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潜入

 逆ハーレムラブコメものです。楽しんでいってくれると幸いです。暇潰しにどうぞ!

 私立櫻林高等学校。それは、田舎でもなければ、都会でもないという微妙な場所に立地している男子校だ。

 その学校の校門前に、その学校の制服を着て、あたしは立っていた。


「………………はぁ。」


 本日、何回目かもわからないため息を吐く。ため息吐くと幸せが逃げるとはよく聞くが、知ったことではない。今、この瞬間あたしの人生最大の不幸に直面しているのだ。これ以上逃げる幸せなどあるはずがない。そう思いたい。


 何故、女のあたしが男子校の前で男子校の制服を着て立っているのか。それは、3日前に遡る。



 3日前……



 コンコン、とノックを2回して「失礼します。」と告げると、その重い扉を開けた。

 大きな窓の並んだ広い部屋の中心で、高価そうな赤い椅子に腰かけた50代位の男性が目にはいる。彼が、此処にあたしを呼び出した張本人である、殺し屋組織『ジャンク』のボスだ。因みに、本名は組織内でも誰も知らず、謎の多い人物だ。


 「あぁ、琴音君。急に呼び出してすまないね。」


 「いえ、大丈夫です。それで、要件は??」


 「次の任務が決まった。引き受けてくれるね?」


 ここで、少しは疑問を持つべきだったのだ。普段、引き受けてくれるかなんて聞かないで淡々と任務内容だけを話すボスが、あえてこの質問を投げ掛けたことに。


 「はい、ボス。」


 にやり、とボスが笑うと椅子から立ち上がり、人差し指をたてながら此方を指してきた。


 「実は、『ジャンク』の標的(ターゲット)リストに外部からの閲覧記録が見つかってね。その内の標的が数名、『ジャンク』(うち)以外の何者かに殺害されていた。更に、『ジャンク』(うち)の下級構成員も何人か殺られてしまってね。挙げ句の果てには幹部にまで襲撃があったという報告を受けた。こちらとしても、これ以上、殺し屋が殺されるなんていう失態を晒すわけにはいかない。わかるね?」


 「つまり、殺し屋殺しを暗殺しろ、ってことですね?で、何処の誰なんですか。そいつ。単独ですか、組織的なものですか?」


 この質問に、ボスは大げさに肩をすくめてみせた。


 「それがね、分からないんだよ」


 「は?」


 分からない?え、じゃあどうしろと?暗殺者が標的無しにどうしろというんだ?ジャンク以外の全ての人間を惨殺しろとでも?


 あはは、無理。


 「現時点で分かっているのは標的リストが閲覧されたのは、私立櫻林高等学校という男子校の情報室だということ。そして、閲覧した時に入力されたユーザーネームは『K』ということだけなんだ。と、いうことで、君に櫻林高校に潜入して調査してきて欲しいんだ。男装して、そこの生徒として、ね?」


 君は潜入が得意だろう?なんて言葉を添えていたような気がするが、最早そんなことはどうでもよい。


 「え、いまなんとおっしゃいましたか?」


 「うん、だからね?男装して男子校に潜入して欲しいんだよね。」


 「すいません、ボス。最近あたし耳の調子が悪くて。男装して?男子校に潜入?とかそんな馬鹿みたいなワードが聞こえるような気がするんですけど、まさかボスともあろうお方がそんな突拍子もない馬鹿げた提案とかしないですよね。」


 「充分聞こえてるじゃないか。じゃあ、頼んだよ?琴音君。」


 「え」


 「頼んだよ?」


 「うぃっす」




 これが、櫻林高等学校の校門(ここ)にあたし、黒河 琴音(くろかわ ことね)が立っている理由だ。


 あたしの父親は殺し屋で、母親はスパイという両親共に闇社会の人間であるという奇妙な家系に生まれたがために、幼少の頃から当然のように銃を扱い、10歳で人を殺した。ジャンクに加入してからも、遠距離射撃(スナイプ)の特技を生かし、数々の功績をあげ、ジャンクNo.2の実力を持つこのあたしが、こんな地味で時間のかかる仕事を任されるとは夢にも思ってなかった。正直非常に面倒くさい。


 ふと、まだ慣れない短く切られた黒髪を触る。髪を切ったくらいで男に見えるもんなのだろうか。それとも、貧乳だからいけると思われているのか。ぶっ殺すぞボス。


 憂鬱なことに変わりはないが、引き受けたものは仕方がない。


 あたし、いや、()はゆっくりと櫻林高校の校門をくぐった。



 




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