〔ハル編〕要望と依頼の相互関係
「いいインディペンデンス・デイをぬぬぬるーく眺めるのはかか簡単さ!でででも映画ってさ、そそそんな風に見たらどんな名作だって鼻で笑うことも可能なんだよ!そんなふふ風に生きて楽しいの!?だだ誰かのコダワリのけけ結晶である2時間弱を」
「そうだそうだ!宇宙人を拳で殴り倒してるウィルスミスを見習えー!」
待合室の長い椅子に腰掛け僕は白衣の体育教師に熱弁を振るう。
「誰かのねね熱量を理解して欲しいんだ!病院内のいち売店だからってあんな棚じゃ作品にもも申し訳ないと、おお思わないのか!?」
「そうだー!医院の妖精、薄幸の美少女日向ハルは売店のアイスのバリエーションの増加を強くよーぼーする!あい!らぶ!はーげんだっつ!!」
……。
なぜか連行される僕の後ろにへばりつき、僕の隣に陣取って好き勝手な雄たけびを声高らかに叫ぶヒナタハル。
「ストライキだー!我々は!断固患者の待遇改善を要求するうー!」
「ちょ……君だだ誰?」
「水臭いなシショー!さっき会ったなんて些細なことに気持ち割くことなんてないって!」
可愛らしいピンクのパジャマで豪快に僕の背中をはたくヒナタハル。
「ぼぼ僕は師匠じゃないぞ」
「あ!つめたーい!聞いた?こんな病気で今にも死にそうな少女に向ける言葉じゃないよね!?」
ねえ聞いた?と全く関係ない通行人のおばちゃんに構わず声をかけるヒナタハル。そんなことしても苦笑いくらいしか返って……
「今日は元気だねえハルちゃん。新しいお友達?」
にこやかに返答するおばちゃん。
「友達なんて恐れ多い!シショーなのシショー」
ぷくうと頬は膨らませおばちゃんに講義するハル、するとおばちゃんは
「ハルちゃんと仲良くしてあげてくださいねシショーさん」
と僕に頭を下げた。
そのやりとりを皮切りに周囲の人間たちが一気に僕とハルの周りを取り囲む。
「ハルちゃんジュース飲むかい?」
「わーい!ありがとタイゾウさん!」
「雑誌買っといたから後で取りにきな」
「わかったー!。シュウジさんちゃんとご飯食べてって看護師さん怒ってたよー」
「ハルちゃんあんまり出歩くとうるさいから早めに病室戻るんだよ」
「びー。死にかけの美少女の特権じゃないかなー自由なのって」
…………。
入れ替わり立ち代り……本当に嬉しそうにみんながヒナタハルに声を掛けていく。いつの間にか体育白衣(短縮)は居なくなっていた。
「姉さん、人気者でしょ?」
「あぁ……やや、やっぱり」
自縛霊の真似事でもしているんだろうか?僕を病院までひっぱってきた辛気臭いラッパーがいつの間にか僕の後ろに立っている。
「やっぱり?あまり似ていると言われたことが無いんだけれど。気付いてたんだ」
「いやあ、にに似てるよ。顔立ちはもちろんだけど気の使い方みたいなももモノが」
多分キャラを自分ですり込んでいる。すりこんで、刷り込みすぎてもう完全に馴染んでしまっているように見える。
「自己紹介ってしてなかったよね。日向秋。春は姉」
「……で相談って、なななに?」
遠くを眺めるようにハルを見る秋。僕の方へは視線は寄越さない。
「ハルを……守ってくれない?」
「……へ?」
僕は医者じゃないぞ?なんの病気か知らないけど僕が出来ることなんてないはず。で、そんなことは秋だって分かってるはずだ。
「殺人……事件から」
そういった秋の顔からはなんの余裕も感じられない。ざわざわとした待合室にかき消されるようなか細い秋の依頼だった。