江戸時代と悲恋の二人
「また、おいでなさってくださいまし。」
本当の恋とはなんだろう?
でも、この気持ちはいつもと違うの…これが本当の恋なのかしら?
きっと私は我儘なんだわ。
いつものように夜が来る。
私に取って地獄の時間の始まりだった。
私は両親に捨てられたから此処に居る。
早く出たいわ…。
『雪音様、お客様がご指名でございます。』
「はい…。」
部屋にお通しされるお客様を見ると私は惹かれてしまった。
いつも見る怖そうな人とは違う感じのお客様。
「ゆ、雪音です…。」
すると優しそうなお客様の大きな手が頬を包んだ。
驚いて目線を下げてしまう。
優しそうなお客様が囁いた。
『怖がらなくていい。雪音。』
「はい…。」
『珍しいな。身分は低いのにこんなに人気で。』
「いいえ…お客様が選んでいるのですよ…。」
大きな手が頬を撫でる。
初めてだった。こんなに優しくされるのを。
抵抗を感じたが不思議に嫌な気持ちにはなれなかった。
「あの…お酌を…。」
『あぁ。頼む。」
お酒を注いで私は聞く。
「なんで…私をご指名しまして?」
『人気な奴を、と頼んだら雪音だったんだ。まさかこんな美少女が居るなんて。借金の為か?』
いいえ。私は違う。
「両親に捨てられて…それでさ迷っ…!?」
いきなり抱きつかれて驚いてしまう。
暖かい…何故だろう?
同じ男性を相手にしてきたのに、こんなに恥ずかしいと思うのは初めて。
『これ以上言わなくていい。』
その時私は恋に落ちてしまった。
毎晩毎晩あの人が来ると胸がときめいてしまう。
これが本当の恋?
「あの…海斗様。」
『ん?どうした?』
「私…ここから出たいのです…無理なのは分かってます!でも…海斗様以外の男性を相手にはできない程…好きになってしまったのです…。私と海斗様は結ばれません…。でもっ!」
気づけば押し倒されていた。
一目惚れの恋はこんなものなんでしょうか?
私には分からないから…。でもこれは恋ですわ。
『分かった。俺は雪音を出してあげる。』
優しく頬を触られる。
「ありがとう。」
その日の夜は幸せだった。
次の日の朝悲劇が起きた。
『雪音様っ!』
部屋へ飛び込んでくる女郎。
「どうしたのでありんすか?」
『雪音様をお買いあげたいと言うお客様が。』
もしかして海斗様かしら?
玄関に出ると人だかりが出来ている。
でも、目の前に居るのは海斗様じゃない。
『雪音ではないか。久しぶりだな。』
目の前に居るのはお父さん。
捨てられたんじゃないの?
「お父さん…なんで!なんで、私を捨てたのっ!?」
人前で声を上げてしまう。
『それはすまなかった。では。』
私は着の身着のまま手を引かれ外へ出てしまった。
海斗様にさようならは言えないの?
そんなのは嫌っ!
お願い…助けて…!
『雪音っ!』
私の声を呼ぶ声に振り向く。
そこ居たのは海斗様だった。
お父さんは血相を変えている。
『おめぇは誰だ?』
『雪音と婚約をした海斗だ。』
私はどうしたらいいの?
「海斗様。」
『俺の女に手を出すな。おっさん。』
手を強く握られ逆方向に走って行く。
私達は助かったのではない。
こんなのは幸せじゃないわ。
「海斗様っ…。」
『あぁ。分かってる。』
近くにある川まで走って行くと私が来ていた、着物の赤い帯を海斗様と私の体を結ぶ。
「約束でありんす。」
『そうだな。約束だ。』
川に飛び込み命を絶つ。
二人が結ばれた夜の約束。
それは「誰にも邪魔されない世界へ行こう。」
そして二人は前世の記憶を持ち転生をする。




