第2話 学園生活①
家を出て学校までのルートはアキラの記憶を参考にしながら進んだため、迷子になることはなかった。ちなみにアキラの記憶には街の様子も載っていたが、異世界ということで想像していたヨーロッパ風の建物は一切なく日本の首都圏と同じような高層ビルが立ち並ぶ街となっていた。明はアニメやラノベなどのような異世界の街を楽しんでいけると考えていたのもあり、現実との差を思い知らされ、心の中で「何が異世界だ、理想を返せ!!」と叫んでから落ち込んでいたのは、本人しか知らない。
俺がこれから行く学校は日本でいう小・中学校を合わせたような場所である。学年は9年生まである。大きく違うのは音楽や体育といった授業の代わりに戦闘訓練があること、魔法に関する授業があること、最後に卒業時にグループを組んでゴブリン討伐依頼をこなすことが挙げられる。これらの記憶をアキラから読み取ることにより、学生生活に支障をきたさやいようにしないと考えた明はであった。学校の教室に着き、何人かのクラスメイトに朝の挨拶をかけられながら席に座ったところで「おはよう、今日も寝坊か?」前の席の男の子が声をかけてきた。
男の子の名前はシン。昔からの知り合いで、一番仲の良い友達である。髪は青色で、目が黒色、身長はアキラと同じ程度である。最も性格面はアキラと違い正義感が強く周りから頼られ、リーダーシップを取ることができるといったクラスの中心的な人物であるとともに、魔法特性は学校でトップレベルの持ち主である。
シンの問いかけに「いつも通り、母に起こしてもらった。」と軽く受け答えをし、あとは少し雑談をしたのち、先生が来たため会話が中断された。
「みんな、おはよう。今日の連絡事項だが・・・」と事務的な話を行っているのはアキラ達の担任であるノーバン先生である。先生は基本的に生徒の自主性に任せるスタイルを貫いているため、生徒が余程困っていない限り手は貸さないといったことを学校に入学した生徒や保護者の前で宣言し、実際にそのスタイルを実行している。決して先生がめんどくさがりで極力何もしたくないといった考えの持ち主ではない・・・っと信じたい。学級委員に司会の進行を任せ、自分は教室の隅で睡眠を始めている先生が見えるがこれは生徒の成長を促すための行動だと無理やり納得するアキラであった。
9年間は主に地理や社会といった基礎的な授業を行うとともに、魔法構図理論、模擬戦といった授業が行われた。この異世界で現実世界と異なっている点は何点か存在したため以下に記す。
・全国に48か所のダンジョンが存在する
・移動手段や運搬手段には車や飛行機が無く、代わりに馬車や船が用いられる
・街にはギルド、武器屋、協会、防具屋など冒険に必要になる場所が存在する
・子供は16歳になると仕事に就かないといけない
・街は直径10kmで壁の高さが20kmの大きな城塞と化している
・ビル群が立ち並ぶ街はこの国ではオーサカとトーキョーの2か所しかない
・街は5区画に分かれており、中心部は王家や貴族の者が暮らす地域、それ以外の地域は4つに区切られており商業区、住宅区、鍛冶屋区、農業区である。
・出入り口は全部で4か所存在している
などが挙げられる。
また、現在自分たちがいる国はニッポンで、今いる街はオーサカであることを習い、また形が現実世界と左右逆転していることが分かった。ダンジョンを管理するために47の小さい村を造り、管理するものを置いているそうだ。種族もオーサカの街では人間が多く暮らしているが、他の村に行くと兎人族といった他種族が数多く存在することが分かった。
そんな感じの授業の中で俺自身が授業で一番興味を持ったのが歴史の時間であった。
歴史の大部分がダンジョンの話であった。ダンジョンは全国で47か所存在しており、大きさは大小合わせて様々である。また、難易度に関してもダンジョンの大きさに合わせて変化していき、大きいものになるほど難しくなる傾向にあるが、例外も存在する。ダンジョンを造ったのは太古に存在した勇者のパーティーメンバーであり47人存在したためその数だけダンジョンが存在している。これまでダンジョンを1つか2つ程度攻略したものはいるが、47全てのダンジョンをクリアしたものは1人しかいない。そのものの名前は「タケル」。歴代最強の冒険者である。またタケルが48個目のダンジョンを造ったと伝えられるがどこに存在しているのか分からない。といった話があって俺自身めっちゃ興味が湧いた。
タケルの話に興味があったため、学校内や街の図書館で文献をあさって読んでいたりしているうちに、将来冒険者になりたいと考えるようになっていた。
3年生に進級したある日、タケルの冒険譚を探すために図書館に来ていた俺は面白い本を見つけた。タイトルが「無詠唱の心得」といったものである。
実はこの世界の魔法は詠唱を唱えないと発動しないといったことを授業で習った。
転生前の記憶があったため、魔法を行うたびに赤面してしまったり、恥ずかしさのあまり声が小さくなってしまったりといった事故があったため、現在魔法の成績はクラスで最下位であった。
だって、詠唱するの恥ずかしいじゃん。何でみんな何事もなく詠唱できるの!
驚きがいっぱいだった。
何でも、タケルの時代には使われていたのだが無詠唱で魔法を発動するのは物事の真理を理解しながら自身の中でのイメージを確かにして行う必要があるため、戦争が無くなり、安全な暮らしを送れるようになった近年では次第に簡単に魔法が発動できる詠唱魔法が流行するようになったらしい。その結果無詠唱魔法は廃れていった。
でも詠唱魔法は詠唱することで特定の魔法を使えるようになるものだったため、この世界では魔法の種類はあまりなかったりする。
例外として、たまに人間族だと固有魔法を持ったものが生まれてくるためそのものは無詠唱で魔法を使うことができるそうだ。
本当にうらやましい。アキラも固有魔法があるのかと記憶をあさったがそういったものはなかった。
まぁ、平凡な子供だし仕方ないか。
そんなことを考えたことがあったため、この本を見つけた時は飛び跳ねて喜んだ。
それで図書館にあった本を借りてさっそく火球を発動すると少しだけ反応があった。やった!
発動した時にほとんど反応がないのは魔力や属性ごとのステータスが少ないためだと本に書いてあった。やっぱりまだ子供だしそこまで強くは出来ないけど、これである程度イメージした通りに魔法が使えるぞ。
その日から俺は毎日魔法の練習を行った。ちなみに余談だが図書館で無詠唱魔法の本を借りた時に受付の人に意味がないかもしれないけど頑張ってね。と言われた。余計なお世話だ。