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ベクトルマン  作者: 連打
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砂漠にラクダ、ロシアに暗殺、メイドにご主人様がいるように!!


放課後……理子とDQNと共に駅までテクテクと下校し(激しい違和感に襲われたのは言うまでもないが)自宅マンションに到着した僕は小ぶりなダンボールに嬉々として対峙していた。


そう。僕の日常はまさにこういうことなのだ。

リア充とおっかなびっくり対話?

隣の席の女生徒とおしゃべり?

迫力満点の自意識だだ漏れ上級生に睨まれつつの食事?

バカ言っちゃいかん!!そんなものはヒ・ニチジョーだ!!そんなものが僕の生活の中に割り込んでくるなんて全くおぞましい!!あほらしい!!


僕はぴりぴりとダンボールに貼られた厳重なガムテープを剥がす。wktk。


いでよ第2世代インテルCorei7 2600K!!4コア8スレッドの神々しい勇姿をいざ白日の下にさらけ出すのだー!!


「……ぉおおおお」


クール!!ソークール!!

なんで人はこの青いロゴに惹かれてやまないのか!!控えめなデザインに隠された野蛮とも言えるパフォーマンス!!

DDR3トリプルチャネル!!(マザーは交換済みだ!)当然のようにターボモードも搭載!!

Core i7-980Xの6コア選択も考慮したがまだ様子見!!高いからね!!いまはこの選択がベスト!!性能的にも申し分はない!!さようならコア2DUO!!長らくしつこくお世話になりました!!お疲れ様でした!!


「なに買ったの?嬉しそうにして」


移植換装は少々手間もかかるがそれもまたタノシ。サブPCの鈍重なノートでも引っ張り出しじっくり進めるとしようじゃありませんか。あ、最近はメモリも値崩れしてきたし、このさいバルクで構わないからいっそのこと4Gx3で万全の態勢を


「おーい、周蔵ってば」


「…………」


なぜか最近の姉は僕の部屋にいることが多くなっている。一体何を企んでるのかは知らないが不気味で不吉だ。


「そういやあんたお昼中庭いたよね?梶君と可愛らしい女の子と一緒に」


「そそそそれが……なんだよ」


「彼女できたらちゃんと紹介すんのよ?私もみてみたいしねー」


「…………」


開いた口が塞がらない、という体験を今初めてしている。一体今日のの姉はどうしてしまったんだろうか?夕食前には僕のあまり広くも無い部屋で雑誌を持ち込み寝転がり、夕食後には僕の部屋で教科書を何冊か持参して眺めていた。


そんな姉の挙動不審な態度を恐る恐る眺めていると不意に立ち上がった姉が僕の方を見てこう言い放った。


「なんか飲む?」


ナンカノム?


「私コーヒー入れてくるから。あんた何がいい?」


ナニガイイ?


「コーヒーでいっか。持ってくるから待ってて」


マッテテ!!??


すいと軽やかに消えていく姉をホーゼンと見送る僕。何が起ころうとしているのか、いやもうすでに起こっているのか。


「……」


これはチャンス。

姉が部屋から出て行った今、ここしかない!


誰も僕の部屋になんか今まで入ってこようとしなかったから存在さえおぼろげだった『アイツ』の出番なんじゃないか!?

多感な高校生には必要不可欠!!砂漠にラクダ、ロシアに暗殺、メイドにご主人様がいるように!!現代高校生にはこれがあるじゃないか!!プライベートの絶対守護者、その名もルーム・キー!!

方針が決まれば即実行!!僕は机の引き出しから古いメモリや使わなくなったマウスを掻き分け絶対守護者を手にした。


そして地雷除去の慎重さで自室の扉に接近。


「…………」


オール・グリーン。全ては順調に推移している。あとはこのk


「あんた……カギかけたらどうなるか考えての行動なんでしょうね」


「ひいいいいいいいいいいっ!!」


エマージェンシーエマージェンシー!!板一枚挟んで交戦中!!いや、撤退は軍法会議で裁かれるぞ!!ここは玉砕覚悟の徹底抗戦しか


「あけなさい」


「少々おまちを」


音も無く開かれていくドア。姉の手にはトレーに乗ったコーヒーが二つ。


「おまたせー」


「……」


僕は小刻みな体の震えを必死に抑えながら、教科書を優雅に眺める姉の横で黒い液体をすすった。

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