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まじかるココナッツ。  作者: いろいろ
1章
102/162

5幕:鬼面の男と海の調査4

 

 崖上から場所を変え一同はラクスラスクへ戻る街道へと出た。

 ブラクとキャロの判断は一致していたからだ。


 調査の続行は必要であると。


 海岸線で見られないスケルトンの発生だけでは不十分。

 生息域を外れた魔物の発生など、どの地域でもありえる話だからだ。

 何かのきっかけで移動を繰り返すのは人間だけではない。

 当然である。


 大抵は一つ一つ要因を潰していき、最終的に問題がなければそれで良かったねと笑って済む話である。

 怖いことは最悪の事態を想定せずにその兆候を逃してしまうこと。

 知らず知らずにそんな泥沼に足を踏み入れていることを見逃すことが問題なのだ。

 手遅れだと分かってしまうことほど恐ろしいことはない。


 今回の調査だけでは武装していない人型と野良の獣型や鳥形との群体と一度戦闘しただけでは分からない。

 一旦出直して、この辺りの過去の出現分布ならびに資料や統計データを見比べなければいけない。

 それには昼間の観測だけでは不測である。

 これから夜間の調査も行わなければならない、それもあと数度は行わなけれいけないだろう。


 ただし子供たちを抜きにして。


 昼から移動して動きっぱなしである。

 流石に疲れたのだろうか行きとは違い二人はとても静かだった。

 適度に休憩を入れたものの体力の差は大人と子供では段違いだ。

 これ以上は幼子たちに無理をさせる訳にはいかない。


 すでに日も沈み薄暗い。

 街道だけははっきりと視認できるくらいの明るさだが、道端から1メートル奥はすでに把握できない。

 ローグであり斥候になれたキャロでも暗視だけでは見落とす恐れがあるだろう。

 昼間に少しでも視野に収めていたことは幸いだったのだが、これから夜は魔物の時間だ。

 危険度は跳ね上がる。

 だから尚更子供たちは家に返すべきだろう。


 ギルドが用意してくれた馬車は小型で足が速い。

 繋がれたトカゲ型の魔物ラプルは温厚で扱いやすいし体力があり速度もある。

 すぐにラクスラスクへは戻れるだろうし家族の元へ二人を送り届けることができるはずだ。

 それから改めて準備をしてメンバーを揃えてから再度調査に足を運んでも遅くはない。


 パプリアが御者を務めながら前方を警戒、キャロが側方、上空を中心にしながら全域を警戒する。

 後ろはブラクに一任している。

 二匹の使い魔もそれぞれで警戒をしていた。


「!?」


 動き出して数分だった。

 突如、ラプルの足が止まったのだ。

 全員が投げ出されそうになったが怪我はない。

 子供たちももブラクが保護したようだ。


 一同が前方へと目を凝らすと何か歪んだものが見えた。

 訪れた変な雰囲気に首筋にじわりと汗が浮かんだ気がした。


「ゴーズト?いや禍々しさが違うな、、、ファントム?かレイスか。まずいな囲まれている」(キャロ)

「キャロさん、あんなのこの辺りにはいない」(パプリア)

「だろうな。パプリア、全員に聖水を!!それから馬車と自分たちにばらまいてくれ」(キャロ)

「了解!!」(パプリア)

「・・・」(ブラク)

「ブラク了解した。後ろは任せた!!」(キャロ)



 それは一同が飛び出す直前だった。

 魔力の爆発的な発生とともに光が炸裂した。


『光の矢』

『光の結界』


 収束した光の線は前方のレイスを串刺しにし馬車を中心に白く透明なカーテンが一同を覆い尽くす。


「行くわよココナ!!切り札は、、、」(ココア)

「おくれてとうじょうだもん!!」(ココナ)


 はっとしたキャロが振り返ると満面のドヤ顔をした二人が馬車から勢いよく飛び降りろうとして縁につまづいているところだった。






 間髪入れず詠唱の後にもう一人が次の呪文を繰り出す。

 放たれる聖属性の呪文は前に後ろに側方にと尽きることはない。


「次は私がさっき考えた最強の魔術を披露するわ、、、、(詠唱)『光のブーメラン』」

「えっとえっとココもやるもん、、、、(印)『光遁 光の手裏剣』」


 手の中の小さな魔法陣から生み出す光でできた大きなブーメランが馬車の周囲を飛び交いレイスたちを切り刻むとその残骸を複数の『印』の組み合わせにより解き放たれた輝く凶器が根こそぎ破壊していく。


 そして取り囲んでいたレイスたちは瞬く間に蹂躙されていった。

 数にして数十体ほどいただろうか。


 まさかこれほどの数がいようとは。

 パプリアは思わず背筋がぞっとし、キャロはその光景を見て困惑した。


 相性とは非常に重要である。

 アンデッド系は物理耐性を持つものも多く生命力に溢れ非常にタフである。

 中でもレイスやゴーストの類は刀剣類を用いた物理攻撃が効かないものが多い。

 そのために武器に魔力を込めたり聖水を掛けて聖属性を持たせた一撃で屠ったりするのだが、数が多いと乱戦にもなるし非常に厄介な相手だった。そのため今回は対策として瓶入りの『聖水ポーション』を数多く持参していた。


