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流星のヴァルキリー  作者: 夢見 旅路
第3章 反骨の星
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第14話 問題は山積み

3月は休みが4日しかありませんでした!!


……いや、ホント執筆速度があればいいんですが…

 ケインズは事前にグレリオから渡されていたエリア37担当陸戦大隊の資料を開いていた。エリア37担当陸戦大隊は中央司令部としてこの街を要塞化しており、近隣の担当している町に戦車小隊などを送り込んでいる。

 この街に駐留していた戦車隊は4個小隊。うち半数がこれまでの戦闘で失っており近隣の町から援軍を出させていたがそれも<ポラリス>のテロ活動で思う様に進んでいない。

「まずいな。敵の思うつぼじゃないか」

 ケインズはこの一連のテロ活動の目的を察していた。

 恐らくはこの街に戦力を集めない為だ。近隣の町で問題を起こす事でそこから援軍を出しにくくしているのだ。いくら司令部の命令とは言え目の前で敵が破壊活動を勤しんでいるのを止めない訳にもいかない。司令部としても無視してでもこっちに来いとは流石に言えない。そんなことを言ってしまえば住民の反発は目に見えている。

「そうして戦力を集めさせないようにしてこの街の警備を手薄にし強襲を掛ける。手堅いと言えば手堅いがこの作戦、やっぱり裏で手を引いているのは<灰翼>かな」

 この前の海賊騒ぎの時と同様に本来の目的から目を背けさせる手際が良く似ている。

 となれば先ほどベンが報告を上げてきた敵兵が潜り込んできたと言う情報も気になる。

「マイカ君、バハムーシュ司令官とはまだ連絡はとれそうもないかい?」

「最優先でこちらに連絡を入れてもらう様に再三申しているのですが…」

 マイカは苦り切った顔で視線を逸らす。パルム惑星軍から色の良い返事を貰えていないのだろう。ケインズは分かったとため息をついて立ち上がる。

「バハムーシュ司令官は今どこにいるって?」

「司令官室で住民代表と話し合いをしていると向こうの副官は言っています」

「ならばそこに直接乗り込むしかないね。ベンは…他の事を任せているから白兵戦隊から誰か人を寄越すように言ってくれるかい」

「分かりました」

 ケインズは今回の失敗を大いに反省していた。元々星間連合軍と惑星軍との間では非常に溝がある。情報の共有や指揮系統に関しては綿密に打ち合わせをしなければならなかったが状況がそれを許さなかった。

 もしも<灰翼>ことディーン・カノータスがそこまで考えてケインズたちを追い込んでいるのだとしたらもう脱帽物だ。

 しかしケインズには聊か気になる事もあった。

「何かこの敵の作戦…余裕がないように見えるな」

 何かに追い込まれてテロ組織の手まで借り出している。そんな印象をケインズは受けた。ダーナ帝国の側で何かあったのだろうか。そんな予感がしたが明確な確証はなかった。

 ケインズは戦況を改めて考える。現状、最大の敵はダーナ帝国だ。新型機やデュランダルなどの双腕肢乗機、それらに対抗できる戦力は星間連合軍でなければ厳しい。特にそれを率いているのはダーナ帝国でも指折りの精鋭騎士であるアイル・ガーランドの可能性が高い。その帝国と裏で結びついている<ポラリス>はダーナ帝国を如何にかする事が出来れば、後はパルム惑星軍で対処出来るはずだ。

 少なくとも星間連合軍とパルム惑星軍と合同で当たるよりも迅速に対処できるだろう。

「なら最善の手はダーナ帝国をさっさと打破してここから立ち去る事だな」

 とケインズは皺の寄った額を揉み解しながら嘆息した。


 謎の研究施設の解明を命じられたフランはいきなり大きな壁に当たる事になった。

「…思った以上に狭そうねこのダクト」

 これでは大人では入る事が出来そうもない。

「地下にありそうなんだがその辺の床を掘って探す訳にはいかないのか?」

「下手に穴でもあけてその研究施設が崩れたらどうするのよ」

 フランは顎に手を当てて考える。恐らく作られた当初は何処かに少なくとも地下に続く階段なり何かはあった筈だ。けれどそれも技術連合が撤退した時に消されているに違いない。床に穴をあける事を否定したが方法としてはそうするしかない。だとすればやるべき事は一つ。

