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ベクトルマン  作者: 連打
89/189

〔ハル編〕ギブ・ミー・ナイーブっ!!(ハルサイド)

ふわふわしてるー。

ぺたぺたと廊下をスリッパで歩く。それはいつものこと。

最初は怖かった病院の静けさも暗闇も、平気で歩けるようになった今。


なんか、ふわふわしてるよー。


「見たよ日向」


……。

廊下の角から顔を半分だけ月明かりに照らされ、ハードボイルドに登場。

看護師戦士ウジハラーだ。


「カレシ?」


「そうかもねー!ウジハラーには刺激強かった?」


「29歳彼氏無しだからね、ってうるせーうるせー!」


やはり。

端からみたらそう見えるのか。うふ。うふふふふふふ。


「日向気持ち悪い」


なにを言われようともモーマンタイ!!今日のヒナタハルは気分がいいから!気分が!いいからーー!!


「……なんかね。またマスコミきてた。ターミナルケアの取材受けるんだって院長が禿げた頭テカらせながら言ってた」


ぺたんぺたんと二人並んで廊下を歩く。

看護師の人たちもあまりターミナルケアには近寄らないんだけどウジハラーだけは何かと顔を出す。

何気ない世間話をするために勤務の後ずっと居座ってんだから彼氏を作る暇もないだろうなー。物好きな29歳だ。


「あと、警察も来てたよ」


「そう」


守秘義務とかってないのかなあ?ウジハラーはそんなことも全く意に介さず、よくこの手のニュースを披露してくれる。


「あの噂、調べてるみたい。日向……大丈夫?」


まことしやかに囁かれる病院内の都市伝説。終末医療棟の特性上、言い方はアレだけども……入ったら生きては出てこない所なので当然尾ひれは好き勝手に広がり、想像の羽は無節操に伸びていく。

暇を持て余した入院患者たちの娯楽、それ以上の意味は無い。



ウジハラーはそう思っている。



「カンケーないよー。ウジハラーも色々気使って大変だー」


「夜中に男といちゃつく問題アリの患者もいるしね」


むー。そこはちょっとフホンイかも。

なんせシショーとは今日会ったばっかりで、しかも当方男性とお付き合いした経験が皆無!そりゃもう見事に!!


「ねー、ウジハラー」


「んー?」


「会ったばっかりで……その、」


なんだ?

考えるほどまとまらない?言葉が出て来ない?この不肖ヒナタハル、このような失態はお初でゴザル!


「日向、あんた……顔赤いよ?」


ぼっ、と顔に火が着いた様に血が集中する。たらたらと流れる汗。恥ずかしいって感情が鼻から耳から漏れあふれ出す。


「うわ!あんたマジなの!?」


「……わかんない、けど」


うひょー、とウジハラーは顔を近づけ覗き込まれるワタシ。


「いや、いいね!いいよ日向!あんたとは長い付き合いだけどそんな顔初めて見させて貰ったよ!そっか、あんたがねえ」


「……さい」


「んんー?なんか言った?」


「うるさいよウジハラー!!まだ会ったばっかっていってんじゃん!!」


病院なんてところはプライベートもへったくれもないのかー!?デリカシープリーズ!!ギブ・ミー・ナイーブっ!!


「今度綺麗に化粧してあげる。香水とかつけてさ。ビシッとね」


親指を突き立てにっ、と笑うウジハラー。その表情から察するに茶化すのはやめたようだ。

びしっと、かー。化粧なんてしたことないしなー。自信ねーぞー。


「だ、大丈夫かな。……化粧とか」


「あんた普段は妖精だのアイドルだの大声で自称しといて……意外とヘタレだねえ」


そんな事言ったって。

この病院が境界、結界だった人生において自信なぞ持ててたまるか。なんとでも言えコノヤロー。


「まあ任しといて。元がイイからあんまりゴテゴテしないほうがいいけど、いい線行くと思うよ」


モトがいい、のか?

ぜひともそうであってほしい、と願う今日この頃なのであった。



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