青白く燃ゆる(姉サイド)
そろそろ昼休みも終わる。
もう春も中盤に差し掛かり日差しも柔らかくなったとはいえ、ここは校舎に四方を囲まれた中庭。ほとんどの部分が日陰で覆われている。
わざわざ私がこんなとこで昼食をとる必然性は皆無なのだけれど。
私はあのバカが単純に心配だったのかもしれない。
昨日とはまるで違ってしまう教室内の空気、視線……人間の関係性がマイナスに一気に振り切れるあの感覚。周蔵は多分私にはその手の泣き言は言わないだろう。中学時代も聞いたことがない。
強い訳ではない。
何も感じてない訳でもないだろう。
ただ、横に置く。
逃げる訳でも攻撃するわけでも無く、ただ置く。自分のとなりで燃え盛る炎が自分の裾を焼いているのにも気付かず。どもりがちになりストレスで身体は肥大しても尚、ただそこに居た中学時代の周蔵。見た目は変わっても中身はまるで昔のままなのだ。
だから私は理子ちゃんを許せなかった。オトナゲないとの自覚はある。
きっと周蔵はあの子に好意以上のものを寄せていたに違いないのだ。本人に自覚がないだけでおそらくは、そうだ。
手段は褒められたモノではないが、あのバカが積極的に他人に介入し誰かの苦境を救おうなんて……たぶん生まれて初めてだったんじゃないだろうか?
それを……
「お、おい新木サン……」
あの小娘……どうしてくれようかしら。どんなトラウマを刻み込んでやろうかしら。
「かか梶先輩、私怖いです……新木先輩怖いですう」
この上周蔵にマト掛けるなんてさせない。ゆるさない。手段は問わず徹底的に排除してやる。前回は梶君の絡みもあって全然動けなかったけど……骨に刻印を押すように思い知らせてやる。二度とくだらない気を起こさない様、徹底して陰湿に。
「と、智花。いつもはこんなんじゃねえんだ。いやホントなんか考え事してるみてえだし。おい藤崎、てめえはてめえでなんでブルブル震えてんだよコラ」
「……僕は新木のお姉さんは元々コワイですよ。今だって『新木先輩が中庭で呼んでる』って智花がいうから渋々……」
「なんだとおい!?じゃああんた周蔵シカトするっての!?いい度胸だね新入生!あんた周蔵のツレなんだろ!」
「……1年脅すなよカナ。それでなくても藤崎ビビってんだからよ。おーい新木サン。そろそろ帰ってこいよ」
そうかこんな手も。ああ、こうすればいいのか。
うふふふふふふふふふ。