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流星のヴァルキリー  作者: 夢見 旅路
第3章 反骨の星
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第20話 残り火

 ダーナ帝国騎士団の精鋭騎士、アイル・ガーランドが死んだ事により残った帝国騎士団の兵士たちは撤退、若しくは大人しく捕虜となった。星間連合軍、パルム惑星軍共に損耗が激しい事から追撃は行わず戦いは日が昇る前に終息した。

 そして一夜明けた街を深い悲しみが包み込んでいた。

 ダーナ帝国が誇る精鋭騎士を討ち果した事よりもその戦いで残された爪痕の方が壮絶だったからだ。

 城壁の外側では敵味方の死体が入り混じっている。敵側の生存者はほぼいないが死体に紛れてまだ息のある味方を助ける為に兵士たちはまだ働いている。血と様々な物が燃える匂いに兵士たちは苦痛の表情を浮かべながら歩き回っている。

 街の住民は事前に避難をしていた。しかしその被害は深刻な物だ。ヴァルキリーとハティの戦いにより倒壊した建物は多く、またハティが駆けた道にいて巻き込まれた兵士たちは見るも無残な姿に変わり果てた。何より住民の多くが街の外ではなく街中の避難所に身を寄せていたのが災いした。突如として行われた避難は全ての住民を外に逃がす時間もなく、仕方なしに地下にある避難所などに移動するしかなかった。その幾つかの避難所はハティの無情な脚によって天井を崩され多くの命を奪った。無事だった住民や兵士によって今も救助活動は続けられている。だが聞こえてくる声は悲しみ声ばかりだ。動かぬ我が子を腕に抱え天に向けて呪詛を吐く母親がいる。誰も彼女を止める事は無い。皆、同じ気持ちだからだ。

 そしてハティの最後の一撃。その一撃によってダーナ帝国の目標であったコンクリートの建物は壊滅した。ハティがぶつかった箇所から生じた黒い渦は半秒にも満たない時間だったが建物の半分を抉り、地下にあった研究施設も崩壊した。周辺の民家や建物にも影響を及ぼしたのだが肝心のハティの残骸は一つも見付からなかった。フランたちは原因を調査すべく動いているがその表情は疲れ切っていた。

 その黒い渦が出した被害に巻き込まれて逝った命があった。

「…」

 フィオは長い間そこで立ち尽くしていた。簡易テントのその奥に進む覚悟がなかった。いや認めたくなかったのだ。誰もフィオを気に留める者はいない。誰もが自分自身が抱える悲しみと向き合うので精一杯だったからだ。

 嫌だと悲鳴を上げて異常な心拍を上げる胸を抑えてフィオは踏み出した。

 簡易テントには死体安置所と書かれていた。


「失策でした」

 ケインズはそう切り出した。

 敵の行動は予想通りだった。陽動も見抜き対処する事は出来た。

 何よりあの<幽霊船>相手にも一矢報いた。

 そしてケインズの目論み通り帝国騎士を撃破するに至ったが、その被害は軽視できるものではなかった。

「事前に民間人の避難は行えていた。あの新型機に侵入されるのは予想外だったが…」

「あの一機の被害だけで街全体で3割近い被害が出ています。今後の復興を考えると大規模の資金が必要になるでしょう」

 グレリオの慰めをケインズは受け入れる事無くそう言った。

 そもそも作戦の大前提として街の中に敵機を侵入させない事が決められていた。

 只でさえ敵を誘き寄せる為の標的としてこの街を使うとして住民やパルム惑星軍から反発を招いていたのだ。

「だが作戦に絶対はない。だからこそ住民の避難をさせていたのだろう」

「それでも住民からの恨みを買うでしょう」

「意外だな。<白蛇>がそんな事を気にするなんてな」

 そうグレリオが揶揄(からか)う様に言うとケインズは肩を竦めた。

「今後の復興支援を行う際に住民の協力が必要でしょう?その時に余計な悪感情が蔓延っていては支障が出ますでしょう。私個人への悪感情だけなら構わないのですが、彼らの矛先は星間連合軍に向いています」

