第一話「初バトル」
僕の名前は音無 優17歳の高校生だ。
今日もいつものように学校に向かって自転車をとばしていたら、突然トラックが突っ込んできて、僕はあっけなく死んだ。
そして気づくと真っ暗闇の空間をふわふ浮かんでいた。
ああ、これがあの世ってやつなのか。三途の川とかイメージしてたけど、思ってたのと現実は違うんだなぁ。
・・・あれ、この状態っていつまで続くんだろう。
まさかずっとこのままってことないよな、、、。
それからしばらくすると、下から風が吹いてきて自分がどんどん下に落ちていることに気づいた。
『えっ ちょっとまって うわああああああああーーーーー』
次第に真っ暗闇だった空間の下に雲や町の明かりが小さく見えてきた。このままだと地面に落ちた衝撃で死んじゃう!というかもう死んでるのにまた死ぬのか???・・・。
手を広げてみたり色々試して見たが、当然ながら落下はとまらず、地面にぶつかったときの覚悟をしはじめていた。
そうこうしていると徐々に落下するスピードが落ちていき、地面にあと数百メートルの高さになった頃には、スローモーションのようにゆっくりになり、無事に降りることができた。ハァーーーーーたすかったぁ、、、、。
落ち着きを取り戻してから周囲を見回した。月明かりがあったので、そこは木々に囲まれた場所だということがすぐにわかった。たしか、落ちてくるときに建物の明かりのようなものが見えたから、近くに町があるんじゃないかと思い、近くに見晴らしのいい丘が見えたのでそこに向かった。
丘から周囲を見渡すと、近くに町のような明かりが見えた。
やっぱり町あるな。でもここってあの世だと思ったけど、人の営みがあるってことは、あの世じゃないのか?・・・まさか異世界転生?転移?でもしたのか?と思い、冗談半分で異世界アニメでよく見るあれをやってみた。
「ステータス!」
出るわけないよなと思ったが、自分の目の前に画面が現れたのだ。
「うそ!えーーーーー! ほんとうにでたっ・・」
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◆ステータス
職業 格闘家
レベル 1
体力 10
攻撃力 5
魔力 0
素早さ 3
防御力 2
運 3
必殺技 真・正拳突き
特殊 必殺技の使用無制限
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へ?僕が格闘家?
格闘ゲームは好きだけど、運動神経ゼロの僕が?? この『特殊』っていうのはもしかして特殊能力って意味かな?必殺技の使用無制限?つまりこの『真・正拳突き』が使い放題ってことか?
せっかくなので必殺技を試してみようと思い、近くに試し打ちするのにちょうどいいものがないかと周りを見渡した。近くに立派な巨木があったのを見て、この巨木に必殺技を使ってみるか!と思い、巨木の前に立ちテレビや漫画でみた正拳突きの構えをしてみた。
「真・正拳突き!!」
必殺技の名前を大きな声で叫び、巨木に向かって拳を振り抜くと自分の拳が白く光りを放ち、ドン!!と大きな音とともに巨木が大きく揺らいだのだ。
「おおーすごい!!これめちゃくちゃ威力があるんじゃないか!」
必殺技の威力にテンションをあげたが、暗闇の中、巨木にとまっていたたくさんの鳥?がバサバサと音を立てて大量に飛び立ち、なんだか怖くなってきた。
よくよく考えてみたら、異世界のモンスターとか出てくるんじゃないか。このままここで野宿するわけにもいかないし、そもそも火のおこし方もしらないし、食料もないしさっき見た町の明かりっぽい方向にとりあえず進むことにした。
しばらく歩くと、さきほどの町の明かりはどんどんはっきりしていき、町の近くまで到着した。遠くからではよくわからなかったが、近くに来てみるとよくゲームの世界でみるようなレンガでできてる建物や木造の建物があり、町の中心部には高くて立派な城がそびえ立っていた。
本当に異世界に来てしまったんだなと改めて実感し、町に入ろうと近づく。すると町の入り口に検問所のような小さな建物があり、その建物の前に体がガッシリした男が1人立っていた。近づくと男が僕に向かって「とまれ!見ない顔だな?」と言ってきた。
「すいません。旅をしていまして今夜はこちらの町で宿を探そうと思いまして、、」よくよく考えてみたら、宿に泊まるお金も持っていないし、旅をしているのに荷物も何も持っていない。これは怪しまれるぞと思ったが、すでに口走ってしまったことを後悔した。
「ん~?おまえ格闘家だろ?」
「えっ?は、はい、そうですけど。えっと、あ、あれ?よくわかりましたね....」
「そりゃそうだろ!格闘家は格闘家に会うとピンとくるもんだろう?」
ピンとくる?どういうことだろう?この世界ではそういうものなのか?
