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ベクトルマン  作者: 連打
29/189

僕はソレでいい

大いに不満だ。ゴリップクというヤツである。

僕は帰り間際のホーム・ルームで頬杖を突いて遺憾の意をこっそり、しかしれっきとして表情で体現していた。まあ大したコダワリも持たずにこの学校に入学した僕なので下調べを一切しなかった。そこは責められてシカルベキなんだろう。なんだろうが……


入学早々「クラス発表会」なるキテレツな催しを誰が、なんの為に行うというのか?僕は自慢じゃないがクラスの生徒の名前さえ2人しか知らない。前に座る『藤崎』、それに横の『智花』。以上だ。

大体この学校はクラスの団結とか高校生活における友情なんてものには興味が無かったはずじゃないのか?


「いやあどうしようね新木君。こっちは予習復習で手一杯なのに」


別に授業中ではないので幾分リラックスした様子で後ろを振り返る『リア充』藤崎。


「まあまあ。これさえこなせば後はなーんにも無いんだから。学校もホントになにもしません、じゃ通らないんじゃないの?一応公立だしさ」


『嫁』智花は諦めたように苦笑い。一体誰に対する言い訳なのか僕にはさっぱり分からない。誰得の極みである。……しかし『嫁』はいくらなんでも違和感があるなあ。名前が一緒なだけだし。今後は省いて『智花』でいこう。

……48文字。

遡って48文字は完全に省いてもらっても構わない。なんつーかスマンカッタ。


「この時期に発表会って言われても」


「毎回どこのクラスも『合唱』みたいね。無難にこなしておきましょうってトコみたい」


ジャージ教師の声が黒板の前から響く。耳は閉じられないので何の気なしに仕入れた情報によるとこの催しの大義名分はこうだ。

お互いまだ心を開いていない状態であるからこそ意義がある。この機会にお互いの理解を深いものにし、今後の様々な場面で生きてくるような絆を構築しようと……まあ尤もらしくノベてはいるが。友情や信頼が何の役に立つのか?


崖から落ちそうになったときケイン・コスーギのように手を差し伸べてくれる?

崖って見たことねーよ!!


『お、俺はもうだめだ。先に行け』っつってそいつが犠牲になって手榴弾で後続の敵を排除?

そんな勇者はチベットいけ!!日本じゃ出番ねーぞ!!


高校生の、特にこの学校における最大の障壁は勉強なのだ!!あのキチガイ染みた授業に友情や信頼は役にたたねーだろ!!『困った時の為にトモダチくらい作っとけ』としか聞こえねーんだよ!!でっけえお世話だ!!


そんな僕とふとぶつかる視線。遅々として進まない議題に業を煮やしたジャージの口端がぐい、と持ち上がる。


「お、シューゾーなんかある?」


「がが合唱でいいんじゃななないでしょうか?」



YOEEEEEEEEEEEE!!僕YOEEEEEEEEEEEEEE!!


ほかにないかー、とジャージの気の抜けた声が教室内にこだまするが当然何か提案が出るわけも無く。


「じゃ、合唱に決定っと。反対意見無いんだからせめて前向きになー」


とジャージは半ば投げやりにそう言った。


「まあしょうがないよね。演劇だのパフォーマンスだのしてる時間無いし」


「そうだよねー。ちゃっちゃと済ませちゃお!」


前と横の席の男女はお互いの顔を見比べため息を吐いた。

まあそこまで時間を取られる事もないだろうし波風立てない選択だろうと思う。こうやってなんとかかんとか学校生活を騙し騙しやっていくことこそ僕の望みなんだから文句のあろう筈も無い。なんら問題がなければ僕らは3年後にはここを出て行くのだから。


そして振り返った時、全然楽しくなかった高校生活を思い返し苦笑いを浮かべるのだろう。


僕はソレでいいんだ。



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