〔カナ編〕向こうだし(智香サイド)
「……」
はー。
芝生のチクチク強めの日差し。特に特筆すべき事の無いこの中庭で。
腰を下ろしたわたしは自分のお弁当をひざに乗せ藤崎を待つ。
まあ律儀に待ってる事も無いか。いや、でもねえ。
「……」
梶先輩に何の用だろ周蔵くん。ま、いいや。どうせ今日も夜会うしその時聞いてみよ。
「……」
な、なんかテレちゃう。『夜会う』って!しかも『今日も』って!?
わたしは今週に入り毎晩周蔵くんと密会を繰り返していた。だってだってよ?
アレ言い出したの完全に向こうだし?コレわたしの意志って全然はいってないじゃんね!?
それに周蔵くんは断言してた!
『柚木カナのため』だって!正直あの行為がカナちゃんにどう関わってくるのかは……知らない。
でもどうやらやっとわたしも役に立てるみたいだし?カナちゃんの為だって言われたら断れないし!?
文字通り、一肌脱ごうってカンジ?
「……」
はー。
遅いな藤崎。
「……」
実際周蔵くんってなに考えてるのかな。普通そんな頼みごとなんか出来ないよ?
チョーエキものじゃないアレって?
ってか引き受けるわたしもわたしか。
あー、でも今日いい天気だなあ。
実は今日のお弁当はかなりの量を持参してるんだけどな。
毎晩毎晩汗だくの変人の為にわざわざ肉系のおかずをふんだんに取り入れたJKらしからぬお弁当。
食べて欲しいんだけどなー。梶先輩の用事早く終わらないかなー。
「……」
いっぱい食べてくれるかな?
周蔵くんって大体カレーパンばっかり食べてるのよね。栄養偏るってばあれじゃ。
よく古都先輩に注意されないもんよね、ものすごくきっちりしてそうだからあの人。
家でもあの調子なのかな?いっかい行ってみたいな周蔵くんのうち。
「……」
どんな部屋で過ごしてんだろ。
うーん、きっと散らかってるよねそんな気がする。
ん?いや、ちがうか。
周蔵くんって妙に細かいトコあるし、意外に綺麗にしてるかも。その線もあるね。
どっちかって言うと神経質なんだろうか?わたし結構ズボラなんだよね。や、や、困ったな。
「……」
わたし裏返しのまま靴下洗濯機放り込んだりするしなー、大丈夫かなわたし。
「……」
ぽかぽかと陽気に足を投げ出す。早く来ないかな。
周蔵くん。
「はぁーーーあーー」
おーそーいー!