「…確かにな」

 グレリオは溜息をついた。件の住民代表(ダルニアン)からの声も届いている。目を通しているが気が滅入るばかりだ。ケインズも被害報告書を眺めながら嘆息する。街への被害もだが星間連合軍とパルム惑星軍の両軍にも少なくない被害が出ている。

 それは戦場で戦った兵士以外にもだ。戦死者の名簿の中でその名前を見付けた時、ケインズは少なからず自分を責めた。


 煙の匂いが立ち込める街を睥睨してフレデリックはやりきれない感情に飲み込まれていた。

「ひでぇな…こりゃあ……」

 ダーナ帝国の襲撃により半壊した街は至る所にその破壊の痕を残している。

 やりきれない表情で首を横に振るとフレデリックは立ち去った。ここにいても自分に出来る事はない。だがそれでもフレデリックはどうしてもこの街を自分の眼で見ておきたかった。

「くそ…」

 結局、どういう思いをするのか分かっていながらだ。

 苛立たし気にシルバー・ファング号に戻るその途中で医務室にいるはずのアリアを見つけた。

 その表情は無機質だ。けれども何時もと違い無表情を装っている様に感じられた。

「…?おいどうした」

 声をかけるとアリアはゆっくりした動作でフレデリックの方へ振り返った。今、初めてフレデリックが近くに居た事に気付いたように。けれどすぐに視線を外した。一心不乱に目の前の光景を眺めている。そんな感じだった。

 普段からは想像も出来ない隙だらけな様子にフレデリックは怪訝な顔をする。

「…もしも」

 そんなフレデリックは他所にアリアはポツリとつぶやいた。

「私があの時、<幽霊船>を撃墜させていたら被害はもっと少なかった」

「双腕肢乗機単機で戦艦を落とせるわけないだろうが。あの距離から艦橋を狙撃して見せた事さえ滅茶苦茶なんだぞ」

 それにあの一発がなければあのまま<幽霊船>がその場に留まり続け戦況はもっと悪くなっていたかもしれない。

 アリアの一撃を責める者など誰もいない。

「けど撃墜させていたらそのまま戦線を離脱する事なく、<青翼>とだって…」

「待て。ちょっと待てって」

 フレデリックはアリアの言葉を遮る。

 気付いたのだ。彼女の表情の理由に。

「まさかこの被害は全部自分のせいだと思っているのか?」

「……」

 答えは沈黙の肯定だった。フレデリックは呆れた表情を見せて溜息をついた。

「例えお前があの場に居たって如何にかなってかなんて分からないだろうが」

 フィオから聞いた話だとあの陸戦機は奇想天外な動きを見せて翻弄していた。それだけでない。操縦者としても一流の腕を見せた。

 あのロイでさえ機体の武装を破壊させられ一時後退を余儀なくされた。

「お前の腕を否定するわけじゃないが…」

「分かっている。でも…」

 アリアは眼前の光景をじっと見据え答えた。その眼は崩れ落ちた瓦礫に向けられ、その耳は絶え間なく紡がれる悲鳴で埋め尽くされていた。

「こんな光景、知らなかった」

 その様子を見ただけでフレデリックは大体のところを察した。

 自分が何故、この街を目に焼き付けておこうかと思ったのか、それと理由は似ていた。

「戦場で、民間人が犠牲になるのを見たのは初めてか」

「……戦争は殆んどが宇宙で行われる」

 そうだなとフレデリックは呟いた。惑星を巡っての戦争は宇宙で行われるのが常だ。全ての惑星が単独で人の営みを回せる訳では無く、食料や物資を他の惑星と交易しながら生活していくのが普通だ。その為、受け入れ口である惑星の外、つまり支配宙域を奪われた時点でその惑星は占拠されたに等しい。

