訂正のお知らせ&番外編
【訂正のお知らせ】
当初、当時予定でした
*島之丘 太陽
2年2組の学級委員。成績優秀、運動神経抜群の完璧超人。○○○○者。
*院城 ナギ
院城グループ本家の次男。茶道、軽音楽、華道部を兼部している。○○○者。
の2名なんですが、あんまり登場人物を増やしてもごちゃごちゃするかなぁと思い、本作での登場は見送らせて頂きますので、ご了承よろしくお願い致します。
……文字数が足りなくて投稿できないので、番外編書きました。読まなくても支障はありませんが、宜しければ読んでいって下さい!
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【快楽殺人者の苦悩】
今日は、私立櫻林高等学校への潜入任務を一旦切り上げ、我が殺し屋組織【ジャンク】の管轄組織である子会社が、私達の殺しに関する情報を他の組織に密売していたとかで、『責任者、及び加担した人間全てを抹殺せよ。』との命を受け、月宮先輩(白神 唯)と二人でその子会社に潜入していた。
……そして、現在あたしは非常に機嫌が悪い。
まず、この人と二人で二十余りの人間を始末しなければならない。もうこの時点でボスになんで一人当たり十人殺る計算で配置してるんだと問いただしたい。しかし、問題はここでは無いのだ。
戦闘任務ではなく、暗殺任務であるので、遠距離射撃での殺しがメインなのだが、月宮先輩から渡された銃弾は十発だ。十人がノルマで、十発だ。
……馬鹿なのだろうか。
つまりは、一発も外すことが出来ない。外したら最後、拳銃の弾が当たる程に、暗殺対象に近づいて始末しなければならない。近づいて姿を晒す分、危険度も格段に上がるし、効率も悪い。
そんな無茶ぶり過ぎる状況に、舌打ちしたい気持ちを抑えながら、スコープを除く。丁度死角に暗殺対象が入ってしまい、引き金を引けず、イライラが募っていく。
『こちら白神唯。既に二人殺った。銃声は聞こえてないと思うけど、近くの部屋にいた奴は異変に気づいてカーテン閉め出した。早くしないと外からの射撃は不可能になるから早くしてね?…あ、三人目ロックオン』
インカムから、西からスナイプを行っている月宮先輩の急かすような内容の音声が流れ、更に眉間に皺が寄る。
……お前が十発しかくれなかった所為で、威嚇射撃で打ち易い所に誘導することも出来ないんですけど。
やっと、先程の死角にいた奴がカーテンを閉めようと窓際に寄ったので、空かさずヘッドショットを決める。これで一人目だ。次に、この銃声を聞いて、急いで奥の棟へ逃げようと、ガラス廊下を渡っている奴にも、丁寧に、でも素早く一発撃ち込んだ。ガラスに赤い液体がかかり、視界が遮られ、スコープからでは暗殺対象がちゃんと絶命したかが分からなかった。まぁ、本当はもう一発撃ち込みたい所だが、なんせ弾がないので、次のターゲットを探す。
割と順調に任務が進み、九人始末し終え、あと一人でノルマ達成という所まで来た。月宮先輩も、あと一人だと言っていたので、この際先に任務を終わらせて、後で散々煽ってやろうと、血眼になってターゲットを探していた時。
「…発見」
屋上のコンテナの裏にひっそりと体を隠している中年男性を発見し、スコープの倍率を上げ、脳天に照準を合わせた。
「お先に失礼します。せんぱい?」
インカム越しに、それはもう嫌味ったらしく、勝ち誇った様に告げると、引き金に指を掛け、撃った。
「……え」
筈だったのだが。
『あれ?ごめーん。あんまりにも君がもたもたしてるからさ、奪っちゃった。』
あたしの銃弾に当たる前に、月宮先輩が逆サイドから撃った弾が見事に彼に命中し、あたしの弾は、宙に直線上に伸びていった。
ああ、そのまま、月宮先輩に当たってくれないかな。
『さて、僕はノルマ達成したけど??琴音ちゃんはどうなのかな?まさか??もう十発消費しちゃった、なんて言わないよね??』
……いや、お前にキル掻っ攫われたんだよ!
