迷子迷路
僕は今どこを歩いているんだろう。
なんだか適当に道を進んでるうちに、窮屈な道に入ったみたいだ。
僕は大丈夫大丈夫、そう嘯きながら、空を飛ぶ雀を見てる。
人一人が通れるような場所。レンガの壁は、何よりも赤く威圧感を漂わせている。
大丈夫大丈夫、足取り軽く、なんならスキップでもしながら、僕はただ前に、ただ前に、あるだけの道を進む。
この迷路、実は阿弥陀くじにでもなってるんじゃ、とも思うほどに行き止まりがない。
後戻りも効かず、るんるんと、足を弾ませ、嘯いて、僕は行く。
ただただ、分かれ道はどちらにしようかなーっと、選択肢を選び、息を整えながら、お気に入りな曲を口ずさみ、ふんふん、と、ゴールを目指して。
今どこにいるんだろう。
僕は不安じゃない。
不安じゃないんだ。
足は軽い。
笑顔を作れば、スキップもしてる。
不安なんか、ない。
レンガの壁は、ひんやりとし始める。
冷たくて気持ちいいレンガを、触りながら、今ある道を、どこまでも進む。
手が痛い。
レンガでずるむいたのかもしれない。
どうだっていい。
だって、僕はそんなの怖くないから。
僕はそんなの全く怖くないから。
手から力が滴り落ちてるみたい。
でもどうでもいい。不安じゃないから。
今はこの迷路を、どちらにしようかなーっと、進めばいい。
誰かの名前を呼んでみた。呼んでみただけ。
目からしょっぱいのがにじみ出てる。
何も痛くないのに。
るんるんるん、と真っ赤な手をぶんぶん振って足を動かして、笑顔を覗かせ、囀りを聞きながら、嘯く。
嘯いて、何をしようか。
レンガは冷気を放つ。
レンガで阿弥陀くじみたいにしようと思ったけど、きちんとし過ぎて、分かれ道だらけ。成立しちゃいない。
僕は動く。
ゆらゆら。
ふらふら?
まあ、とにかく、足を回し、肩を回し、それでも僕は笑ってる。
笑いながら、笑い過ぎて涙が出て。
ああ、ようやく光があるな、と思った頃には。
僕の両手と両足は動かなくて。
口だけは、不安なんかない。怖くなんかない。えへへへへ。とそう動かしてる。
空気が微かに漏れて、へぇ、へぇっとだけ聞こえるけど、僕の頭にはしっかりと、叫ぶように聞こえてる。
後は、もう少し、もう少し。
ぐにゃぐにゃな視界だってどうでもいいけど。
僕は、もうすぐ、ゴールに着く。ようです。