 故に戦争は宇宙空間で行われる事が殆んどだ。アリアの認識としてはそうだった。惑星内、重力下での戦闘もあると言うのは当然理解した上での事だ。

 しかしそれは以前の生死に対する考え同様に理解しているだけだったとこの時、痛感した。知らなかったとしか言いようがない。民間人が犠牲になるとはどういった事なのかを。

「軍人を…同じ軍人を撃つ時には覚悟なんていらない。お互いがお互い様だし」

「お前はそうなんだよな」

「惑星の占領だって…その惑星住民を訳もなく撃つ理由は無い。余計な怨恨が生まれればその後の統治に影響する」

「そうだな」

 アリアはずっと目の前の光景を見詰めたままだ。フレデリックもそんなアリアの横に立ったまま話を聞く。

「民間人が犠牲になる必要は何処にも無い」

「当然だ」

「だったら…」

 アリアはギュッと拳を握りしめる。

「だったら…これは何?」

「戦争だ」

 アリアの問いかけにフレデリックは間を置かずに断言する。

 そんなフレデリックに驚いてなのかアリアはフレデリックの方をもう一度振り返った。

「これも戦争だ。国同士が武器持って殺し合いすれば、誰が傷ついて死んだとしても戦争なんだよ」

 フレデリックも昔、似たような質問を上官にぶつけた事があった。どうして民間人が犠牲にならなければならなかったのだと。その時の上官は煩わしい新兵を一睨みして、戦争だ仕方がないとだけ言った。

 フレデリックはその言葉が耳から離れない。

「民間人が近くにいる様な所で基地を造れば戦争になったら巻き込まれる。最前線にいればその位、ここの惑星住民だって分かっていた筈だろ。そりゃあ民間人をわざと巻き込む様な事は常識的に禁じられているさ。いや、条約としても定められている。けど戦争に関する基本的な条約がどれだけ結ばれようと所詮はただの言葉と言葉の繋がりだ。何の拍子で破られるかなんて分かりゃしない。現にそうだろ?工場惑星でのテロだって民間人から犠牲が出た。今に始まった話じゃないしそれが初めてって訳でもない。星間連合軍(ウチ)だって身綺麗じゃない事くらいやっているだろうさ。それもこれも全部、戦争だから起きるんだ」

「戦争だから…」

 仕方がないと言うのとアリアが言葉にするよりも先にフレデリックは強い眼差しで崩れ落ちた街並みを目に焼き付ける。

「戦争だから…戦争だから俺たちは民間人から犠牲を出しちゃいけないんだ」

 フレデリックは耳に残る上官の言葉を真っ向から否定した。

「だってそうだろ。俺たち軍人は戦う人間なんだ。戦う人間と戦う人間同士だったら戦いになる。けど民間人は戦わない人間だ。戦う人間と戦わない人間同士じゃあ一方的な殺しでしかない」

 フレデリックの言葉にアリアはじっと耳を傾ける。そこには小心者のフレデリックはいない。大きな存在の前には萎縮し、ロイやアリアの才覚に妬みを覚えている心の小さな男。だがそれもアリアが彼の事を本質的には知らなかったからだ。

「あぁ畜生。何でお前がそんなに気落ちしているんだよクソ。もっと悔しくなるじゃないか」

 フレデリックは苛立たしげに舌打ちをしてアリアに八つ当たりをする。何が悔しいのだろうか。アリアの様に才能が無い事だろうかそれとも亡くなった彼らを助けられなかった事だろうか。

 アリアが訊く事は無かった。ただ暫く2人で瓦礫の街を見つめ、後悔を胸に焼き付けた。


「ところで一つ聞いていいでしょうか?」

「どうした」

 一頻り愚痴を零してケインズは事務作業に向き合っていた。グレリオもグレリオで処理しなければならない事務作業が山積みだ。

「いえね。技術連合からどれ位、見返りを貰っていたのかなと思いまして」

 だがケインズの言葉にその手もぴたりと止めざるを得なかった。

 グレリオは鋭い視線を向ける。しかしケインズはどこ吹く風と言った表情で事務作業の手を止めない。余裕を見せつけている。意図的にだ。

 その証拠にケインズの瞳が蛇の様に細くなっているのにグレリオは気付いた。

「<白蛇>…か。成程な、油断ならない奴だなお前は」

 そう言ってグレリオは溜息をついた。

 誤魔化しも利かない。そう思い口を開いた。

「技術連合の技術者は最前線に来てはならない、ヴァーナンド・ランスターは流れの技術者を名乗っていた。それで通してきたが何時気付いた?」

「ランスター少尉にケビン・パトリオット副班長との会話を全て報告する様に伝えておいたんです」

「…口を滑らせたか」

「技術連合の隠し施設に案内したのが拙かったですね」

 動かない研究機器を前にケビンは尋ねた。何か聞いていないかと。この場合、フィオに尋ねるという事は、それはフィオの養父であるヴァーナンドから何か聞いていないかと言う意味でしか考えられない。

