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流星のヴァルキリー  作者: 夢見 旅路
第1章 Boy and Girl engage Valkyrie
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序話―世界と歴史―

 これが始めての投稿となります夢見 旅路と申します。何分、始めての執筆となりますので拙い部分が多いにあると思いますがなにとぞご容赦いただきたく……あ、誤字脱字や「これ話の筋が通ってねぇよ」等のご指摘は有難く頂戴いたします。

 

 お読みいただく前に1つお話しさせていただかなければならない事があります。この拙稿はSFと題打っていますがサイエンス・フィクション(科学的根拠に基づいた物語)というよりもサイエンス・ファンタジー(作者の妄想)が正しい内容となります。なので作中に出てくるロボットや理論に詳しい説明を求められると大いにボロが出ます。その点もご容赦いただきたく………


 長々と前置きをかいてしまいましたがこの拙稿をお読みいただき少しでも興味をお持ちいただければ私としては感無量です。

序章

 遠い過去、見上げた夜空には幾つも星が輝いていた。幼かったあの頃の自分は恒星と惑星の違いも分からずに、夜空に輝く星の数だけ人の住む惑星があるものだと信じていた。

 けれど実際には人が住む惑星は夜空に輝く星の数よりもずっと少なく、人が住むことのできるだろう未知の惑星はそれこそ未知数、無限にあるのだと教えられた。

 それは可能性の話。未だ誰もが行きつくことのできない宇宙の果て、膨張を続ける宇宙、人が宇宙について解明できている部分は宇宙全体のわずか7%だと言う。故に人が住むことのできる惑星や未知の惑星もまだまだ存在するかもしれない。その数は未知数であり、無限の可能性も否定はできない。

 宇宙が秘める可能性は惑星の数だけでない。新たなる知的生命体との遭遇、未知のテクノロジーや物質、我々では表現できない色や音などの芸術。

 可能性は星の数だけ存在する。節くれた指で自分の頭を撫でてくれながら、そう教えてくれた。

「可能性は待っていてもやっては来ない。目の前にある可能性をつかみたかったら、自分で取りに行け。果てしない宇宙だ、外に出れば何かひとつくらい得られるかもしれないぞ」

 『かも』という単語ばかり並んだ言葉だったが、どうしてかその言葉に不思議とひかれていた。あの時の思いはいまだ言葉で表すことが出来ない。

 けれどその思いはいつまでも自分の心の中でくすぶっていた。


 地球人が栄華を誇った科学の時代は終わりを告げた。

 それは奇しくも地球史上最も科学の栄華を極めた時代であったかもしれない。

 地球人がまだ太陽系という星系に住んでいた頃、地球人は増えすぎた人口と環境破壊に悩まされていた。前者はともかく、後者はまごうことなく地球人による自業自得であった。地球人は荒れ果てた地球の大地を捨て宇宙に出た。100年以上昔から計画されていた軌道上人工衛星群、通称コロニーへの移住。度重なる増築によりコロニーはその規模を拡大していくのだが、歯止めの利かない人口増加の前では焼け石に水だった。

 そこで地球人は別の星へと移り住むことを計画した。その候補に挙がったのは火星だった。様々な物資や設備が火星に運び込まれ開拓が進んだ。大気の調整、鉱山資源の発掘、火星は日々地球人にとって住みやすい環境へと開発されていった。それでも当時の地球人の技術力では惑星一つを開拓するのに80年以上の年月を費やすことになった。世代を超えての惑星開発、そしてそれに伴う火星への移住により人口問題は解決の方向へと進んでいるように思えた。しかしこれはあくまでその場凌ぎでしかなかった。また何時同じように人の数が増えるか分からない。そうなる前に対策を打つべきだと言うのが当時の地球人による意見だった。

 加えて言うなら惑星一つを開発することによって動いた莫大な利益や権力、人の欲望があったのも事実である。太古から地球人が背負う業とも呼べるそれは地球人が大きく成長するのに不可欠な代物であった。

 火星に次ぐ第3、第4の惑星を探し出そう。そう決意した地球人は地球史上最大の開拓計画を作り上げた。

 その名も人類系拡大計画。太陽系から離れ新たなる惑星を探し出そうという計画だった。計画の初期段階はまず20年の歳月を費やして巨大宇宙移民船『ヴァーチャー』級を開発と様々な国から選ばれた人間、総勢100万人を集め英才教育を施した。

特に『ヴァーチャー』級は当時の地球人にとって最大の希望だった。惜しげもなく使われた科学技術の結晶は船内で人間が一生を暮すのに困らないよう作られていた。例えば食料。農地や牧場は人工土や人工芝の上で行えるようにした。水はあらかじめ大量に積み込み、それを循環させる仕組みを作りだした。また随時、本星から水を乗せたロケットを送り込むことが計画されていた。

