6幕:蒼葉と最低な1日 4
鉄格子越しの事情聴取が始まった。
最初と変わらない髭面のおっさんは数度のやり取りを記しながら横目で蒼葉を見つめている。
その冴えない表情は最初から顔色一つ変わらない。
「他所に来ていきなり犯罪か、、、ペンダントをさっさと出しとけ、、、繰り返すがお前何やった?」
「何もしてません」
「嘘を付け。冒険者ランクは最下位、、、商人ギルドは腐っててもCランクか。データが少し壊れてるのか、、、閲覧できない箇所が多いな。だが全て報告が届いている」
「どうせ虚偽報告ですね」
「まぁ仮に未遂だとしても誤解されるお前にも原因がある」
「いやないでしょ。証拠くらい揃えてからやってくださいよ」
「ふん。減らず口を、、、、とにかく貴様がもし犯罪者じゃなくとも容疑が晴れるまで数日は檻の中だ」
「冗談でしょ、、、」
「ふん。それにしても公務執行妨害、収賄容疑に児童連れ去り。はぁ男児誘拐の上、詐欺詐称か、これはとんだ犯罪者だ。幼女相手にお口を拭いたりあーんさせたり服を脱がせたり膝の上でとんでもない顔をして卑猥な事をしていたと!?お前まさか、、、とんだロリコン野郎だな」
「いや濡れ衣です。迷子を送り届けただけです」
「ふん、どうだか。それから大の男が幼女服を買ってニマニマしながら漢を誑かし卑猥な視線を浴びせたそうだな。被害者は泣いて悔しがったと供述しているぞ。さらにおもちゃ屋さんで人形の一人遊びしていたと報告が上がっているな。なに?作りが気に入らなくて最後に店長をぶっ飛ばしただと!?お前男もいけるとは、、、とんだクソだな」
「全くあってねぇよ!!」
「ふん、少しはあってんだな。ほうほうこっちは幼女にお金を貢がせて自分は姉ちゃんと手取り足取り遊んでいたと、、、挙句に誑かして器物破損か。弁償を押し付けて姉ちゃんに体で返せとはマフィアも唸る恐喝詐欺とはお前、、、とんだクソ野郎だな」
「逆だよ!!誑かされた方だって!!」
「ふん、どうだか。終いには行政棟の派遣社員と大乱闘か、、、原因は申請前に商売始めて荒稼ぎのペナルティに対しての逆恨みか。そりゃ売上は全額没収だからな。ほぉ他にギルド職員から町中の商店まで賄賂塗れにしただと!?この町はギルド長が闇組織が入らないよう昔から動いているというのに。しかも幼児たちを薬塗れしていただと!?子供達がお前の太くて大きなブツを欲しがっておかしくなっていると、、、お前、、、とんだクソったれだな」
「乱闘してねぇし全くあってねぇ!!」
「ふん、どうだか。聴取は終わりだクソ野郎。判決が出るまでしばらくは己の罪を振り返っているんだな」
散々な対応である。
いちゃもんを付けたギルドかどこかの職員の顔面を思わずぶん殴りたくなるほどだった。
その後もし途中でラズさんが事情聴取の後に駆け込んでこなかったら数日はあのまま檻の中でずっと現実から逃げ続けていたことだろう。
どうやらギルド側の不手際により申請書類が紛失していたらしい。
蒼葉はグミさんに直接手渡したことをラズにも伝えていたので彼女が違和感に気づいてくれたのだそうだ。でもなぜ書類が紛失したのかははっきりとしない。彼女からはひょっとしたら先輩が最近浮かれている感じなので凡ミスをしてしまったのかもということで真摯に謝罪された。
なお取り上げられた売上や口座から何からは今回の件が解決次第、返却されるだろうとのことらしい。
だからそのことは一旦預けて今日は彼女が間借りしているというアパートにお世話になることになった。
すでに大家さんにも連絡済みだと聞いている。
散々だった1日を思い出しながら両手に伝わる温もりを感じた。
温かくて小さな二人の手は蒼葉の二本の指をぎゅっと掴んだままだった。
そんな子供たちの力強さに救われるような気がしながら蒼葉は歩き続けた。
今日のお使いはよほど楽しかったのだろう。
きゃっきゃっと満面の笑みを浮かべながら談笑する二人が止まることはない。
服も靴も顔も汚れて泥んこだらけである。
使い魔組も同じらしくマロンはいつもより頭の上で飛び跳ねているしヤキニクは尻尾が力強くフリフリしている。
だからそんな天国に漂っている二人と二匹に残酷な事実を伝えなければならない。
「みんなに大事な話があります」
「「「「!?」」」」
「お兄ちゃんは先ほど無一文になりました」
「「「「!?」」」」
「なので明日からおやつはありません」
「「「「!!!!」」」」
あれだけ輝いた瞳は一瞬で消え去った。
そして絶望した表情を浮かべる一同の瞳にはさらなる闇が深く刻まれたのだった。
ちびっ子と使い魔たち:∑(‘□’*(‘□’*(‘□’*(‘□’*):・・・。
恐れ入りますが、、、ちびたちにほっこりされたい方、檻の中の蒼葉に同情した方は、もしよろしければ評価やブックマーク等やシェアしていただけると嬉しいです。