 研究施設の正確な場所を探り、被害が出ないように穴をあけるのだ。

「ランスター、発信器と機材を持ってその研究施設まで向かいなさい。部屋の要所要所に発信機を取り付けてこっちで部屋の大きさと間取りを把握するわ」

「そのデータから安全に穴をあけると?」

 そう言う事よとフランは言うと整備班に指示を出す。

「けどその作業、俺一人でやるのか?時間掛かりそうなんだが」

「助手をつけるわよ」

「助手?」

「こんな事になるんじゃないかと思って応援をお願いしておいたのよ」

 ちょうど来たわとフランが言い、入口の方へ視線を向けるとそこにいたのはエルムとアリアだった。

「お待たせしましたフランさん」

「悪いわね。ランスターと同じくらいの体格となるとアンタら位しかいないから」

 暗に小柄だと言われフィオはこめかみをヒクヒクとさせる。

「ほら時間もないからさっさと進めるわよ」

 フランはそんなフィオの事などお構いなしに機材を預けると早く行く様に急かす。

 確かにフランの言う通り時間はない。フランの話によると、どうもきな臭いにおいが街に漂っているらしい。研究施設までの道案内が終わったらまたすぐに準戦闘待機状態になるのだろう。

 言いたいことは後で言おうとフィオは不満を呑み込みエルムたちを連れてダクトへと潜り込んだ。

「…あ」

「どうかしたかアリア」

 フィオを先頭にエルム、アリアの順番でダクトに潜り込んだがすぐにアリアが何かに気付いたような声を出した。後ろを振り向いて尋ねるがアリアは首を横に振って何でもないと言った。フィオは気にはなったものの時間もあまり無いので先に進む事にした。

「確かここを曲がって…お、あったあった。」

 道順を完璧に覚えていたわけではないが何とか目的地まで着くとフィオは縄梯子を下して先に降りる。

「よしっと…エルム、降りられるか?」

「もうフィオさん。私だってこれ位大丈夫ですよ」

 運動音痴にでも思われたのかエルムはむくれて文句を言う。しかしフィオの後を追って下に降りようとしたところでアリアがその肩を掴んだ。

「エルム、ちょっと待って」

「はい?」

 エルムの後ろにいたアリアはその肩越しからダクトの下にいるフィオへ顔を覗かせる。

 その表情は少し険しかった。何かあったのかとフィオの背に緊張が走る。

「ランスター」

「お、おぉどうした」

「……回れ右。後ろ向いてて」

「…は?」

 何でと訊ねようとした所でアリアの視線に殺気が帯びた。初陣の時の事を思い出しフィオは背筋を今度はゾッと震わせた。

 何だ、一体何があったんだと緊張が走る中、アリアは、

「……エルムのスカートが短い」

「………はい?」

 唐突に告げられた言葉にフィオはきょとんと眼を瞬かせた。

 一体それが今何の関係があるのだろうか。

 すると今度はこの鈍感野郎と言いたげに眼を細めて、

「角度によっては、見える」

「……」

 何がとは聞かなかった。スカート、短い、見えるの言葉からやっとフィオも理解に及んだ。顔を赤くしながらフィオは大人しく回れ右をして縄梯子の方を見ない様にした。

 恐らく、ダクトでアリアが気付いたのもこの事なのだろう。

「視線を向けたら…撃つから」

「分かってるよ!!」

「よろしい…エルム、先に降りて」

「はい。でもアリアさん。別に私、見えちゃっても気にしないんですけど…?」

「「お願いだから少しは気にして」」

 この時、フィオとアリアの意見が初めて合致したのだった。


指定されていた場所に機器を設置し終わると予め渡されていた無線に通信が入った。

『無事に作業は終わったようね』

「これで大丈夫なのか?発信機を数個所に置いただけなんだが…」

十分よとフランは答えた。発信機から発せられる電波の強弱と受信までの時間から部屋の形をシミュレートするとの事だが、コンクリートに囲まれたこの建物内で大丈夫なのだろうか。

