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ベクトルマン  作者: 連打
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被、擁護者

「なななななんなんだよこれっ!?」


「おう、遅かったなバカヤロウ」


おおう!!訳の分からない部活のチラシを眼前にかざす僕に向かって、返す刀でナチュラルに暴言吐きやがったなクソゴリラ!いつもは理子とゴリだけだったのに随分と中庭が混み合っていらっしゃるコト!だがしかし!!そんなこと今の僕にはオンリーローリーグローリーッ(混乱中)!!



「新入部員もついでに見つけといたぜ。感謝しろ」


アああああっ!?

なんだよその温度差は!?芝生に胡坐かいて牛乳パックちゅーちゅーしてんじゃねえ!!


「どしたのよ周蔵君?随分あわてて」


新入部員です、よろしくーとノー天気な挨拶を繰り出す智花。の横には男気満点のイケメン藤崎までいる。


「ああ……よろしく新木。勧誘という名の脅迫を受けトラブルバスターの片棒を担がされることに……」


芝生に付くんじゃないってくらい肩を落とした藤崎がボソボソとしゃべっているが、正直何を言ってんだか聞き取れ……


「……え?なに?聞こえない」


「全身全霊全力で諸問題の解決に当たることになりました藤崎です!頑張ろうな新木!」



脂汗をびっしりと顔に貼り付け僕の手をとりブンブンと振り回す。握手のつもりなんだろうが……ああ、やっぱり藤崎はイノシシ女の姉に苦手意識を刻印されてしまったようで。


「元気があっていいわよ藤崎君」


「ひゃ、ひゃい!」


姉の酷薄な笑顔に恐怖していた。


て、いうか。


「これ、あああんたの仕業だろ!?意味がわわ、分からない!なんで僕がこんなこと」


「うるせえなあ。どうせヒマなんだろ?」


ふうーーーーーーーっ。


…………。


……なんだこいつ!?なんなんだよこの人型筋肉!?


「まあまあ、いいじゃん周蔵。あたしも手伝うからさ」


な?と訳の分からないコトをノベるユズキカナ。なんでみんなしていきなりこんなことはじめるんだ!?本当に分からない!!僕はもう懲りたんだ!!もう目立つのはイヤなんだよ!!そっとしといてくれよ!!



「ぼ、僕は……もう、いやだ」


「理子どうすんだ?」


「どど、どうもこうもななないよ。もう終わったじゃないか」


僕に出来ることなんてなかった。そう、はじめからなかったんだ。

ひとりでアツくなって思い上がって。むしろ今となってはクラスに溶け込む理子を妨害したんじゃないかという気さえする。


「私はどっちだっていいよ。あんたがやりたくなきゃやんなきゃいいって思う」


やりたい理由が無いっつってんだろこのイノシシ!!腕なんか組んでえらそうに!!


「梶くんも、ごめんね。予想以上にバカだったみたい」


両手を合わせゴリを拝むようにいたずらにペコリと頭をさげるイノシシ。冗談でも姉が他人に頭を下げた姿なんて記憶に無い。本当に、無い。


「新木サンに謝られる筋合いはねえ」


しかも、つっぱねられている。

……ゴリは僕の顔から視線を動かすことなく、ただ睨んでいた。威嚇しているわけでもないその視線から逃げ出したい衝動に駆られる。


…………。


わかってない振りしてんじゃねえ、ゴリの視線は多分そういっていたんだと思う。

確かに……気付いていた。

コレは僕のためでしか無い。ゴリは多分そうは言わないだろうが、この『部活』どう考えても脆弱な僕の隠れ蓑としてしか機能はないのだ。姉もゴリもユズキカナも智花も藤崎だって、ここにいる人間はどいつもこいつも他人の問題に首つっこんで喜ぶ人種ではない。


わかっているから……認め難いんだと。

気付いた。


被、擁護者。


弱っちい自分。


ああ、そうか。

僕にも……あったんだなあプライド。みんなに守ってもらうのが恥ずかしい、なんて。弱い自分を棚に上げて。


「……」


ゴリの視線が刺さる。いたたまれない。弱い僕はここから逃げ出したくてたまらなくなる。


「……周蔵」


ユズキカナの柔らかい言葉が恥ずかしさを倍増させる。逃げたい。この状況から一刻も早く。誰の顔も見ず。家に帰って引きこもりたい。ネットで何の役にもたたないゴシップを読んでそのあとアニメサイトをクルーズするんだ。


ソレが僕、なんだ。


「かか、梶センパイ」


ああああり?んんんん?

なんで僕……


「お世話に、なな、なります」


頭下げてんだ??

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