神の帰郷、私の困惑、おもちゃの意気消沈
天界は地球と同じ次元に存在していない。故に美しく不思議だ。そんな故郷を見つめて私は呟く。
「懐かしいね、けどつまんねぇ。刺激がないね。」
まずは家に帰る。家と言ってもそれは家であり作業場でもある虚しい空間だ。無駄に飾り付けられている作業場。それは何億何兆という時間のほとんどをここで過ごす神たちへの配慮らしい。
「お、おかえり。ヴィクトワールちゃん。人間界は楽しかった・・・?」
「・・・っ!マニャーナ!テメェがなんでここにいるんだよ!?私の作業場だぞ!」
「う、うん。けどヴィクトワールちゃんが逃げちゃったからね・・・私が代わりを、務めてるの。」
マニャーナとは大韓民国支部の運命の神であり、日本国支部の私とは犬猿の仲だ!
皆さん今、「エー神って日本だけの神?ショボ!」と思ったろう?思った奴は挙手。君たちは1話から読み直しなさい!そんなこと一言も書いてないから!すべて描写不足の世話役Aが悪いんだからな!
・・・さて、戻そう。
「代わりは母様に頼んだハズだ!」
「知らないよォ・・・。」
どうなってんだ?確かに出かけた後ちゃんと【母様へ。日本国支部を若干やってください】って送ったのに。それに、それに、上にも【母様が代わりをやって下さりますので、心配せずにほっといてください。反抗期です】って送ったし!
「つーか!マニャ-ナ!お前、韓国はどうした!」
「私の心配をしてる場合?・・・コレ、見て。」
マニャーナが見せたのは、【速達】と書かれた紙だった。
昨日のコロッケは少し、しなっとしていた。しかも味も少し薄く感じた。おもちゃは「薄い。」とケチャップ&ウスターソースの二刀流。飲み込むと、「辛いっ!!」と水をピッチャー飲みしていた。
そして、今日。
「おもちゃ、何か言ってください。」
「え?!なんで?!」
「暇なんですよ。何か言いなさい、ほら。」
「そんな無茶なっ!!」
神がいないせいで、もの凄く休み時間が暇である。貴重な休み時間を寝て過ごしている。
今日の授業はもっと暇だった。
☆ ☆ ☆
丁度、家庭科で創作パスタを作る予定だった。3、4人の班をつくって行う共同作業。もちろん、私たち、「天界ガールズ」(初めて言った)は同じ班である。
「材料は同じ家だから困らないんですけどね。2人は大変ですよね・・・。」
「うん・・・だ、大丈夫だよ!おもちゃ頑張るよ!」
神が居なくて昨日から変なテンションのおもちゃは、変な笑いを顔に浮かべながら言った。
「おもちゃ、顔が引きつっていますよ。・・・それはともかく、さっさと作っちゃいましょう。」
ここから、私とおもちゃは「塩とってください」「はーい・・・」「お皿を棚から・・・」「んよいしょっと・・・」など、約5分おきに2,3言喋るくらいで、なんなくパスタ作りを進めていった。
結果的に、いろいろと雑談をしながら作業をしていた他の班と数十分もの差をつけ、ごく普通の「カルボナーラ」を、ごく普通に食べた。(この「カルボナーラ」が他の班によると「3ツ星レストランみたい!」らしく、結構賞賛されてそれなりの優越感はあった)
・・・・とても、暇でつまらない授業だったのだ。
☆ ☆ ☆
いつもならここで神が登場して、「どうしたんだ、2人とも!死にそうな顔してるぞ!はははは!」と、馬鹿笑いしてくれるのだが。
私とおもちゃだけの――いや、人間が教室の一番後ろの窓際の席で本を読んでいた。――教室がとても寂しく感じる。
「ああもう・・・神、帰って来て下さいぃ。」
マニャーナは彼女には珍しい楽しそうな表情をしながら【速達】を読み上げる。
「読むよー? 《デエエス・ドゥ・ヴィクトワール。お前のフィリピン行きを命ずる。反論があるなら『上』にきなさい。》・・・誰が書いたか一目瞭然だね。」
「・・・創君か!」
私は上の一人にして私のお友達である少年(見た目だけ)を思い浮かべた。
「だろうね。私は、これを渡すように言われたの。」
「何で、お前が。ふつう、郵便部隊がやるだろ?」
マニャーナが自慢の栗色の髪を揺らして『どうしてだろ?』と呟いたのが合図だったのかもしれない。
まばゆい光。
頭に響く【えろぅ久しぶりやなぁ~。】の声。
パッと目前に広がる金髪。降り立ったのは創造主。
「創君!普通に登場できないの!?」
まだ眩む目を抑えながら詰るとニタァーッとした笑みで引きしまった顔を台無しにしている少年が。
「久し振りやのに、挨拶やんかァ?ヴィル~。自分、立場分かってはります?」
創君は、私の事をヴィルと呼ぶ。
「お久しぶりです。・・・フィルマメント様。ご機嫌麗しゅう!」
「最後らへん崩れてまっせ。よぉ名前覚えてたなぁ?」
そう、創君の本名はフィルマメントと言う。自分でもよく覚えていたなーと思う。
「で、何しに来た・・・のですか?」
「ああ、そうやった、そうやった。言いたいことがあったんや。よぉく聞きぃ?マナも聞くんやで。」
マニャーナの事はマナと呼んでいる。
「え、はい!」
創君はキリリとした顔を崩してニコォ~と笑うと、叫んだ。
「ゲーム、するで!」
こんにちは。そしてお久しぶりです。世話役Aでございます。
始まりました、せわくろの続編、「世話役Aの困惑物語」略して「せわこん」!!
創君、マニャーナという新キャラが登場しましたが、なかなか濃いですよね。
割り込んで人物紹介も投稿しようと思ってます。(私の描いたの絵も載せます)
では今後とも私たちをよろしくお願いします。
by世話役A