 引っ掻きや斬撃といった直接攻撃から闇系統の呪文や生命吸収や魔力吸収といった絡め手までを使用するレイスが透明になり死角から襲ってくる。

 乱戦になった場合、常にその攻撃を視野に入れなければならない。

 だから一撃を貰えばそこで終わりだろう。


 考えただけで背筋が凍る話だった。

 キャロやブラクは経験を積んだ冒険者のため切り抜けられるだろうにしてもパプリアは違う。

 その上レイスはゴーストの上位種だ。ボーストと違い危険度は跳ね上がる。

 パプリアでも数体なら対処できても数の暴力には打ち勝てない。


 しかしその数に勝る上位種も相性には逆らえない。

 彼らの弱点は聖属性、光属性の呪文だからだ。


 戦闘開始からわずか数分。

 レイスたちは無情にも消え去った。

 しかし肌に伝わる何かが消えることはない。

 レイスたちが焼失したことで霧散した邪気が全て収束していた。

 それはまるで生き物のように一つに集まり闇を型どっていく。


「何だこの悪寒(プレッシャー)は、、、」(パフリア)

「けっけけけ、、、なかなかやるのぉ」


 闇から這い出てきたのは黒いローブを着た人のような何かだ。

 放たれる雰囲気(オーラ)はレイスの比じゃない。


「けけけけっけ、、、我こそは」(ドヤッ!!)

『『聖なる光の剣』』


 何かが名乗りを上げようとして、、、

 二人の小さな手から伸びる光の剣に串刺しにされ消え去った。

 名乗りを上げることすらさせてもらえずに。


 アンデッドは生前に不遇の人生を過ごした者の成れの果てだという。

 パプリアは笑顔でハイタッチをしている子供たちに暴虐されたものたちを見て無性に気の毒に思えたのだった。





 有明月頃の深夜、フードを被った人物は地べたに両手をつきながら頭を抱えた。


「冗談でしょ、、、」


 洒落にならなかった。

 仕事が終わるといつものように闇に乗じて海岸へと向かう途中だった。

 黒いボロボロの切れ端が散らばっていた。

 周囲を見渡すとこの場で戦闘が起きたことが分かる。

 普段ならあのムカつく死霊術師や死霊たちが顔を出すのだが、あまりにも静かすぎた。


 以前からこっそりと用意していた魔物全てが消失していたようである。

 そしてあろうことか代えのきかない死霊を生み出し操る死霊術師も、、、

 全部使い捨てのアンデットとはいえ、この数を用意するのにはかなりの労力を伴った。

 特にその死霊術師のアンデッドのクソ野郎の世話は大変だった。

 あの暴虐武人な我儘と生意気さは先輩、、、クソ頭のようで、それに真摯に答えレイスの媒体の材料探しや魔法陣の準備から何からと睡眠時間を削って動き回ったのだ。

 手持ちの軍資金も足らずこっそり貯めていた私財すら投入したのだ。


 そのせいで生活に困り果て、ここ数日中で狙っていた獲物を貶め金を分捕ったのが夕方ごろ。

 わずか数日の生活費くらいの額だったが、安堵していた。難癖をつけ濡れ衣を被せ犯罪者となった奴を檻の中に突き出したので、さらに報奨金が手に入る。それにそいつの口座もすでに凍結済みで、後日その半分が彼女のものとなるだろう。


 この世界には罪を犯した犯罪者に甘くはない。


 だが計画実行前に一夜にして全てを失った。

 報奨金が出ても少額の口座を差押えても完全に赤字である。


「これは先輩に殺される、、、お頭にこ、ころ、ころ、殺される、、、変わりを何とか、、しないと、、、」


 そしてその人物は地面に両手をつき途方に暮れた。




格好良く登場する予定だった何か (๑• ̀д•́ )✧ドヤッ:我こそは世紀の大死霊術師、、、

最後を決めたことに喜ぶ二人 (*'▽'*)/ヽ(*´∀`*):いぇーい!!


空から見下ろす何か( 0д0):ふぁっ!?



●登場人物


ココナ:金髪の女の子。忍術に興味がある年頃。

ココア:黒髪の女の子。背伸びしたい真似したい年頃。

ブラク:『鬼面』という二つ名を持つB級の大柄な冒険者。顔は怖い。

キャロ:ラズの王子様2。ローグでイケメンの凄腕冒険者。

パプリア:ラズの王子様1。数種の魔術を使える剣士の少年。

フードの人物:ラクスラスクにて暗躍している。東の国の闇組織『風月』の構成員。

スケルトン:有名アンデッド。骨のアンデッド。

ゴースト:霊体のアンデッド。

ファトム、レイス:ゴーストの亜種もしくは、上位個体。活躍する間も無く滅ぼされる。

死霊術師:アンデッドを操りし、生み出した者。名乗りをあげる間も無く無残にも惨殺される。



恐れ入りますが、、、ココナとココアの活躍にほっこりされたい方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。

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