防衛面に関しても最高水準の物が用意された。艦砲にはレーザー砲やレールガンが用意され、他にも当時最新鋭とされていた宇宙戦闘機師団が積み込まれることになった。

 こうした装備が何に対して防衛するのかはあまり言及されなかった。宇宙に出てから100年以上が経ち、地球人には未だ遭遇しないアレに対して懐疑的になっていた。それでも武器を装備させたのはどうしてもアレの存在を払拭出来なかったからである。

 ともあれ、選ばれし100万人の教育と巨大宇宙移民船『ヴァーチャー』級8隻は完成した。その年、これまで使われてきた西暦から新たに新世紀(ニュー・センチュリー)(NC歴)という年号に変えられ、記念すべきその年に『ヴァーチャー』級は人類の希望を乗せ旅立った。

 限りなく光速に近い速度で宇宙を渡る、準亜光速航法という技術が開発され、『ヴァーチャー』級は外宇宙まで約20年かけて到達すると予測されていた。外宇宙に出てから地球人が住める惑星を見つけ出すまでに約40年、その惑星を開拓するのにまた40年、計100年かけて第3の地球を開発する計画を当時誰もが信じて疑うことはなかった。

よもや人類系拡大計画そのものが15年で終わるとは誰も思いもしなかっただろう。


 力天使(Virtues)の名を持つ移民船が旅立って15年後、地球人が見つけたのは惑星ではなく、誰もがアレとしかもう呼びたがらなかった異星人だった。

 正に未知との遭遇。これに対し地球人は……なにも計画していなかった。

 理由は2つある。第1の理由としてはこの航海の目的が惑星探索であり、異星人との遭遇が目的ではなかったから、そう主張する科学者がこの後に続出した。

 それよりもむしろ、人類がすでにその存在について懐疑的であったことが大きな理由だがこれはただの地球人の傲慢さの結果だった。

 人類系拡大計画とは名前の通り、地球人類の住む領域を拡大することしか考えていないのは明白だった。宇宙には地球人しかいない。だから住処を拡大するのも自分たち地球人しかいない。簡単にいえばそういう思いがこの計画にはあった。仮に地球人が住める惑星が見つかったとして、そこに既に生物が住んでいたとしたら地球人はどう行動しただろうか。地球の歴史、特に人類の歴史を紐解く限りでは恐らく共存という考えに至るまでに時間を費やしただろう。もっと言えば共存よりも自分たちが住みつくと言う事を優先しただろう。共存繁栄という概念は地球人類の歴史の中で波の様に現れては消えを繰り返していた。互いに共存しようという領域(なみ)は少しずつその幅と高さを拡大させ、遂にはもしくはようやくNC歴を迎えてほぼ全地球人類の共存繁栄という時代に辿り着いた。

何が言いたいかと言えば共存という領域(なみ)は拡大するまでに多くの時間を費やすということである。少なくとも地球人類にとっては。

 そして異星人とのファースト・インプレッションを果たしたこの時、まだ地球人類以外との共存を考える時期は少なくとも地球人類側には訪れていなかった。

記録によると異星人と最初にファースト・インプレッションを果たしたのは『ヴァーチャー』級5番艦で当時の艦長、アンドリュー・カーターはこう言った。

「彼らは地球圏の言語を持たず、また船と思われる物の形を見ても近代的工学に基づいて設計されたデザインではないことは明白である。この時点で彼らに高度な知的能力を有しておらず、また姿形からしても知的生命体とは考えられない。よって彼らは野生動物と同じである」

 アンドリュー・カーターは自身の信じる神の教えに従い、この世にある全て物は神から人類に与えられた物であると考えていた。それは地球を離れても変わらず、宇宙空間に漂うあれもその一つであるとカーターは判断した。カーターは信じる教えに従い、目の前の物を手に入れるために戦闘機隊を出撃させた。後になってもカーターはこれを正当な権利だったと主張している。

 結論から言おう。地球の最新鋭戦力など異星人の前では無力だった。

 レーザー兵器やレールガンは異星人の船の装甲を貫くことはなかった。何十発というミサイルは対空レーザー砲で撃ち落とされた。戦闘機が放つ300発の弾丸は異星人たちに火薬式の銃が存在することを思い出させた。30時間に及ぶ無駄な浪費が終わった後、カーターよりも比較的穏健派だった『ヴァーチャー』級艦隊総司令官の王・光琳によって交渉が始められた。地球人同士の戦いだったら無条件降伏で交渉は終わっていただろう。

 しかし地球人にこのとき幸運なことが起きた。第1に地球人が攻撃を仕掛けた異星人、カルーサ星人が生来、戦いを好まず穏健であったこと。第2にカルーサ星人は知能が高く、地球人の言葉をすぐに理解してくれたこと。

 交渉はスムーズに進み、先に攻撃を仕掛けてきたことも不慮の事故として流してくれた。更にカルーサ星人は地球人との交流を歓迎し、他の異星人との橋渡しになってくれること約束してくれた。そして地球にはない技術の情報開示についても約束してくれた。

