〔リコ編〕じゃあほっとくか?
ああ、そうだ。そうだろうよ。
ゴリにもっともらしい事言ってみたところで、結局僕は僕でしかないんだ。
ウチに帰ればamazonで買ったRe○riteに心躍らせる程度には……バカでオタで人の心なんかわかんないんだよ。
僕はだからこのバカみたいに降る雨の中麩みたいになったパンを咀嚼しているのだ!ギャルゲの為ならなんだってやる!それがボクオリティー!少々寒いのなんかラクショーなんだよコノヤロウ!
待ちに待ったRe○rite!!
僕がどれだけ楽しみにしてたと思ってんだ!絵はあまり好きになれないが、かのロミオ神脚本!!竜騎士は○ぐらしやってないから知らん、が!ロミオ神なるぞ!!これをスルーするってのは僕にとっては既に恥!恥辱に該当する!!つまんなくてもお布施として納得できる脚本家が今時いるのか!?いいいいいやっ!いない!!
それなのに。
確かに相当のクオリティーを誇る今作、僕は楽しめない。
モニターの前で違和感の所在を改めた結果……はっきりと分かった。
理子が、苦しんでる。
それだけだ。
僕はそれだけでRe○riteに入れない。どこか上の空。文字を追ってるだけ。つまんない。だから。
ずしりと重くなった袖を持ち上げ時間を確認する。
「……」
もう、昼休みが終わる。
理子は気付いてくれただろうか?雨がひど過ぎて目もまともに開けられない。まあ理子が気付こうが気付くまいがこの際どうでもいい。自己満足ってやつだ。「こんな雨の中で突っ立ってる僕ってカコイイ!!」的な恥ずかしい程の自己顕示欲の現れ。
どうにも僕らしくない。柄に無いことしてる。んなこたあ分かってる。
僕はずちゃと芝生の上を歩く。
ズチャズチャ。
だって僕……何にも出来ないじゃないか。
ズチャズチャ。
どれだけ理子が苦しんでるかなんて僕が一番良く知ってるじゃないか。
ズチャズチャ。
なのに結局僕はウチに帰ればパソコンの電源を入れるし、理子が苦しんでるのにユーチューブ見て笑ってたりも出来るクソヤロウなんだ。
ズチャズチャズチャズチャ。
僕は自分が存在しない状況を日常化して心にひきこもり、磨り減るのを回避した。理子に同じことが出来る?それとも姉のように鉄の意志で振舞える?どっちもムリだ。僕のやり方だと理子はきっと壊れるし、姉のやり方は多分姉にしか出来ない。
じゃあほっとくか?
なぜか、できない。
どのみちクソヤロウのはずの僕は理子を見捨てない。なんとかするんだ。
僕には人脈もないし腕力もない。度胸もないし知性もない。でもそんなこととは別の場所で誰かが言うんだ。
・・・・・・・・・・
そんなことは関係ないって。
僕がバカでクソヤロウだとしても、現に理子は苦しんでいる。
ギャルゲの女の子に告白されたとしても、現に理子は苦しんでいる。
理子が僕になんか助けを求めていなくたって、現に理子は苦しんでいる。
ああ……そうか。
ハナから自己満足なんだ。僕は理子がどう思おうと理子が苦しんでる状況が嫌で嫌でしょうがないだけ。
理子がそれでいいと言ったって僕が嫌なんだから嫌なんだ。
ナルホドナルホド。
僕は落ちてきそうな雨雲を見上げため息を吐いた。
やっぱり僕は単に自分勝手なバカだった。それはそう。そう思う。
でも、どうやったって……そんなこと、カンケー無いんだよなあ。