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ベクトルマン  作者: 連打
180/189

〔カナ編〕バカだし(奈美サイド)



今日も疲れたなあ。

最近不景気だ、なんて思ってたんだけど分かんないもんだね。妙に忙しいんで疲れが身体から抜けないなあ。



「おーい、スズちゃーん!」



…………。

何回言えば分るのかねアイツは。わたしは美鈴、あんたは真央。この業界のルール知らない訳じゃないでしょうに。ちゃんと源氏で呼べよな。



「お疲れ!今日ご飯どっかで食べてくの?」



「どっかで、ってもファミレスくらいしか無いけど?もう空明るくなってきてるし」



客さえ居れば翌日の朝まで営業する。普段は大体適当なのに、そういうトコしっかり真面目なんだよねあの店長。

わたしは真央と合流し行く宛ても決まらないままフラフラと街を歩く。そういえばコイツといつの間にか普通に仲良くなっちゃったなあ。妙に無防備だし憎めない……得な性格してるし何よりコイツって初っ端からわたしの事『味方』だと思ってたからなあ。

ソレ、勘違いだったんだけど。



「ってかゆきとん今日も来てなかった!つまんない!」



「ん?きいてない?」



「え?すずちゃんなんか知ってんの?」



まあ、そうか。

コイツわたしとはこうやって話すけど待機所じゃ相変わらずハブられてんだった。それでなくてもまだ新人枠だし情報に疎いのも仕方ないか。



「あいつアキラさんに目ぇつけられちゃってさ」



「アキラって……あの?」



聞いたことくらいはあるのか。

まあアノヒトいろんな店転々としてるからそうかもね。



「おふざけで働かれるのが気に入らないんだってさ、店長がそんなこと言ってた」



「……別にふざけてるわけじゃなくない?確かにゆきとんちょっと変ってるけど」



「……まあね。でも結局わたしには関係無いし、あんたも無関係。変に首突っ込むのやめときなよ」



「えー、でもー」



どこまで本気なんだコイツ。でも、じゃないでもじゃ。



「だれかの心配するなんて随分余裕じゃん真央。リピート大丈夫なのあんた」



「ぎく」



「そのへんうちの店シビアだからちゃんとやれよな。じゃないとあんたも待機所連中の仲間入りだよ?」



「うわわ、……頑張る!ありがとすずちゃん!」



そうなんだ。

本来こんな店に来る人間には余裕なんか無い。だれかの顔色窺ってるヒマなんか無いヤツの集まりなのだ。新木はそこが決定的に他とは違っている。

最初から。

今でも。

アキラさんみたいな、人生丸ごとどっぷり浸かってる筋金入りの風俗嬢との共通点なんか砂粒ほどだってないんだろうな。

店長はああ言ってたが『気に入らない』どころじゃないんだと思う。はっきり言ってムカついてんだよきっと。

すっごい分かるわソレ。新木って見てるとナチュラルに腹立つし。

うざいし、バカだし、キ○ガイだし。



「……でもさあ」



「え?」



「ゆきとんもう来ないのかなあ。ってかソレ寂しいかも」



何言ってんのかねコイツ。

わたしは街の中で……明るくなり始めた空を見上げ、浮かない表情で呟く真央を横目で見ながら呟く。



「ばっか。あいつがこのまま消えるようなマトモなヤツならこっちは苦労しないの。マジ忌々しいほどイカレてんだからアイツ」



「!そ、そうだよね!ゆきとん意外と根性あるもんね!」



……。

相変わらず新木の事に対するわたしの言葉は、真央の頭の中で都合よく変わんのね。



ま、いっか。

どっちでもわたしには関係無いし。



「すずちゃん、牛ドン食べたくない?」



見たままかよ。たまたま目前にあった牛丼チェーンの黄色い看板を指差し楽しげに笑う真央。



「わたしカレーがいい」



「カレー?あっ、あんじゃんカレー!はいけってーい、2名様ご来てーん!」



わたしそのメニュー見て言ったんだけど……ま、いいか。



「……」



ああ、忌々しい。忌々しいんだけど。


このままフェイドアウト、とかないよな新木。

だったら初めからクンナってハナシだし。

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