 だがそれだとヴァーナンドが技術連合と関係あるのを知っていなければ成立しない話だ。

「それと決定打だったのは写真ですね」

「写真?」

 グレリオはピクリと眉を動かした。

 そんな話、自分は聞いていない。

「研究施設にあったらしいんですがそこにヴァーナンド・ランスター氏が写っていたそうです。ランスター少尉がそれを指さして教えたそうなんですがパトリオット副班長は疑問もなく受け入れたそうですね」

 おかしいでしょとケインズは言った。

「疑問に思う筈です。流れの技術者なのにどうして技術連合の人間と写真に写っているのか、と」

「あぁ…」

 グレリオは顔を手で覆った。墓穴だった。まさかそんな所から勘付かれるとは思ってもいなかった。

「それで最初の質問に戻るのですが」

「ソード・ブレイカーの開発と配備、それに今も少なくない資金援助を受けている」

 グレリオはあっさり白状した。そもそも今まで隠し通せたこと自体、奇跡だろう。

 何せ目の前にいるのはそこらの<お星様>等ではなく、星間連合軍にその人ありと恐れられたあの指揮官なのだから。

「具体的な事は知らなくてもこの街の住人ならほぼ全員が知っている事だ。それが星間連合条約に違反する事だとは薄々分かっていても、この街の守りはソード・ブレイカーによって維持されてきた。分かっていても口はつむぐさ」

「技術連合側のメリットは何です?例の研究施設の隠匿ですか?」

「いや…実を言うとその事に関しては俺も知らされていない」

 グレリオは僅かに視線を逸らしてそう言った。

 どういった理由で技術連合がこの街を援助していてくれたのか噂ですら聞いた事はなかった。そもそもあの秘匿されていた研究施設の存在すら今まで知らなかったのだ。

「あるいは前任の司令官なら何か知っていたのかもしれない」

「前任は何年ほど司令官を務められていたのですか?」

「確か…8年だったか」

 そうなると更にその前の司令官を見つけてきても事情は分からないだろう。

「必要なら前任の遺した物を調べてみるが?」

「あぁいえ。恐らくは研究施設の秘匿なのでしょうが…」

 ケインズは何か引っ掛かりを感じていた。

 技術連合はこの地に秘密の研究を行っていた。それを隠す為にエリア37に防衛兵器を配備して資金の提供を行っていた。それで辻褄は合う。だが何かを見落としている気がする。

「そうだ…何故、ダーナ帝国はその研究施設に気付いて狙ってきたのだろうか」

 狙った理由には想像がつく。だが何故、気付いたのかだ。気付くに至った要因が分からないのだ。

「事前にスパイでも放っていたのだろう?それでこの街の事に気付いた」

「でも見慣れぬ人間がこの街に居たら貴方がたは気付いたでしょ?」

「む…」

 言われればその通りだ。現に不審な人物の目撃情報があったからこそあの鉱山の所まで行き、そして襲撃に会ったのだ。

「長期に渡って中隊が隠れていられるとは思えません。そんな兆候も無かったのでしょう?」

「だが4か月前だったか?そちらの警邏隊がダーナ帝国にやられたのでは?」

「あれは…」

 そう言いかけてケインズは口を止めた。ここに来る前にカイト・ハヤカワ中将から渡された情報を思い出す。ダーナ帝国によって警邏隊が壊滅、その相手は<灰翼>のディーン・カノータスだ。

