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ベクトルマン  作者: 連打
153/189

〔カナ編〕猶予(梶サイド)



「やっと出やがったか」



カナの成績は決して悪くない。しかし出席日数はそろそろ限界だ。

ウチのガッコはその辺シビアだからな。辞めるつもりでなければじきに登校の段になる。連絡だって取れるようになるだろう。



『……分かってる。もう出るよ、いつまでも引き篭もってるワケいかないし』



「……」



こいつは何が分かってるって言ってんだろうか?なんにも分かっちゃいねえよてめえは。

カナに心を砕き、心配し、解決するために……その為の金も能力も力も無いバカヤロウが今どうなってるか。



『なんだよ?梶が連絡なんて珍しいと思ったらダンマリ?』



結局、一週間だ。

あの日、ガッコには似つかわしくないフルスモークのレクサスにバカが乗って行ってから一週間経った。

そしてその一週間、アイツまでガッコには現われていない。新木サンには偶に連絡しているらしいんだが……家にも帰っていないとはな。

このままじゃ新木サンは迅速に居場所を突き止め全部をぶっ壊してもアイツを連れ戻すだろう。



『ちょっと!?聞いてんの!?』



新木サンは容赦しないんだ。

たとえカナの将来に深刻な影響を与えてしまうことになっても多分……躊躇わない。


バカを助ける為なら友人であるはずのカナの人生だって省みない、怖い女なんだ。そして何より耐えられないのは……てめえなんだぞ。



「周蔵……ありゃ、もたねえぞ」



『は?……なんの事だよ?』



「てめえが引き篭もってる間に、頼まれてもいないのに尻拭いしてるバカがいてな」



『い、いやちょっと梶?ホント分かんないんだけど?』



そりゃわかんねえだろうよ。

                     ・・・

ずっと『仕事』に行ってないんだから。そしてなぜか追い込み掛けられてないんだからよ。『そろそろ行かなきゃな』くらいに思ってんだろうが、もうそんな状態じゃねえんだ。

自分さえ巧く保ててねえあのバカが耐えられるほどあの『仕事』甘くねえ。カナがそれを知らねえはずない。



「てめえバイト行ってねえんだろ?」



『……なんだよ、梶に関係無いだろ』



「ああ関係ねえよ」



『なんか周蔵見てると……どうしても、さ。ま、そのうち行くよ。なんかずっと連絡無いから行ってないけどさ』



こいつの気持ちは知っている。当たり前の心情だと俺だってそう思う。

どこぞの親父にてめえの裸見られたいヤツなんざいねえ。ましてや好きなヤツが居るってのにそんな仕事出来るはずねえのさ。


でもあのバカはそのカナの真ん中の気持ちを全部すっ飛ばして、目に見える問題だけと取っ組み合っている。ヘロヘロになりながら、だ。



「お前よ」



『……ん』



「足洗え」



『うん……そうだな』



らしくない。分かってるんだが……そうも言っていられない。



「そうだなじゃねえんだよ」



『え?』



「そうだな、じゃねえんだよっ!何か問題が残ってんならそれ解決しろ!なんなら手伝ってやる!」



『な、なんだよ梶?急にどうしたn』



「うるせえっ!」


    ・・

アイツがこうした。

時間の猶予はアイツのバカのせいで無くなったんだ。一刻も早くこのクソ問題を粉砕しなけりゃマジで新木サンが出張ってくる。その前に!



アイツが『壊れる』前に俺がなんとかしねえといけねえんだ。

じゃないと多分、コイツまで壊れる。絶えられる筈がない。カナはそこまで強く無いんだ。いや、弱くなったのかもしれねえ。



だからっ!

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