『その為に今、無線で話しているのよ。実際にコンクリートの影響をどれくらい受けるかのテストも兼ねているのコレ』

「あー成程」

これ位、通話に支障がなければ問題はないとフランは言った。

『…ん。大体の場所と大きさは把握できたわ。あとはこっちから穴をあけていくだけなんだけど…』

「どうかしたのか?」

『悪いけどリュンネには残ってもらうわ』

「え?なんで?」

 フィオは怪訝な表情で尋ねる。当事者のエルムは大きな水槽が珍しいのか覗き込んでいる。アリアはその横でジッと何か考えているようだった。

『発信機なんかに万が一、不具合が出た時に見てもらいたいのよ』

「ここの天井に穴あけるんだろ?崩れでもしたら…」

『そんなヘマをかます様な奴はここにはいないわよ。それこそ万が一どころか億分の一の確率でも起きないわ。と言うか私が起こさせないし』

 とフランは自信満々に告げた。そこまではっきりと断言されると疑う気にもならない。それにフィオ達にも時間が迫っていた。

「ランスター、早く行かないと時間がない」

「あぁそういやミーティングがあるんだったな」

 フィオは心配げにエルムを見て仕方ないと決めた。

「あー…エルム、お前だけここに残ってほしいって言っているんだけど」

「私は構いませんよ。お手伝いできることがあったら何でも言ってください」

 そう胸を張るエルムにフィオは苦笑し無線を手渡す。

「あっちの言う通りにしていくれれば問題ないそうだから後は頼むな」

「はい。フィオさんもアリアさんもお仕事頑張ってくださいね」

 フィオは後ろ髪をひかれる思いで何度か振り返りながらも結局、アリアに急かされてダクトを通り外へ向かった。狭いダクトの中にも慣れて帰りは道を迷わなかった。

 しかし進む速度は来た時よりも遅い。

「エルム、大丈夫かなぁ」

「ランスターは心配性」

 気になっては足を止め、そう呟くフィオにアリアは呆れた声を出す。

「いや、だけどさ。あんな所で一人にして不安にならないか?」

「いざとなったら整備班のメンバーがどうにかしてくれる」

 あれでいてかなり優秀なのだとアリアは言う。フィオは普段、フランに尻を蹴飛ばされながら仕事をしているメンバーを―蹴とばされて若干嬉しそうにしている者を含め―思い出しながら、

「いや、仕事できるのは知っているけど、それとこれとは別で…」

「そんなに心配ならもっと普段から手元に置いておく努力をしたら?いつも私や殿下にデートの相手を取られて悔しくないの?」

「ぶほぉ!?何でそんな話題になるんだ!?」

「好きなんでしょ?」

 単刀直入な言葉にフィオは顔を真っ赤に染める。その上勢い余って頭を思いっきりぶつけてしまった。だが痛みなど気にならない位に顔に熱が集まっている

「す、すすす好きとかなにををををい言って」

「分からいでか」

 まさかこいつはエルムに懸想している事をこれまで隠していたつもりなのだろうか。アリアは半眼でため息をつくと、

「エルム以外、皆知っている」

「みみみ、みん皆?」

「リリア、隊長、アイザー、艦長、マイカ、ベン、後は…」

 そう言ってアリアが告げていくのは艦のクルーのほぼ全員。フィオはへろへろとその場で座り込んでしまった。

「エルムもそう言った所、鈍い。でもランスターは隠すのがド下手」

「追い打ち掛けるの勘弁してください…」

 顔を抑えて今にも泣きだしそうなフィオをアリアはさっさと進めと蹴飛ばした。

 結局、ダクトから出るまでに掛かった時間は行きの倍くらい使ったのだった。


「アンタら遅いわよ」

 フランは眉を顰めてそう言うが茹蛸状態のフィオは適当に聞き流しそのままフラフラとミーティングの為にシルバー・ファング号へ向かって行った。

 そんなフィオを怪訝な顔でフランは眺め、

「何あれ?何かあったの?」

「現実を突き付けてあげただけ」

 アリアはそう言った。フランはまた何か余計な事したじゃないだろうなとアリアに視線を向ける。以前よりも対人関係に気を使い始めたがどうにも余計な事言う時が偶にあるのだ。

