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流星のヴァルキリー  作者: 夢見 旅路
第1章 Boy and Girl engage Valkyrie
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第15話 戦場を奔る

戦闘シーンが警告タグに値するのかどうか……微妙に判断が付かなかったのでタグ増やしてみました。


そんなこんなで15話です。

「思ったより距離を開けられたな……」

 カラスはデュランダルの操縦席で呟いた。何時も使っている専用機ではなくガウェイン級に配備されていた機体の借り物なので操縦席にも僅かな違和感を感じてしまう。

 最初の強襲から一貫して敵艦は退転に徹し、反撃に応じてこなかった。お陰で追い詰める事は出来たがその分、距離を置かれてしまった。挟撃に成功した今、その距離は少しずつ狭まってきているが僅かながらも相手に時間を与えてしまった。

「間合いを詰めるのに時間を使ってしまったが……この短い時間の中で相手に反撃の糸口を掴ませていないと良いのだが」

『心配し過ぎですよ!!隊長っ!!』

 そう言って励ますのはラウルだ。ディスプレイ越しに見えるその顔には緊張の色は見えない。むしろ笑みさえ浮かべている。

 不真面目であったり遊びでやっている訳ではないがどうにもラウルは高ぶる感情を抑えきれていない所がある。若さゆえにそう言った所があっても仕方ないが何時かそれが命の危険に繋がるかもしれない。

頃合いを見て矯正していこうと部下指導について考えていると、

『何余裕ぶっているのよ!!その締りのない顔で足引っ張るようならその辺のデブリ同様、粗大ごみにするわよ?』

『へっ!!隊長とエレメント組めなかったからってやつあたりは醜いぜ!!』

『何よ!!それの何が悪いのよ!?』

『逆ぎれ?!』

 ぎゃあぎゃあと騒ぐ若者たちを年長者が戒める。

『いい加減にしろ2人とも。もうすぐ交戦範囲内だ。準備に取り掛かれ』

「フローラはドーラと敵艦の足を止める事に専念しろ。ラウル!!俺のエレメントである以上、覚悟してもらうぞ!!」

『了解っ!!俺たちの役目は…!!』

「敵陣に一番に切りかかる事だ!!」

 カラスはデュランダルのビームブレードを展開する。同時に左腕に装備したガトリング・ガンのセーフティを解除し構える。黒翼小隊の他のメンバーも各々武器を構え、後方から追ってきているガウェイン級の騎士たちも武器を展開する。

『っ!!敵艦より双腕肢乗機の出撃確認!!』

 旗艦のオペレータが声を上げる。どうやら敵も応戦する構えを見せたようだ。

 前方の戦艦から矢の様にして飛び出てくる機体。

 一番先頭の機体は2本のアンテナを持っていることから隊長機だろう。

 その肩にはパーソナル・マークが刻まれ――

「っ!!バカな!!」

 カラスは叫ばずには居られなかった。回転する3つの銃身から鋼鉄の弾丸が弾き出されるが敵の隊長機はそれをかわし、あろうことかそのままカラスのデュランダルの頭上を飛び越え後衛の機体に襲いかかった。

