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ベクトルマン  作者: 連打
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対外的な視線の軌道


無難に朝食を済ませた僕と姉はなぜか仲良く連れ立って登校中。

朝の清々しい空気とは無縁な殺伐とした気配を身にまとった姉は僕の方をノールックで言葉だけを寄越した。


「あんた趣味は」


「へ?」


「いいから答えな。趣味は?」


イライラしている。姉は誰が見てもイライラしている。

媚びろ!へつらえ!

僕の中のちっちゃい僕が絶叫する。


しかし僕は男だ。いや、漢なのだ。そんな情けない真似はできん!


「……趣味は?」


「ギャルゲー。たまにエロゲー」


危機管理りミッターが勝手に作動した!?恐るべきは姉!このメスめ!思わず正直に答えてしまった!


「好きな食べ物は?」


「カレーパン。衣に油いっぱい吸ったやつ」


今食べられるかと問われたら自信ないが。


「お姉さんはどう?」


「……どうって?」


自分の事をどう思っているか聞いているのだろうか?

なんだ、このメスブタ。

僕にどう思われてるのかが気になるのか?ああん?


「思ったことを答えるのよ。さっさとして、時間ないんだから」


「バイタ。たまにメスブタ」


さあ落ち込め!

丸々と肥え太った可愛い弟に忌み嫌われているのを心に刻み込んで崩れ落ちるがいい!


「……」


おお!

小刻みに震えておる!自責の念に駆られ後悔に苛まれておるわ!

はーっはっはっはっは!!!!

苦しめ苦しめい!!無残に抹殺された僕の智花ちゃん(抱き枕)の苦しみはこんなもんじゃないぞ!


ぐにいっ!


「はぶッ?」


僕の頬を鷲掴みにした残虐なメスブタは今日初めて僕の目を射抜くように見詰め、少しだけ笑った。


「あんたの処刑は帰ってからにしとくわ」


こいつ後悔してないよ?自責の念は?あれ?


「今日あんたを学校の友達に紹介しなきゃなんないの。協力してくれる?してくれるよね」


ぎりぎりと僕の頬に姉の指が食い込んでいく。以前のように肉が付いてない僕の頬の痛覚を実に効果的に責めつけている。


「何の為?痩せたのな・ん・の・た・め?」


「おねえひゃまに、はふぃをかかせまいひゃめれす」


「だよね。その本番が今日、今からなの。自覚してる?」


血走った目を隠そうともしない姉はすっかりヤンギレへとジョブチェンジを果たしていた。

足が浮くんじゃないかと心配になるくらい渾身の腕力でぎりぎりと頬を掴む姉。彼女の、元々短い導火線はもはやライフゼロ!


「もう一回聞くわよ?……趣味は?」


「……ぎゃr」


「ギャ!?なに!?聞こえない!!」


「映画鑑賞れす」


「最近見た映画は!?」


「マクロs」


「はぁあ!?」


「す、すたーとれッく。SFれすSF」


「……まあいいわ」


あれ?おかしいな?

これ……中学時代より過酷になってない?


レベルデザイン間違えてるよ神様。

いきなり無理ゲーじゃん?

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