 狙撃手の慧眼を使って太ったなんて本当に言わないで欲しい。

「ほら、アンタもさっさと行かないとミーティングがあるんでしょ」

「ん…」

 アリアは頷きそれから周囲を少し気にする素振りを見せてから、フランを手招きする。

「しゃがんで」

「何?内緒話でもしたいわけ?」

「いいから」

 有無を言わせない何かを感じてフランが腰を下げるとアリアはフランの耳元に顔を寄せて、

「……あの水槽、見た事ある。多分、間違いない」

「……」

 そう告げた。何がとはアリアは言わなかった。

けれど態々聞くまでもないとフランは重いため息をついた。

「そ。悪いわね、アンタにそれを確認してもらいたくて実は行って貰ったの」

「構わない。あの部屋に着いてすぐに気づいた」

 どうして自分が向かわされたのかを。

 確認したかったのだ。あの研究施設が遺伝子研究を行う施設かどうかを。

 実際にそこにいた事がある、そこで生まれたアリアの眼で確認をしてほしかったのだと。

 結果は、フランの予想通りだった。

「言っておくけどこれ、まだ外には出していない情報だから。知っているのは私と艦長だけよ」

「ランスターは?」

「何の施設かまでは分かっていないわ。ただ問題なのはあの施設に誰が関わっているかって事」

 アリアはフィオの養父が技術連合の出身でこの惑星に来ていた事は知らない。それを敢えて教えるつもりはないが、フランの言葉でアリアは誰が関わっているか、それを知ってはならないと感づいた。

「と言うよりも知られちゃまずい?」

「そう言う事よ」

 それも誰に知られてはまずいかは口にはしなかった。

 言わずもがなそんなものスプーニー以外にいないのだから


 司令官室に乗り込むとグレリオからひどく睨まれた。

 だがその正面に立っていた小太りの男からはもっときつく睨まれた。

「入室を許可した覚えはないぞ」

「申し訳ないですバハムーシュ司令官。何分、緊急の案件でして」

 ケインズがそう言うとグレリオはピクリと眉を動かした。

「グレリオさん、悪いがこの人たちをどっかにやってくれ。今は俺がアンタと話しているんだ」

 グレリオの前にいた小太りの男はケインズたちを忌々し気に睨みながらそう言った。先ほど聞いた話だと住民代表と話していると聞いていたがこの男が住民の代表なのだろうかとケインズは考えた。そして机の上に置かれた冷めたコーヒーを見てふむと頷き、