 マズイと思った時には既に味方へと危機を知らせていた。

「全機散開っ!!敵は連合のエース……っ!!<雀蜂>だっ!!」


 さっきの攻撃、結構ヤバかったなとロイは敵に感心しながらも敵の動きが大きく変わったのに気付く。こちらを警戒しての動き。どうやら向こうは気付いたようだ。

 自分の正体に。

「ハッ…俺も有名になっちまったもんだよなぁ!!」

 ロイはそう呟いて機体の方に描かれた自分のパーソナル・マークを思い出す。

 猛毒を持って敵を制す虫の姿。

 しかしその戦いは華麗に舞い華麗に刺すとは言うものではない。

 むしろその逆だ。

「うぉぉっ!!」

 荒々しい雄たけびと共にマシンガンでの牽制からフルスロットルでの接近戦、即座に展開したビームブレードがデュランダルの身体を斜めに切り裂き振り抜く。

 一瞬の出来事だった。

 残ったデュランダルたちは一斉にロイへとビーム砲を向ける。放たれる光の弾丸をロイは縦横無尽に駆け回避する。

 更に敵の1機に狙いを定め、

「いくぜぇ…っ!!」

 腰の追加兵装から2つのアンカーを放つ。それは星間連合の兵の中でも使うものは少ないワイヤー・ガンと呼ばれている兵器であり同時にロイが<雀蜂>と呼ばれる所以だ。

 使い手が少ない理由はただ一つ、扱いが非常に難しいからだ。射出されたアンカーは基本的に真っ直ぐにしか飛ばない。

「そこぉ!!」

 しかしロイは機体を小さく動かす事でアンカーの軌道を修正し敵に喰らいつく。2本のアンカーによって食いつかれた1機のデュランダル、ロイがトリガーを引いた次の瞬間、ワイヤーを通して莫大な電流がデュランダルに流される。

 デュランダルがガクンと震える。莫大な電流がデュランダルの身体を駆け巡り伸縮ケーブルはおろか内部の電子機器、更にはパイロットにまでその牙をむく。

 圧倒的な暴力で次々とデュランダルを葬り去っていくその姿、敵からすれば悪夢でしかない。宙を漂う物言わぬ骸へと一瞬で変えたロイはアンカーを切り離す。一度の使用で大概アンカーが電流に耐えきれず使い物にならなくなるので基本的に使い捨てだ。

 そしてこの切り離す瞬間にこそ最大の隙が生まれてしまう。それはほんの僅かな隙だがトリガーを引くには十分な時間だった。

 照準に入れ引き金を引く。弾き出された弾丸は機体を貫き、一瞬の静寂の後に爆散して消え去った。

 宇宙の塵となったその姿を見て―ロイは口笛を吹いた。

「さっすがぁ……」

 敵の攻撃が届かない後衛の更に後ろ、そこから放たれた亜光速の弾丸は寸分たがわずロイを後ろから襲おうとしたデュランダルのど真ん中を撃ち抜いた。

 右腕の電磁投射砲から空薬莢を排出させながら何時も通りの無表情で呟く。

「これで3機……」

 アリア・チューリップ。その狙撃の腕は生身だけでなく双腕肢乗機でも変わらない。狙撃仕様に特化したS2-27は機首の上部が開いていてそこから高性能センサーの瞳が覗いている。敵に狙撃兵が居る事に勘付いた帝国兵たちは的にされぬように上下左右、それこそ宇宙空間を縦横無尽に飛び回り撹乱する。

「………」

 しかしアリアは全く動じることなく高性能センサーに映し出される敵を見据え引き金を引く。たったそれだけで亜光速で打ち出された弾丸はデュランダルの堅牢な装甲を撃ち貫き鉄くずへと変えていく。

 機体性能だけで無い本人たちの生粋の実力。

 本物のエースたちの活躍を見せつけられフレデリックは悔しげに唇をかむ。

「畜生……出る幕ねぇぞ…」

 これまで追われる側で劣勢に立たされていた星間連合(こちら)側が2人の双腕肢乗機パイロットによって覆された。

 並みのパイロットだったらこうはならない。少なくともこの戦場でフレデリックは何も出来てはいない。マシンガンを放ってもそれは全てかわされるかデュランダルのシールドに防がれて効果をなさない。

「ち…っくしょう……っ!!」

 焦るあまり乱発したマシンガンは弾切れになり隙が生まれる。その隙を敵は逃さずに突いてきた。ビームブレードを大きく振りかぶりS2-27の頭上に振りおろしてくる。

「っ!」

 間に合わない直感的にそう感じたフレデリックは顔を引き攣らせる。だが予想していた終わりは来る事は無く、先方から飛んできたワイヤーとフレデリックのS2-27をスレスレで飛んでいく亜光速の弾丸が迫りくるデュランダルを退けた。

