい。


 結局、必死に考えた結果。

 ステージショーということに落ち着いた。

 子供達が食いつきそうなもの、そして見る人たちが共感できるもの、そして魔導の力と奇術を基底に前提に辿り着いた答えである。


 二人のことを思えば、引き出しを広げるためには色々なことにチャレンジするべきである。

 もちろん内容は数回に分けるしマジックだけの内容も構成の中に含めている。


 現世のバイト先だった『マジカルドロップ』でも飽きが来ないように奇術と演劇などなど色々なものを取り入れてうまい具合に混ぜながらパフォーマンスを演じてきた。ベースとして奇術を外さず音楽だったり演劇だったり歌だったりと。


 そして蒼葉が今回選んだ題目は寝る前にちびっこたちによく聞かせている物語の一つである。


 ダークシャドー物語。


 言わずと知れた現世での大人気ダークファンタジーであり、絵本から始まったシリーズ物である。書籍化、アニメ、映画化と展開され子供たちから大きな子供達に到るまで大ブームを引き起こした。メディアミックス化されてからは幅広い層で認知されている。


 その物語は少年がアサシンとして闇夜にて刃を振るうところから始まる。


 東の国の小さな集落で少年は生まれた。

 その集落は全てがシャドーと呼ばれる裏世界で暗躍するものたちの一族だった。

 里に生まれた者は全てがシャドーと呼ばれるアサシンとしての道を宿命づけられる。そのためその少年もシャドーとなるべく小さな頃から厳しい訓練を積んできた。


 時に仲間たちと切磋巧みに競い合い時に友情を育みながら少年は立派なシャドーとして世にでるはずだった。


 だが一族の中に裏切り者が現れ里の家族たち、そして肩を並べた仲間たちのほとんどが殺されてしまう。その裏切り者はあろうことか異国の敵対勢力が仕組んだ闇の組織の構成員だったのである。


 震える少年の前で仲間たちは次々と命を散らしていった。

 まるで彼だけに見せつけるかのように残虐に。

 かつて友だった幼馴染は真っ赤に染まった刃を舐めながら少年に背を向け姿を消したのである。


 目の前で何もできなかった少年はわざと見逃されたのだ。

 全てが終わった時、シャドーは本物の復讐を誓う。


 一族の仇を討つことを。

 敵対勢力を根絶やしにすることを。

 己の手で敵となった幼馴染を下すことを。


 やがて少年は東の国で出会った仲間たちとともに異国の闇との激しい戦いに落ちていくという。


 蒼葉が大好きな物語であり、リアさんや月華ちゃんがどハマりし暫くライブに毎回取り入れたほどの魅力的な物語である。


 ちびたち二人に話をしてあげてからというものの二人はマロンとヤキニクや近所の子供たちを巻き込んで毎日シャドーごっこ遊びをしているらしい。


 ココナはシャドーという職業に憧れ、ココアはダークシャドーの親友でライバルである陰陽士に目を輝かせていた。ダークシャドーと呼ばれる主人公に共感するのは理解できるし、パーティの頭脳かつライバルの陰陽士を選択したのは中々渋いチョイスである。この娘分かっていると蒼葉は頷いてしまった。実は自分の推しもその陰陽士である。


 シャドーもとい忍者は手の形を変えた干支印というハンドサインにより独自の魔術である忍術を操りチャクラという魔力を纏ながら戦う前中衛の肉体型。

 一方、陰陽士は九印のほかに、五芒星、式神、巫術、呪術、譜術等数多の戦法である陰陽術を操り頭を駆使した頭脳型。


 と勝手に推測して二人にはそれぞれのさわりだけ教えてみた。

 ちなみにほぼ本の中に書いてあった内容を独自解釈してある。

 この魔力がある世界ではありえない話なのだから。


 そして数日後、二人が火遁火球の術だとか五行水流陣だとか言い出し火や水を操りだした様を見て、、、なんだか無性に落ち込んだ。

 特別な才能を持つちびっこたちは練習すれば何でもできるようになるらしい。

 才能というものはとても残酷である。


 蒼葉は魔法も魔術もできない偽物の魔導士なのでシャドーも陰陽士にもなることはできないのだ。せいぜいパーティメンバーの侍を選択するくらいである。

 右手から火も出せないし左手から水の剣を出すこともできはしない。

 彼女たちに比べれば自分が使える『蒼葉魔法』など遊びのようなものだから。


 物語の選考を間違えたかも、、、


 直面した現実から目を背けながら蒼葉は話の演出を考えるのだった。


ココナとココア:(*'▽'*)(*'▽'*) りんりんりんべる!!



恐れ入りますが、、、ココナとココア二人の活躍に期待したい方、もしよろしばブックマークや評価、twitter等でシェアしていただけると嬉しいです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


●新作です。 ロリコンドMの人形使いは幼女に顎で使われる!!

●続きを読みたいと思った方は、よろしければ下のランキングのリンクバナーのクリックをお願いいたします。

小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=410288874&s
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