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ベクトルマン  作者: 連打
34/189

なんだ?

変人・父の三文芝居により幾分打ち解けた感のある姉とDQN、それに理子。愚民は単純でシンプルだからコロッと騙される。逆に羨ましい。せいぜい偽りの団欒を楽しめばいいんだ。そして僕はネットという荒波に人知れず漕ぎ出そう。玉石混合、魑魅魍魎の跋扈する世界の真理に一番近い、あの場所へ!

さあ立ち上がれ!勇気を奮い立たせいざ自室へと!そこで待つものが絶望だろうと後悔だろうと僕は振り向かない!戦いの舞台、27型ミツビシ製液晶モニターの眼前へと


「周蔵」


「ひゃ、ひゃい!」


「リビングにいなさい」


「らららじゃー」


暴君・姉のトップ・ダウンによりリビングでの待機を余儀なくされました。


かちゃかちゃと台所で洗い物を進める姉は僕の位置からは背中しか見えないがきっと何か企んでいるに違いない。なにやらそういう空気を発散している。

僕は僕で聞きたいことも無いこともない。リビングのソファーで自分の膝を凝視しながら座っているオンナDQN。コイツの役割はなんなのか?僕が知らなかっただけで真実姉と友人関係にあったとも考えられるが……どうにも違和感が付きまとう。


「周蔵」


姉の背中越しの呼びかけ。


「お姉ちゃんあんたに聞きたいことあるの」


おお『お姉ちゃん』!?もう嫌な予感しかしねえ!!和やか製造機、人間関係緩和剤の理子はどちらに!?出番だぞー!!


「センパイお皿拭き完了しました!」


「うん、ありがとう理子ちゃん!理子ちゃんも座ってて」


「はーい!」


とっくに骨抜きである。理子はひと仕事終えた爽やかな笑顔でリビングの絨毯にペタンと座った。残像が見えるほど尻尾を振って。牙を抜かれた捨て犬……お前は今日、今から只の使えない室内犬に堕落したぞ。


「で、あんたさ」


「?」


姉はタオルで自分の手を拭きながら振り向く。


「理子ちゃんと付き合ってんの?」


「……!?」


反応を示したのは理子。尻尾がピタリと止まり電池切れのアイボのような無機質な佇まい。カチーン、という表現がぴったりの理子には珍しい光景だった。


「やややめてください古都センパイ!そんな訳ないです!」


「……?」


何を言い出すかと思えばこの色ボケ姉。まあコイツも所詮女子。即物的な思考しか持ち得ないメスなのだ。この手の話題が好物だったとは知らなかったが、血迷うにも程がある。僕は3次元は苦手なんだと一緒に暮らしていても理解しないとは。僕は愚かな俗物であるところの姉に憐憫の情を抱かずにはいr


「でも今後、そうなったらちょっといいなとは思わなくも無いです!はい!」


おおう。言ってやれ言ってやれ。

この破廉恥な俗物にもっと己の愚かさを自覚させるような辛らつな皮肉を突き刺してやるのだ理子。なかなかどうしてコイツもワルよのう。


「……!!」


ものすごい勢いで立ち上がるDQN。なんだよ、そのまま天井刺さるんじゃないかと思ったじゃないか。ん?お前も愚かな姉に一家言ありそうだな。どんどん言ってやれどんどん。


「あたし、……そうなったらスゲー困るんだけど」


おおう?言葉の意味はよく分からんがとにかく(以下略)。姉とて悪気があったわけでは無いのだから。まあ2人ともその辺で許してあげてもよかろう。愚かなことは罪ではない。ほーれ、今にも泣き出さんばかりのあの姉の……


ん?


「はいどーすんのあんた?」


まさにメタル・ハート。余裕シャクシャク。コイツの心臓はふっさふっさに毛が生えてるのか?DQNと理子にここまで辛らつに皮肉られ尚揺るがない姉に乾杯!



…………。



………………………………。



どーすんのって……なんだ?


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