『油断するんじゃねぇぞフレデリック』

 茶化すような声で話しかけてくるロイは既に別の敵に向け銃口を向けている。

 アリアに至っては何も言わずにただ自分の役目に戻っていた。

 明確だった。足手まといの自分のフォローを難なくこなしながら戦うその様。

 腕の違いをまざまざと見せつけられフレデリックは小さく呻く。

「畜生……」

 フレデリックはやり場のない悔しさをぶつけるかのように弾丸を放った。


 思いのほか、ロイとアリアが敵を片づけてくれた。フレデリックが一度、敵に接近されひやりとした場面もあったがそれも2人がカバーしてくれたおかげで大事には至らなかった。

「そろそろかな……?」

 誰に言うでもなくケインズはゆったりと艦長席に座って呟いた。戦場でここまでゆったりとした態度が取れる軍人も珍しいだろう。不謹慎ともとれるが。

 対して艦長席があるブリッジは今、適度な緊張感に包まれていた。ブリッジ・クルーの多くが額に汗を流しながら情報所理に追われている。

 中でも一番緊張して見えるのは艦長席の後ろで不動の体勢で立っているマイカだ。

 彼らが共有する思いは同じ、即ちシルバー・ファング号はまともに戦えるのか。緊張の面持ちを浮かべるマイカにケインズは苦笑し、

「そこまで緊張しなくても良いんじゃないかい?君だってこれが初めての経験(ヴァージン)という訳ではないだろ?」

 セクハラまがいの言葉にマイカはキッとケインズを睨み、

「私がそうでなくともこのシルバー・ファング号はまだ実戦経験が少なくその能力にも……っ!!」

 問題が見受けられると言いかけた所でマイカは口を噤んだ。艦のナンバー2が言うには余りに不謹慎な発言だ。しかしマイカの言葉にクルーたちは同じ気持ちだと表情を強張らせる。あまりよくない緊張感だなとケインズはことさら表情を緩め、

「確かにこの艦はまだ経験不足だ。何が起きるか分からないという不安は至極当然だよ。むしろ想定外という事態はどんな戦場でも起こりうるし……だからこそ君たちクルーの手が必要なんだよ?」

 クルーたちがハッとケインズの方へと視線を向ける。

 ケインズは相変わらずとぼけた様な笑みを浮かべ、

「いいかい?我々思考できる生物は臨機応変に動く事が出来る。そして想定外という事態にも対応する事ができ、その点では例え何百年この先経とうとも機械よりも優位な立場に居続けるのは間違いないと私は思っているよ……突発的な事故、想定外の事態、予期せぬトラブル。そう言った事が起きたら君たちが対処すればいい。それ以外に関しては全面的にこのシルバー・ファング号を信じてやりなさい。機械と機械では補えない部分を担う君たちがいれば何も不安な要素は存在しないのだからね」

 ケインズはゆったりと口調でクルーたちの緊張を解き放つ。振り返っていたクルーたちは「り、了解っ」と言うと自分たちの作業へと戻っていくがその表情は先程までより柔らかだ。それでいてパネルを操作する指先は滑らかで無駄がない。ケインズはその様子を見て軽く頷きまた椅子にゆったりと座りなおして手を組む。その後ろでマイカは少し居心地が悪そうな顔をしながらこほんと出来払いをして、

「…申し訳ありません艦長。少し気が逸っていました」

「んー?ま、若者を諌めるのも年長者の役割だからね」

 若造扱いされマイカは恥ずかしさのあまり顔を逸らしてしまう。ケインズは気が付かない振りをして話を変える。

「にしても…敵の双腕肢乗機の中に結構なパイロットがいるみたいだね」

「は…?……あぁアイザー少尉に切りこんできた……」

 そう、フレデリックに切りかかってきたあの機体のパイロット。確か1番最初にこちらへ攻撃を仕掛けてきたのもあのデュランダルだったはず。前衛の1番槍を務めるだけあって腕は立つようだ。何よりロイとアリアの挟撃をかわしたあの手腕、並大抵のパイロットではあるまいとケインズは考えていた。