「ひとつ手合わせしてくれないか?」
「はいぃぃっーーーー???」
するとどこからともなく、大きな声が聞こえた。
陽気な男性DJのような口調でその声はこう言うのだ。
「レディーーーーーーーーーーーー!!!」
えええ??なんだなんだ??と思うと続けて、陽気な男性DJみたいな声は続けてこう言った。
「ファイト!!」
その瞬間、ガッシリした男が殴りかかってきた。驚いてのけぞると、そのまま尻餅をついて倒れてしまった。そのとき上を見上げるとガッシリした男の上空に格闘ゲームで見慣れている体力ゲージ2本とその間に「95」と数字が映っていた。
ええええ???、、、こっ、、これってもしかして格闘ゲームの世界に転移したってことじゃないいよね?と思ったところ、僕を見下ろすように立っているガッシリした男が僕に向かってこう言った。
「おい。早く立てよ。タイムオーバー狙いじゃないだろうな」
はーーーい。やっぱりそうだ。これ格闘ゲームの世界なんだ。だからダウンしているから攻撃してこないってことかも?じゃぁこのまま起き上がらなければこの試合は終了するってことだよな。でも、タイムオーバー負けしたらどうなるんだろう?と疑問に思いガッシリ男に思い切って聞いてみた。
「あ、、あっ、あの~このままタイムオーバー負けしたら、僕はどうなるんでしょうか...」
「はぁ?なに言ってるんだ?戦いの最中に。いいから立て!!」
「はっ はいーーっ!!」
ガッシリ男の剣幕に驚き、僕は立ち上がった。
すると今度はガッシリした男が大きく右拳を振りかぶった。
「覚悟しろ!!!ダイナマイト~~インパクトーーー!!」
ガッシリした男の右拳が赤く光りを放ち、僕に向かってくる。思わず目をつぶり両腕でガードするとバコーーン!と音を立てて両腕に強い衝撃が走った。
「痛っ!」
衝撃の強さで僕の体ごと後方に滑るように押された。
これはもしかしてガッシリ男の必殺技か??そ、そうだこっちも必殺技を出すんだ!巨木で試した真・正拳突きを使うんだ!さっそく正拳突きの構えをし、ガッシリ男にじりじりと距離を詰める。ガッシリ男が自分の拳の届く範囲に入った瞬間、僕は叫んだ。
「真・正拳突き!」
そして、勢いよく拳をガッシリ男に向けて、振り抜いた。するとガッシリ男は両腕でガードをした。僕の拳はガッシリ男のガードの上に当たった。だが次の瞬間ドン!っと低く大きな音がしたのに続くようにバッーーン!!と何かが爆発したような音がこだまし、ガッシリ男のガードが開き、そのままガッシリ男の腹部に拳が当たったのだ。
ガッシリ男は、勢いよく10メートルほど後方に吹き飛びそのまま倒れたのだ。
すると陽気な男性DJみたいな声がこう叫んだ。
「ケーオーー!!!」
上空を見上げると「KO」の二文字が浮かび上がり、体力ゲージと一緒にスッと消えてなくなった。
To be continued...