 もしもその時に<青翼>達を惑星パルムに送り届けていたとしたら警邏隊への攻撃はそれを隠す為と考えられるが、

「いやだったら<青翼>中隊はもっと早くに行動を開始していた筈だ。それにこの惑星に<青翼>中隊を送り届けるのだったらあの<幽霊船>の方が適任」

 適任だからこそ<幽霊船>はこの惑星でも姿を見せて介入もしてきた。ではディーンのトリスタン級巡洋艦がこの近くに現れた理由は何なのか。

「…惑星パルムに降り立ったのは<幽霊船>…ではダーナ帝国から<青翼>中隊を運んできたのが、いやそれだと時期に辻褄が合わなくなるから」

「何を一人でぶつぶつ言いだしているんだお前は」

 グレリオは呆れた顔でケインズに言った。

 思考の海に沈むと周りが見えなくなるのはケインズの悪い癖だった。

 だが、

「いえ、もう少しなんです。もう少しで何かに気付ける」

「…コーヒーでも淹れてやろう」

 溜息をついてグレリオは立ち上がった。そんなグレリオを気にも留めずケインズはずっと考えを続ける。

「しかし考えてみるとおかしな事だ。あの精鋭騎士であるアイル・ガーランドがたった一個中隊で乗り込んでくるとは」

 幾ら腕に覚えのある精鋭騎士とは言え大隊規模の惑星軍に戦いを挑むなど無茶も良い所だ。もしも他のエリアから応援が来れば完全に包囲される。他のエリアの司令官は自分のエリアを守るために引き籠ると予想しても僅かにでもその可能性は拭い去れなかった筈だ。

「もしかしたらダーナ帝国でも援軍の手筈があったのかもしれないな」

「…援軍」

 ケインズはその言葉に顔を上げた。

 そして二度三度とその言葉を口にしてからスプーニーとの会談を思い出した。

「…」

 額の髪をかき上げ席を立つ。

 かと思えばまた座り直した。作業のために開いていた空間ウィンドウを全て閉じて指で机をトントンと鳴らす。

落ち着きのないその仕草にグレリオが声を掛けようとしたところで、

「あぁぁぁぁあああぁ!!」

「うぉっ!!」

 急に大声を上げるケインズにグレリオはコーヒーを零した。

「援軍!!援軍です!!そうか、当初の予定ではダーナ帝国騎士団の援軍の予定があったんだ!!だが何らかの事情でそれは取り止めになった。そしてその代わりに送られてきたのが<ポラリス>の一味!!だがら末端の兵士は<ポラリス>の関与を知らずまた<青翼>自身も余裕のない行動を取らざるを得なかった!!その<ポラリス>の一味も恐らく…そう言う事か!!」

「何がだ!!分かるように説明しろ!!」

「申し訳ない!!もし事情を事細かく説明したら私もバハムーシュ司令官も殿下に尻を叩かれる!!」

「は、はぁ?」

「あと折角、コーヒーを淹れて頂いたのですが至急やらねばならない事が出来たので失礼!!」

 ケインズは忙しく立ち上がり部屋を出ていく。

 説明する時間もまた迂闊に口にする事も出来なかった。

 もしもこの考えが正しければ非常に不味い事になる。

「殿下に何とか連絡を…いや駄目だ、<幽霊船>に通信を傍受でもされる可能性があるか」

 この事を耳に入れなければならない相手は星系を超えた遥か先だ。

 通信は危険すぎる。

「くそ失念していた。技術連合が誰にも気づかれず最前線で研究施設をこさえる事が出来る筈だ」

 それに気付いたからこそスプーニーもその事を指摘してきたのだ。

 あの会談の直後にフィオから聞かされた研究施設と街に潜り込んだスパイの話で後回しにしていた。

「秘匿されていたの研究施設だけじゃない」

 そう。秘密裏にされていたのはその研究が違法であるという事だけでなくもう一つ理由があったのだ。

 それは、

「<王家の路>か…!!」

 この最前線に隠された秘密の抜け道だ。

 そしてもう一つ思いついたことがあった。しかし確証はなく、事実だとすればそれは星間連合とダーナ帝国の戦いの大局を揺るがしかねない事だった。




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