 これに色めき立ったのは科学者や技術者たちだった。交渉にあたった軍人である王も未知のテクノロジーから生み出される軍事力には興味がわいた。情報開示は即日行われた。王を始め、科学者や技術者20名をカルーサ星人は自分たちの船へと招き入れた。

 そしてその優れた技術を前に地球人たちは―――自分たちの常識が崩れていく音を聞いた。カルーサ星人によって紹介されていく技術の数々、それは今日において惑星間航行や宇宙空間で生活していくには欠かすことのできないものばかりであった。

 空間移動(ワープ)や重力操作、全ての機器のエネルギー源であるコール・クリスタル。どれも人々の生活を支える重要なものばかりであるが一方でその原理については詳しい事がまだ判明していない部分が多い。カルーサ星人が地球人にこれらの技術を教授した時も、カルーサ星人自身、どうして空間移動や重力操作が出来るのか分かっていなかった。地球人はこの原理が不明な技術の数々を解明しようと躍起になった。

 地球人が未知の技術に対し、解明を試みたのは当然の行為とも言えるが、広大な宇宙の中ではカルーサ星人のように「原理は分からないけど使えるからいいや」と言った考えでいる異星人の方が多い。

 閑話休題。とにかく地球人は解明に心血を注いだ。旅立った太陽系に戻り、事情を説明して地球人の英知を終結させた。ありとあらゆる科学者が集まり宇宙の謎とも言える未知のテクノロジーの解明に臨んだ。誰もが信じて疑わなかった地球の科学力。それは解明が進めば進むほどに否定されていき、反比例するかのように技術は革新した。これまでの航空工学では飛行することが不可能なはずの形状をした戦闘機が空を飛び、何百万と費用をかけなければ作れなかった高性能な機械仕掛けの義手がその価値を100分の1にまで下げた。カルーサ星人がもたらした数々の新技術は地球人の手によっても作る事は出来た。しかし何故そんなことが出来るのか分からない。

 ジレンマは続き、科学者が総力を上げて挑んだ、正に科学者たちの戦いは50年続いた。この50年を後に『科学者たちの最後の戦い』と呼ばれるようになる。

 そして50年かけて地球人が導き出した答えは次の一言に集約される。

「もうどうにでもなれ、チクショー」

 簡単に言えば、匙を投げたのだ。科学そのものがおかしくなったわけではない。ミサイルも爆弾もこれまで通り作れる。しかしその工程で作業用ロボットが出てきたり、それまで核融合に頼っていたエネルギーも原子炉の200倍の効率を誇るエネルギー源に取って代わられた。繰り返しになるがロボットが動く原理もエネルギー源であるコール・クリスタルの原理も分かってはいない。

 科学者たちの奮闘もむなしく、解明を続けるその横で球体型の人工知能を搭載したロボットに手伝わされている現状に科学者たちは膝を抱え丸くなった。結局、一部の科学者を除けば地球人が出した答えは宇宙的に大多数である「使えるからそれでいいんじゃない?」と言う意見にまとまった。

 

 50年もの間、地球人は解明だけに勤しんでいたわけではない。カルーサ星人との交渉により、他の異星人との接触にも成功し地球人たちは有効な関係を築いていく。当初の目的であった新たな無人惑星の発見にも成功し、地球人は急速に宇宙へと広がっていく。30年後には地球人の99%以上が太陽系を離れ、別の銀河へと移った。

 半世紀以上が更に経った頃には地球人は『エコノミック』と呼ばれ、多くの異星人の中でも名の知れた種族になった。

 やがて多くの異星人が集まった銀河で2つの組織が生まれた。1つは地気球の連邦制を基に作られた銀河連邦。当時、知る限り全ての惑星国家が終結した銀河連邦はまさに宇宙の中心と呼んでも差し支えなかった。しかし後に地球人が太陽系外で初めて開拓した惑星、バルドルを中心に18の惑星が銀河連邦より独立し立憲君主制惑星国家群―アースガルド王国を興した。建国を巡り大きな戦争が起きたがそれもわずか2年半で終結した。その最中、銀河連邦より4つの惑星が独立自治権を認められ技術連合(ワークス・ユニオン)と名乗る様になった。戦後、銀河連邦とアースガルド王国、そして技術連合は同盟を結びこの惑星国家群を総称して星間連合(アライアンス)と呼ばれるようになる。

 星間連合の目的はその星間連合憲章の序文に次の様に記されている。

「この同盟は惑星国家群同士の共存と繁栄、そして来るべき戦いのときに備えるために結ばれるものである」

 この同盟より50年後、小さな戦争が起きる。

 その戦争はやがて次の大きな戦争の引き金となり、人類は長きに渡る戦争を経験することになる。


 何時からだろうか。宇宙が新たなる可能性の場所から、命消える場所へと変わってしまったのは。人はいつしか、空を見上げて遥かな宇宙を夢見るのではなく、宇宙を命が散る絶望の場所と考えるようになっていた。



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