第9話 イタミへ
ギルドを出発した後少しの荷物を用意させられ、馬車に乗せられた。
イタミに向かう道中、ガラン達のパーティーの飯の用意など雑用をさせられていた。朝からギルドに向かわなければ、こんなことにならずに済んだのに。と後悔していた。初めて依頼をこなそうと考えていたのに、本当に残念である。ギルドに戻ったら、自分で選んだクエストをこなそうと気持ちを切り替えて雑用に専念した。その時ふと疑問に思ったことをガランに呼び掛けた。
「ガランさん、今回のクエストは何をするんですか」
「今忙しいから話しかけんな。たくっ、空気読めよ。おい、フレイお前が説明しとけ」
馬車で賭け事をした遊びを行っているガランがうるさいな~といった感じで、フレイと呼ばれる20代前半の男性に声をかけた。
「これから行くのは調査だ。イタミにあるコヤの池のニッポンを模した島が突然光りだした。それでヒョウゴのギルドに調査の話が来た。しかしオーサカのギルドの方が近かったため、僕たちのところに声がかかったんだ。」
と簡単に説明してくれた。フレイは他のメンバーと違って、常識をわきまえていた。
目的地に到着するまでの間、雑用をこなしながら冒険者としてのノウハウをフレイに尋ねたりしていた。
出発後4、5日で目的地に着いた。
「ヤロー共、目的地に着いたぞ。」
ガランが気合十分といった感じで馬車から飛び降りた。初めて来たイタミの景色を見回していたが道中も含めて街道が伸びているだけで回りは木で覆われていた。道中で会った商人にコヤの池で起きた現象について話を伺ったところ、突如大きな揺れが起きたかと思うと、池の中の島に光の柱が登った。不思議に思った近隣の村の者が調査に出たが誰一人帰ってきていない。
といった内容であった。これ、明らかにやばくない?と内心冷や汗を掻いていた。ガランに対し、引き返した方がいいことを告げるが、一切聞き入れてくれなかった。
「さっさと行くぞ。ほら、船を借りてこい」
背中をガランに蹴られて船を借りに行った。
池の近くに船を貸す店があったため、そこで船を借りた。店主は本当に行くのかい?君みたいな子供を死なせに行くのは嫌なのだけれどと心配してくれたが、こちらとしても行かないといけないため、気にしないでくださいと言ってボートを借り、ガランのもとに向かった。
「おせーよ。」
とガランが言った後、後ろの2人が俺たちを待たせるなんて何様だよなど呟いていた。フレイはやれやれといった感じで、ごめんなというように目配らせしてくれた。
島に足を踏み入れたところ、全員固まってしまった。なぜなら池から見た島は特に危険なものが無いような感じであったが、島内部に入り、周りを見渡すと多くの竜が存在していた。竜はモンスターランクを考えた場合最低でもBランクはある。なぜ今まで気が付かなかったのかが不思議なくらいだ。最初に行動に起こしたのはガランであった。急いでボートに乗り込むと逃げる準備をし、出発した。残りのメンバーも残されてたまるかといった感じでダッシュで船に乗り込んだ。船に乗ってからフレイはアキラがいないことに気が付く。
「ガラン、アキラがいない。引き返してくれ。」
「冗談じゃない。あんな子供いくらでも補充がきく。赤ランク冒険者はすぐには育てれない、だから俺はこの場を逃げる。」
アキラのことを心配するフレイに対し、ガランは自分のことだけしか見えておらず、そのまま逃げ去ってしまった。
目の前の困難にどう対処するべきか悩んでいた。泳いで逃げようにも岸まで距離があり到底たどり着けない。されど進むにしても最低Bランクモンスター。どちらにしても死ぬ確率が高い。なら、しばらく身を隠して救援を待とう。幸いフレイが逃げているので、ギルドに知らせてくれるはずだ。
考えがまとまるとアキラは森に入っていった。
森に入ってしばらくすると洞窟があった。ひとまずここで休息しようと考え洞窟に近づいた瞬間、
「ギャォォォォー」
という鳴き声が響き渡り一匹の赤い竜が姿を現した。しかも、口を開けて空気を集めていた。
アキラはその時思い出した。竜型のモンスターはブレスを吐くことができることを。
やばいと思ったときにはすでに遅かった。赤い竜によるブレスが放たれていたのだ。
急ぎ岩の後ろに隠れたがブレスの破壊力が強かった。右腕、左右足、が吹き飛ばされ、皮膚が焼けただれていた。
「っっっっっっっ!」
声にもならない悲鳴が辺りに響いた。
痛ぇぇぇ。あまりの激痛で変な汗が出てきてた。しかも体が異常に熱く息もほとんどできない。体中から血が流れだしており意識が薄れていくのが分かった。
ああ、血が流れ出たのは転生前を合わせて2度目だな。あれ、目がかすんできた。
これで死ぬのかなと考えていると、これまでのことが走馬灯のように流れだした。
転生前の日本で事故にあい、なくなったことから始まり、遠足での一件で、親友を一人で敵に送り込んでしまったこと、恐怖で相手に立ち向かえず、逃げるように言われた時に安堵を浮かべてしまったことなど本当に悔しかった。俺はこんなに弱いのかと。あの時シンの隣に立って魔物を相手に戦いたかった。そんな自分でも卒業試験の時にシンを救うことがでた。初めて俺の努力を理解してくれたシズクとも仲良くなれた。試験以降はこれまで以上に楽しい生活を送ることができた。
場面が変わって先日ギルド内で新人いじりにあったところが出てくる。自分は何もできずに周りに頼ってばかりいたせいで、物事を解決できなかった自分がいた。そう、遠足からの感情を根本のところで克服できていなかった。パーティーの人たちにも見放され、現在死にかけている。そう思うと自分自身もっと強い意志を持っていればこれまで起こった事件で自身が後悔することがなかったのではないか。これまでの行動に腹が立つ。なぜ、仲間を見捨てようとしたのか。なぜ、自分からあと一歩勇気を出して行動できていればこんなことにはならなかった。
そんな自己嫌悪に陥っている中、一つの答えを導き出す。これから、少しずつ変わっていくしかないということを。死んでしまったら、やり直しができないのだから。
今もオーサカの街では何も連絡せず出た俺を、両親や唯一の友達であるシンやシズクが待っていてくれているはずだ。ここで死んでしまったら心配してくれている人達に心配をかけてしまう。こんなこと俺は望まない。だから絶対に生きて帰るんだ。
無意識に、無詠唱魔法で放った火球が赤い竜に向かって飛んでいった。薄れゆく意識の中、火球が竜に当たる瞬間、竜にノイズが入ったのを最後にアキラの意識は暗闇に沈んだ。
目が覚めるとそこは洞窟の中だった。意識がだんだん覚醒していき、なぜ自分がこんな場所にいるのか思い出すと全身を見渡した。何故か損失していた手足が元通りであり、火傷のケガもなくなっていた。不思議に思い、辺りを見渡してみると近くに魔法陣があることに気が付いた。それ以外には特に何もなかったため、恐る恐る魔法陣に近づき、手で触れてみると、いきなり光りだした。光が治まった後、3D映像で男が映し出されていた。
「ダンジョンをクリアしたものよ。見事である。私の名はタケル。世界に散らばっているダンジョンを全て攻略したものだ。」
伝説の冒険者が映像で映し出された。
もう少しで主人公に新たな力が目覚める?かもしれないので頑張って読み進めてください。
あれ?これ前にも言った気がしますが気にしない方向でお願いします。