「機動パターンのデータから敵パイロットの推測が可能」

 リリアはディスプレイから目を離さずに淡々と呟く。

「そんなことまで分かるのですか?」

 マイカは驚きで目を見開く。リリアはコクリと頷き、

「<アトラスⅢ>にデータがあれば」

「確か<アトラスⅢ>には過去数千件の戦闘データが保存されているんだったね。そのデータから割り出しが出来るってことかい?」

「そう」

 ケインズの言葉に短く答えリリアはパネルを叩きデータの検索を始める。

 そして<アトラスⅢ>は過去の戦闘データから1人のパイロットを割り出した。

「……過去の戦闘データから類似する機動パターンを検出。ダーナ帝国戦闘工作員、カラス・ザーノス少佐…通称<黒翼>」

「なっ…!!」

「……精鋭騎士さんだったって訳か……」

 ケインズの額に縦線が刻まれる。帝国の戦線を支える戦士たち、その中でも特に優れし連合で言うエースに値する帝国の精鋭たち―それが精鋭騎士。

 皇帝より直接二つ名を授かり戦場ではその二つ名を顕わしたパーソナル・マークを機体に付け戦う。その存在は決して無視できるものではない。

 ズームで捉えた敵の機体を見てケインズはやはりかと呟いた。

「<三本脚の烏(ヤタガラス)>の隊章……間違い無いね」

「っ!!<黒翼小隊>ですか…?」

 精鋭騎士にして戦闘工作員であるカラス・ザーノス。幾度となく星間連合に侵入し数々の諜報活動や妨害工作を行い、その名と顔を知られているにも拘らず決して捕まる事の無い男。一説には東洋の<忍>と呼ばれる一族のものではないかとも言われている。

 そのカラスが率いるのが特殊工作部隊、通称<黒翼小隊>だ。カラスと同様、高い潜入技能と操縦技術を持ち星間連合内で暗躍する。

「これは…ちょっとマズイなぁ……」

 ケインズはそう呟くと顎を撫でる。

「フィオ君の方はどうなっている?」

「準備は出来ているとの事です……でも、あの艦長」

 マイカは言い辛そうに視線を泳がす。

「本当に成功……いえ、その……やるんですか、これ?」

 普段では考えられないくらい素の口調でケインズに尋ねるマイカの顔にはありありと困惑の色が浮かんでいた。

 が、ケインズはニヤニヤと笑い、

「なぁに……心配いらないさ。精鋭騎士が出てきたのは予想外だったけど、十分まだ対処範囲内だ」

 

 準備は出来ていても実際やれるかは分からない。フィオは何度目かになるか分からないため息を操縦席で吐いた。

『ため息つくと幸せが逃げちゃいますよ?』

 通信ウィンドウに映ったエルムが可愛らしく小首を傾げる。戦闘中にも関わらず、戦闘とは無縁なエルムと通信が何故繋がっているのか。

 それは偏にあの狸、ケインズのせいである。

『フィオ君の仕事が出て来るまで暇だろうから話し相手になってあげなさい』

 そう言って強引に通信を繋げてきた挙句、ロイ達が出撃してからずっと通信は固定されたままだ。

「しかし……滅茶苦茶な事言いだすよなぁ」

 そう言ってまたため息をつくフィオを画面の向こうのエルムがたしなめる。

 素人目だがケインズの立てた作戦とやらは無理がある様な気がする。こんな単純な手で成功するのだろうか。その上、その作戦の鍵を握るのが自分だと言うのだから不安は尚更だ。自然と眉が寄っていくのを見てエルムはにこりと笑い、

『フィオさん』

「なんだよ」

『私には双腕肢乗機の事もケインズさんの言っていた作戦の事も良くは分かりません。だから頑張ってとか大丈夫ですとかそんな気休めみたいな言葉言う事は出来ません。だから私からフィオさんに伝えられるのは1つだけ……』

