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四匹目

――現在

「ユート、今まで黙ってて悪かった。だけどね、私は智のことを思い出すと元の体に戻りたいって思ってしまうから…。今なら言える。あの後、ユートのお父さん…にこの体にされたの」

ユートは暫く黙っていた。長い沈黙。

「…か?」

「え?」

突然で、小さな声で聞き取れなかった。

「元の体に、戻りたいか?」

元の体に戻りたいか、なんて決まってる。だけど、ここでユートの考えを邪魔してはいけない。ただでさえ、あの時、足を引っ張ったのだ。これ以上は…

「戻りたいんだな。先輩は大体の事に関しては即答だったからな…。即答出来ない時は、迷ってる時だ」

あぁ、また頼ってしまう。

「なら、どうにかして先輩の体を手に入れないと…」

甘い誘惑に負ける様に私はユートの優しくて、頼れる背中に背負わせてしまう。

「まずは、アイツがどこで実験してるか、だな」

――コンコン

「はい?」

誰かがユートの部屋に訪れた。

「ユート、すまない。話しがしたくてな」

扉の前に立っていたのはシイナだった。

「入ってくれ」

シイナはソファに座り、ユートの目をじっと見る。

その目線に冷や汗が出る。が、負けてはいられない。

「何だ?俺のことを見つめて」

ユートは冗談でシイナからの目線を避ける。するとシイナは頬杖をつきながら言う。

「ユート、お前は赤い目の保持者では無いようだ。だがな、ユートには聞き覚えがあるハズだぞ、俺の名前に」

シイナはそう言うと、ポケットから写真を取り出すと…

「俺のフルネームは、椎名華。姉は、彩葉という名前だった」

これは予想していなかったことで、驚きながらも頭では冷静を保ち、ここをどう切り抜けるかを考えていた。

「その名前に聞き覚えはあるな。彩葉という名前は俺の幼馴染みだし、華という名前はその彩葉の妹の名前だったハズだ。それが、俺にどう関係があるんだ?」

ユートがそう言うと、シイナは「そうか…」、と言い残し部屋から出ていった。何がしたかったのやら、と思いながらも、そうゆっくりは出来ないな、と思った。

「先ぱ「いつも通り、ミネです!主!」…ミネ、シイナの様子がどこか可笑しかったよな。心当たり、あるか?」

ユートは扉を睨みながら言う。

「そうですねぇ…。彩葉ちゃんの名前が出たところは怪しかったですけど…」

そう言った時のことだ。

――バンッ

何やら、下から銃声が聞こえてきた。ユートはミネの方を見ると、ミネはパソコンから、アジトの防犯機器すべての権限を奪った。ユートは無言で頷くと急いで階段を降りる。扉の前で敵を探るべく、耳を澄ます。

「やめて…!」

メアリーが泣いているのだろう、甲高い声で叫ぶ。

「うっせぇなぁ。それよりも、どこに居んだよぉ?天才の悠斗さんはヨォ?」

この時、悟った。やはり俺は周りの人を苦しめる。また俺の頭のせいで誰かに狙われる。今までも何度か誘拐されたことはある、がその時は横には誰もいなかった。

一人でただ逃げることだけを考えていれた。

この赤い目も周りに誰も居ない状態でなら、思う存分に使えた。

「お前ら邪魔なんだヨォ…。あぁ、死にたいのか?」

`死´という言葉が俺の耳に届いた時。

俺の中の何かが切れたような音がした気がした。さっきミネに作らせたデザートイーグルを両手で抱え、扉を蹴って開けた。

「おい、悠斗はここだぜ?直ぐに見つけれないとか馬鹿すぎんだろ?」

悠斗はデザートイーグルを男たちに向けて構える。

威嚇に一発、壁に撃った。すると腰が抜けたのか、外に出ようとする。それを見て、落ち着いた。俺はソファにもたれ掛かろうとした、その時――。

――バンッ

聞き覚えのある、あの音が聞こえた。何とか意識を保って扉を見ると、男たちの仲間が来ていた。

咄嗟に判断し、扉の前でグズグズしてるダイを睨んだ。

「悠斗を運んでやれ、もう動けんだろうしな」

男たちの仲間の一人が言った。俺はやはり何処かに連れて行かれる、と。だからこそ、ダイを睨んだ。

ある行動をとるための合図だから――。

それから間もなくユートは連れて行かれた。

「お、お兄ちゃん!お兄ちゃんを連れていかないで!」

梨沙は泣き叫ぶ。今までに連れていかれた時よりも男たちが狂暴だったからだ。

「ミナヅキ、落ち着け「落ち着けません!」…くそ」

梨沙とシイナは二人涙を出していた。いくら強がっているシイナでもこの時ばかりは無理らしい。

「ダイ、ユート君は何て言ってたの?目、使ったんでしょ?」

カトはニマニマしながらダイの肩に片手をのせていた。ダイは思い出す。


――ユートさんが連れ去られる少し前、

扉の前でグズグズしていた僕の肩に誰かの手が触れたんだ。誰かな、て思って振り向くとユートさんで。ユートさんはこう言ったんです。

「ダイ、これからもし、俺がお前を睨んだら、容赦なく俺の心を読め。お前の目の力が必要になる時が来る、絶対に」

反論しようとしたんですけど、ユートさんを包むオーラが異常で…信じるしかないのかなって思ったら、男たちはユートさんを狙っていて。もしかしたら、こうなる事が分かっていたのかなって思ったんです。



「ダイ、ユートは何て言ったんだ?」

シイナはこれ以上ないくらいにダイを睨んだ。

ダイは唾を飲み込み、言う。

「今から言うことは俺、ユートの言葉だ。心して聞くように。まず、先刻の男たちは梨沙が知っているだろうが、結構前に俺を拐った奴等だ。だからアジトまで行けば何とかなると思う。だが、お前らに頼みたいことがあるんだ。俺は靴の中に発信器を仕込んである。だからミネに発信器のIDは伝えてあるから、ミネの言った場所まで来い。おそらく俺が捕らわれるであろう場所は車で三時間はかかる。だから、今すぐに出ろ。それから…梨沙、あの時の奴等だ、気を付けろ」

ダイが言い終わると、皆が唖然としていた。拐われるという時に、こんな作戦を立てたのだ。冷静すぎるくらいだ。それからはユートの伝言通りに行動した。カトが大人を欺き、車を借りる。そして皆が乗り込むとミネにナビゲーションしてもらい、途中に休憩を挟みながら目的地――ユートの捕らわれている場所へ向かった。


――悠斗を拐った奴等は

目が覚めると俺は白一色の部屋に寝かされていた。両手足は特に縛られている気配が無く、動くことは簡単にできる。暫く体に不自由が無いか、軽く運動していると、扉の前で誰かが話している声が聞こえた。俺はベッドに座り、男が入ってくるのを待つ。

「よぉ。久し振り、の方がいいのかな?」

冷静に、俺はお前らの事を知っていることを遠回しに言う。それは許容範囲だったのか、あぁ。と頷く。俺はベッドから立ち上がり、男の目の前に立つ。

「悠斗、俺たちの仲間になる気はないかー?」

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