「バハムーシュ司令官、これは一刻を争う極めて重要な案件です。お時間を」

「引っ込んでろ!!今、俺がこの人と話しているんだ!!お前ら<お星様>なんざ後回しに決まって…」

「ダルニアン、悪いが引き取ってもらえるか」

「グレリオさん!?」

「その案件とはこちらが依頼していた例の情報の事か?」

 とグレリオは言った。ケインズはおっと内心で驚いた。

 意外とグレリオも強かな男らしい。

 ケインズは力強く頷き、

「えぇ例の情報です。至急、お耳に入れたく」

「そうか…ダルニアン。聞いての通りだ。今から聞く内容はお前の耳に入れる訳にはいかない…軍事機密に著しく抵触する情報なんだ。こいつらにはそれを探らせていた」

「……」

 ダルニアンと呼ばれた男はグレリオとケインズを数度見返すと、大人しく頭を下げて出て言った。

 護衛についていた若い白兵戦隊のクルーはケインズに小声で尋ねる。

「あの、機密情報でしたら自分も外に出ていた方が良いのではないのでしょうか?」

「え?あぁ大丈夫大丈夫。嘘だから」

「は?えぇぇ!?」

 反応が若いなぁとケインズは笑いながらグレリオの前に座った。

 先ほどの男をこの場から追い出すための只の方便だ。グレリオもそれを知ったうえで芝居を打ったのだ。

 ケインズは苦笑して、

「大分、参っていたようですね」

「住民の不満を抑えるのもそろそろ手一杯だ。もう何時、爆発するかわからんぞ」

 グレリオはそう言ってため息をついた。

「住民代表との交渉と聞いていましたが机の上に何も資料が置かれていないどころか空間ウィンドウすら開いていないので。まぁ一方的に相手側から主観論を押し付けられていたのかなと思ったのですが当たりの様でしたね」

 ケインズが机の上に冷めたコーヒーしか置かれていない事から気付いたのはそう言う事だった。ようは交渉と言う名の強要、熱かったコーヒーが冷め切るほどの時間もグレリオはそれに付き合わされたのだ。

「それで要件は何だ」

「<ポラリス>がこの街に潜伏しているという情報を聞いたのですが」

 ケインズがそう言うとグレリオは眉を顰め、

「言い訳になるが…そっちにも情報を共有するように言ってあったのだが」

「我々の準備不足ですな。もう少し事前に足並みを揃えられるように準備しておくべきでした」

 ケインズの言葉にグレリオはその通りだなと頭を振った。しかし過ぎてしまった事を言っていても仕方がない、グレリオは空間ウィンドウを開いてケインズに見せる。

 空間ウィンドウには外から援軍で向かってきた戦車隊が検問でやり取りしている様子が映し出されていた。

「4時間前の映像だ。隣町の戦車隊から援軍に来た中にこちらで身元の確認が取れない奴らがいた」

「その場ですぐに拘束しなかったのですか?」

「その戦車隊は来る途中で襲撃にあったらしく、4両あった戦車の内、1両しか辿り着く事が出来なかった。損傷はしているものの、自軍の戦車である事には間違いなかったのと検問を通る際に符丁を知っていたのでけが人を収容して身元の確認を後に回したそうだ」

 そのけが人たちは収容している最中に姿を消してしまった。

「その後、別の戦車隊から連絡が来た。大破した3両の戦車を発見したと」

「見つけたのは戦車だけではありませんね?」

「あぁ周囲には来るはずだった戦車隊の面々が死体で見つかった」

 その死体の数は来る予定だった援軍の数と丁度、同じだった。

「成程、途中ですり替わってきたと言う事ですか」

「あぁ。今、行方を追わせているところだがまだ見つかっていない」

「詳しい身なりなどをこちらに送ってください。こちらの白兵戦隊に捜索を命じさせます」

 ケインズがそう言うとグレリオは渋い顔をした。

 何を悩んでいるのかケインズにはすぐに分かった。

「現場でこちらとそちらが鉢合わせした時、トラブルが生じるのを恐れている場合ではありませんよ。早急に見つけ出さなければどんな被害が起こるかもわかりません」

「分かっている…こちらからも捜索を行っているメンバーに協力をする様に再度、命令を出す…いや、俺が直接行って、命令を伝えてこよう」

 グレリオはそう言ってため息をついた。自分の力不足を不甲斐なく思っているのだ。

 司令官として着任してまだ日が浅い自分に部隊の面々がなかなかついて来ない。信頼関係がまだしっかりと確立できていないのもあるが普段から折り合いの悪い星間連合軍と合同で作戦に当たらなければならない、その不満が全てグレリオに向いてしまっている。

「あぁクソ…今すぐ前任の司令官を墓の下から呼び出してきたいくらいだ…!!」

「心中をお察ししますよ」

 その外見に似合わない弱音を吐くグレリオにケインズは苦笑と共に同情した。


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