 そう言ってエルムは柔らかなまなざしをフィオに向ける。

 エルムが時折見せる歳不相応な表情、同い年くらいなはずなのにエルムは何処か心の深さを感じさせるそんな少女だった。今の表情だってそうだ。そんな心の深さの一端を垣間見てフィオは少しドキリとする。

『……信じています。…あの時、手を差し伸べてくれたのがフィオさんで私、本当に良かったです』

 ロンドの家での事を思い出す。見ず知らずの自分に手を差し伸べてくれたあの時の事を、訳を聞いて仕方ないとか口にしながらもフィオは手を差し伸べてくれた。そこにある優しさにもしかしたらフィオ自身気付いていなかったのかもしれない。けれど手を差し伸べられたエルムははっきりと感じる事が出来た。だからこそエルムはあの時からフィオを信じることにしたのだ。

 何も無い。何も分からない。何も知らない自分がこの先どうなるか。

 その行く末をフィオに委ねてみようと。虫の良い自分勝手な事だったかも知れない。フィオに余計なものを背負わせてしまったかもしれない。

 実際その通りだろう。彼はこうしてまた戦場に立ってしまった。

 それでも自分に出来ることなど限られているのでエルムはただ言葉を紡ぐ。

『この作戦がうまくいってもいかなくても……結果がどうなってもそれは私がフィオさんを信じた結果なんですからフィオさんは何も気負う必要はないんですよ』

「……気休めどころか重すぎて何も言えねぇよ」

 真っ直ぐな目を向けられフィオは気恥ずかしげに視線を逸らす。一切の嘘偽りを感じさせないエルムの瞳は彼女の言葉を何よりも真実であると代弁していた。

 そんな2人の会話に別枠から通信が入る。

『ご歓談中済まないね。フィオ君そろそろだ』

 ディスプレイに映ってのはケインズだ。こんな状況にも関わらずニヤニヤと笑っていて何を考えているのか本当の所は分からない。

「……本当にやるのか?」

『勿論だとも』

 げんなりとしたフィオに向かってケインズは大袈裟に頷く。ニヤニヤと笑ってはいるが実は目が笑っていない。本気で実行に移す気の様だ。

 フィオはため息をつきヴァルキリーの手に握られたものを見つめそして、

「分かったよ…やればいいんだろ。やれば」

 そう言って操縦桿を握る手に力を込める。

『うむ…ではリリア君。発進シークエンスよろしく』

『了解。ヴァルキリー、リフトオフ』

 艦の左舷が開きそこからハンガーに固定されたままヴァルキリーは姿を現す。今回リニア・カタパルトは使用しない。それはある目的があっての事だった。

 その姿を見たフレデリックは一瞬目を奪われた。

『なんだ……ありゃ!?』

 以前のヴァルキリーは鈍い灰色の機体で鈍重な重騎士を思わせていた。

 しかし今は違う。

 純白だ。およそ戦場では似つかわしくない様に思われる精錬された白。工場惑星で破損した肩も修復され、その肩には隊章も刻まれている。敵も始めて見るその姿に目を奪われているのを見てフィオは作戦の前段階は成功したようだと諦めた。

「あとは……こっからだ」

『ヴァルキリー、パージします』

 ハンガーから解放されフィオはアクティブ・スラスターを勢いよく吹かせる。帝国兵たちはそれを見て一斉にヴァルキリーへと銃口を向けるがロイとアリアがそれを許さない。

 動きを止められた帝国兵たちの間を縫うようにして機体を走らせ戦場を純白の一閃が瞬く。その光は雄々しくもあり純白は乙女をも思わせた。

 自然と帝国兵の口から呟かれる。

『戦乙女……っ!!』

 図らずもそれは的を得ていた。純白の鎧を身にまとった戦乙女は黒の戦場を駆け抜けそして―――

『…………』

『………』

『…………は?』

 帝国兵たちに目もくれず逃げていった。


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