……なんて言えないので、不服そうな声で、すいませんとだけ呟いた。
はぁ、と大きな溜息をついて、狙撃銃を簡単に仕舞い、両手に反動の少ない拳銃を二丁握って、射撃場所に使っていたビルの屋上から、全速力で階を降る。
あー、面倒臭い。どれもこれも月宮先輩のせいだ。どうか、明日彼の上靴に、接着剤で完全に固定された画鋲が埋め込まれています様に。
「……すいません、東ビルの射撃銃回収しといて下さい。今からビルに突撃して来ますので。」
インカムでそう月宮先輩に告げると、彼は心底面白そうに、「気をつけてー」なんて間延びした声で返答した。絶対思ってない。
正面から入るのは流石に危ないので、一階の窓を割って中に入る。ビル内は静まり返っていて、人気がない。五階以上あるこのビルでたった一人を見つけるのは、中々骨が折れそうだ。
しっかりと一部屋一部屋確認しつつ、一階、二階……と上がっていって、遂に最上階である七階に到達した。
この階は丁度、ガラス廊下の生死不明野郎がいた所なので、ついでにそれも確認しておこう。なんて考えながら、また一部屋一部屋潰していく。
それでも結局ターゲットを見つけることはなく、ガラス廊下へと到達してしまった。大量の赤い液体が壁と床を汚し、液体を出していたであろう本体はぴくりとも動かない。一応死んだふりである可能性もあるので、もう一度、頭に拳銃で三発撃ち込んでおく。
「……あー。やば。」
スナイプと違って、スコープ越しではなく、目の前に広がる紅い死体に、人間からは一脱した、最低な感情が脳を蝕んでいくのを感じる。駄目だとは、最低だとは、可笑しい事だとは心底理解しているのだが、これだけはどうしても治せないのだ。
「……綺麗。」
何発も何発も何発も。その静止した死体に向かって銃を撃ち続ける。死体から漏れ出す紅が愛しくて堪らない。死体が無惨な姿に成れば成る程、波の様に押し寄せる快楽に呑まれてしまいそうになる。
『っ、後ろだ!!』
が、それはインカム越しの焦った月宮先輩の声により、現実に引き戻される。振り返れば、銃弾が右耳を掠め、髪が数本はらはらと床へと舞う。
最後の一人である暗殺対象が、顔を涙でぐしゃぐしゃにして、かたかたと震える手で拳銃をあたしに向けていた。
「…許さない……お前だけは……!こんな、こんな殺し方、するなんて……っ!!」
彼は怒っていた。酷く憤慨していた。その理由は、きっとあたしの足元に転がっている、この無惨な死体が原因なのだろう。
「許さなくていいよ。」
そういって、あたしも拳銃を彼に向けた。
「あたしは、許されない。存在自体が、許されないんだと、思う。」
「ああ、そうだよ!お前は可笑しい!!イかれてる!こんなの人間のする事じゃない!」
そう言って彼は、更に顔をぐちゃぐちゃに歪ませて、震える手を抑える様に左手添えた。
「うん、知ってる。」
それだけ答えると、私は躊躇なく、引き金を引いた。それは彼の右手に当たり、拳銃を手から落とした。その隙を逃さず、両足膝に一発ずつ撃ち込み、彼は膝から崩れ落ちる様にして倒れた。彼の側に転がった拳銃を蹴飛ばし、彼の頭に銃先を突きつける。
バン、と派手に音が鳴った後、彼は一切の音を放つのを止めた。
「……あぁ、駄目だ。やっぱり綺麗。」
どくどくと速くなる鼓動に嫌気がさす。顔に熱が集まる度に、自分の異常さが身にしみる。
「…………ごめん、なさい」
それは、誰に対する謝罪だったのだろうか。寧ろ、その声は口に出されていたのか。無意識の中で浮かんだ言葉とともに、あたしはこのどうしようもない高揚感から逃げ出すように、二つの死体から目を逸らし、ゆっくりと出口へと足を進めた。
『快楽殺人者も、楽じゃないね。』
そんな月宮先輩の感情の読めない声を聞き流し、あたしは脳内で広がる快楽が収まるのをじっと息を殺して待ち続けたのだった。