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袖振縁の受難  作者: 凉月
3/10

縁、自動車と出会う

 男――江口えぐち勝平かっぺい

 女――袖振そでふりえにし

 勝平――自転車のサドルに。

 縁――自転車の荷台に。

 男女――二人乗り。

 自転車――走る。

 走る――田園風景。

「ほら、縁ちゃん、もっとギューって抱き着かなきゃ」

 俺は、お寺から自宅に向かって自転車をこぎながら、荷台に乗っている縁に声を掛ける。

今までの人生で、女子と自転車二人乗りとか、したくても絶対にできないことが、今できているんだ。もう、こんな機会一生無いかもしれないし、精一杯楽しんでおかないと、孫だろう?

ニヤニヤしながら言う俺に対して、縁はえらく不機嫌そうに言った。

「五月蠅い! バカものめ!」

 言いながら、俺の後頭部を、ペシンと叩く。きっと、顔を真っ赤にして怒っていることだろう。ていうか、今も、俺の世話になるのは不機嫌だけど、自転車超楽しいって顔してるんだろうな。見えないけど。想像しただけで、萌える。

「だいたい、何でまろがこんな奴の後ろに乗らなきゃならんのぢゃ!」

「いや、縁さん、あなた、これ、乗れないでしょうが?」

「バカにするな! 天才陰陽師であるまろにかかれば、この程度、造作もないわ!」

 俺は、思わず口を衝いて出そうになった言葉を飲み込む。きっと、『あれぇ、さっきそこのお寺で、盛大にこけていらっしゃったのは、どこのどちら様でしたっけぇ?』なんてことを言えば、次は白虎くんに引っ搔かれるどころか、喉元に食らいつかれる気がする。縁の怒り顔は見たいけど、いくらなんでも、それは勘弁だ。猫サイズの虎に喉笛食い破られるとか、そんなギャグ漫画みたいな死に方、勘弁だ。

 代わりに、俺は縁にこういった。

「いや、ていうか、家の場所知らないだろ、お前? 素人が二人乗りなんて、無理だし」

「そんなの、お前が案内すれば、済む話ぢゃろ?」

「走れと! 一体何キロあると思ってるんだよ!?」

「帰路? 何を言っておるのぢゃ。別に、一番近い帰路で帰れば、よいではないか?」

「違うわ!」

 ああ、そう言えば、平安時代に、㎞なんていう単位は、なかったっけ。と言う考えが、勝平の頭に浮かぶ。

 天才だけど色々と話のかみ合わない縁に勝平が溜息を吐く。

 音――エンジン音。

 音――前方。

 音――農家から。

 音――軽トラ。

 軽トラ――農家から出て来る。

 軽トラ――田舎道をこっちに向かって。

 俺は、前方から軽トラックが来るのを確認すると、自転車の速度を落として、道の端を走る。いつもみたいに、徐行したまま軽トラとすれ違おうとしたその時だった。

 俺の頭を、そう言えば、漫画とかだと、昔の人間が車に立ち向かっていくのって、お約束だったよな? という考えが掠め飛んで行く。同時に、縁の方を全力で振り返る俺だったが、遅かった。

 あの、天才高飛車残念陰陽師が、こんな物を見て、じっとしている訳が、なかった。俺の腕に、衝撃が伝わってくる。

 勝平――必死にバランスを取る。

 縁――跳躍(てぇい!)

 跳躍――自転車から。

 跳躍――失敗。

 失敗――落下。

 落下――勝平の目の前。

 落下――着地(ベシャッ!)

 原因――反魂の術。

 原因――生前の身体能力の喪失。

 縁――潰れたカエルのようなポーズで停止。

 勝平――急ブレーキ。

 停止――縁の直前。

 軽トラ――縁を回避。

 軽トラ――文句を言いつつ走り去る。

 勝平――自転車から降りる。

「あのな、縁さんやい。今のはな、自動車って言ってな、この時代の、牛車みたいなもんなのな? だから、飛び掛ったり、するんじゃないぞ?」

 縁――無言。

 縁――動かない。

 勝平――無言。

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……

「その、大丈夫か、縁?」

「痛いのぢゃ。心が」


マズい。自分で使い方決めたクセに――の使い方が、割とナゾだ。

一応のルールはあるんですけど、なんか落ち着かない。

一人称との親和性が、無いのかな?

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