イチゴ大福。
甘い。
「俺が好きなのはお前だよ!!」
そんな甘いセリフ、先輩に言われたら…
とろけちゃうよ。
だけど実際の私は、
見ているだけ。
きのうも今日も、
それからきっと明日もあさってもね。
──ドン!
「……」
「…すいません!!」
うわ…五十嵐だ!!
五十嵐修斗
名前はかっこいい男って言われてるやつ。
完全に名前負けしちゃってるんだ、こいつ。
「あ、あの…すいません。大…丈夫ですか??」
弱々しいやつ…。
先輩と同じ
「男」とはまるで思えない。
「あ!最悪〜…」
本当、最っ低!!
あたしのイチゴ大福が…。
ぺちゃんこ…。
「あの…?」
あ〜イラつくなぁ!
「あ〜もうまじイラつく!!」
「…そんなにイチゴ大福が好きなんですね!!ごめんなさい…!」
こいつ…
「そうじゃない!!そうだけど…でもそういうことじゃなくて!何でそんなに弱々しいんだよ!!男のくせに!!もっと堂々としてなよ」
やばい…。
これじゃただのやつあたりじゃん!
あたしの恋愛がうまくいってないからってこいつには何にも関係ないのに…。
「…ごめん。今のはただのやつあたりかも。」
「いいですよ。気にしないで下さい。」
こいつ…
「ムカつかないの?怒っていいよ!!」
「別に僕は怒る理由なんてないし…。」
うわ…僕だって!
今時
「僕」なんて言うのダサいでしょ。
それにふつうこういう状況なら怒ったっていいのに…。
君は弱々しく、手を差し出した。
その手の中には…
「あ、イチゴ大福…?」
ピンクの可愛いイチゴ大福が一つ。
「あげます!!」
「…何で?」
「え…だって、好きなんですよね?イチゴ大福…」
「そうじゃなくて!!何でイチゴ大福なんて持ってるの?(笑)」
本っ当、変わってるやつだな。
とことん変なやつ。
「…僕、バイトしてるんです。和菓子屋さんで。だから足りなかったら買ってくるんで言って下さい!」
何か…
「…あたし別にイチゴ大福、好きじゃないよ。」
「え!?だって…あの」
ちょっと可愛い。
「ごめんなさい…」
何か…
「何で謝るの?(笑)」
「何となく…」
ちょっとだけだけど…
「…ありがとね!」
「え…?あの…?」
ほんわか温かくなる♪
イチゴ大福は甘い。
僕、もたまには良いかもね♪