6幕:蒼葉と最低な1日 2
「ほら釈放だ、二度とやるんじゃねーぞ」
「、、、」
身も心も解放されても掛けられた言葉には実感が全く湧かなかった。
改めて1日を思い出す。
大盛況のランチ販売を終え道具類全てを魔法で収納してから武器屋さんに足を運んだ。
ラズさんから紹介された武器屋さんは町の端っこで小さく古臭かったが、紹介されるだけのことはあった。
そこのカウンターで以前壊れたやつ、それから新たな装備品と手持ちのダガー類の件を相談すると中々の強面さんが応対してくれた。
「あんちゃん、こりゃダメだ」
「修理より買い替えが早いよ。初心者用なら見繕うけどどうだい?あとはそっちのセットでコスパはいいぞ」
「ちなみにどのくらい?」
「小金貨1枚あればそれなりのが渡せるな。さっき見せたのに色々おまけしてやるよ」
「えーっと10万クールくらい?」
「あぁーこっちの相場だとそのくらいだな」
「あれダガーと投稿用ナイフは?」
「あぁーあれな魔道具なんだよ、二束三文だな」
「えっ?魔道具なんですか?普通高いんじゃないんですか?」
「知らねぇのか、誰が作ったのか分からなぇがこいつは武器が人を選ぶんだよ。だから人によっては扱えないってわけだ。あんちゃんがある程度使いこなせてるのはたまたま武器に少しだけ気に入られたんだろうよ。それで何が仕込んまれているかはこっちじゃわかんねぇな。だからあんちゃん以外だと使えないから二束三文ってわけだ」
「なるほど。さすがは専門家、、、この店が流行らない理由が納得できた」
「放っとけ。とにかく兄ちゃん一つ言わせてもらうが武器も防具も妥協しちゃいけねぇ。爺さんからの受け売りだが、金で買える命はあるんだ。リスクを抑えて安全を選ぶんなら尚更だ」
「やっぱりそうなんですね」
「まぁ時間はあるんだ、気が向いたらまた店に来ればいいさ」
見た目は怖いが気のいい親父さんに手取り足取りとまでは言わないまでも色々とご教授を頂けた。
とりあえず贈答用のプリンを偶然お店に現れた小さな娘さんに家族の分を含め渡しておいた。
「将来は母親似の美人さんか、、、父親の血が消えてるのはこれも魔力のせいか。なぜ奥さんが親父さんと結婚したのが納得できない」
「放っとけ。それより美味そうだな、こりゃ娘が喜ぶよ。あんがとよ兄ちゃん」
「いえこっちこそお世話になりました」
「頼まれた雑貨類は先に用意しとくからよ。装備一式はまた暇な時に顔出しな」
それにしても業物揃いのお店で知る人ぞ知るような良いお店だということが納得できた。
なお一番記憶に残ったのは、顔を出した美人な奥さんと展示してあった「ミスリルの剣」で亜麻猫亭での給料だと何十年もかかりそうなほどの価格だった。
それから食料店に足を運んだ。
これは町ごとの地場品が目当てである。
うちには食べ盛りの子供二人と使い魔2匹がいるので栄養豊富で美味しい食事を用意したい。それに料理人としてはこのラクスラスクでどんな食材や調味料が手に入るのか見て回るのが楽しみだった。
グミさんの行きつけだという商店街を見て回ったところホルクスとは違った食材が豊富で心が湧いた。それから調味料なんかもだいぶ違うみたいだ。
ほぼ全てを味見して手当たり次第に買い込んだ。
レシピの他に調理の仕方から料理以外の使い方を教わった。
ついでにお店の人たちに色々と教えてもらったのには大人のお店や夜のお店なども含まれる。
とりあえず明日売り出す予定のパンナコッタを配った。
どの家庭も小さなお子さんがいるみたいだったので、つい奮発してしまった。
なお買った商品は全て『魔法』で消し去ったのでとても驚かれた。
本当に便利な『魔法』である。
安定して使えないのがデメリットだが、、、
そうそう商店街の片隅に服屋さんを見つけたのですぐに飛び込んだ。
珍しい女児向けの子供服専門店である。
元漢だというオネエさまの店長さんといかにして子供たちを可愛くするかで盛り上がった。
蒼葉の要望とオネエさんのオススメから二人用に数着を購入した。
オシャレしたココナとココアの喜ぶ顔が楽しみである。
それから子供向けの装備の取り扱いとステージ衣装がないかも確認してみたところ、すぐに用意してもらえることが分かったので、こちらもお願いし先払いした。
武器屋の親父さんから子供用の専門店があると聞いてたので、たぶんここのことで間違いはないだろう。
後日、二人を連れてお店に顔を出すことを最後に約束して店を予定より早く飛び出た。
しきりにこちらのお尻や筋肉に視線を感じたので身の危険を感じたからだ。
今後も色々とサービスしてくれそうだったので特性のババロアを手渡しせずにカウンターに置いてきた。
直感は大事である。
それから数件ほど隣に偶然にもおもちゃ屋さんを見つけた。
ココナもココアもまだまだ小さなちびっこである。
娯楽らしい娯楽を用意できるほど今まで余裕はなかったしあまり買い与えたこともなかった。
表から中を覗くと大小様々な人形やぬいぐるみ、そして小さな家から武器や防具といった定番のおもちゃが飾られていた。
何が喜ぶだろうかと必死に考えていたところ、、、ディスプレイ越しの小さな人形と目があった。
どうやらこの世界は進んでいるらしく人形が動くらしい。
その小さな人形の手招きに案内されてからお店の中を物色した。
二人にどんな商品がいいだろうかと相談したところ、、、彼は小さなお人形とぬいぐるみ数体を選んでくれた。
それから最後に小さな家を差し出した。
そこで青葉はピンときた。
もし今閃いたことができるならこれは革命じゃないだろうか。
ついついワクワクしてしまったので、思いつきである要望を出したところ彼は上下に頷いた。
どうやら問題はないらしかった。
セットで5000クールでいいとのことだったので銀貨を手渡した。
会計の際、そこの店員さんが人形にシバかれて値引きしている様を偶然目にしたけど気づかなかったフリをした。
どうやら蒼葉と同じように顎で使われる存在がこんなにも身近にいたらしい。
社会の縮図の中で戦う彼に親近感が湧いてしまったので小さなオーナーに試作ゼリーを数個手渡した。
これからも大変だろうけど彼には頑張って欲しい。
同じ境遇を味わったものとして、、、
そして次はどこへ行こうかとしばらく出歩いたところで問題が起きた。
まさかこれが後に大事件を引き起こす前触れだとは思うはずもなかった。
世界的に暗躍する一味の頂点o(`・ω´・+o):ん。多角経営は大事。