表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/66

2の1 再び飛び立つっ!



 俺視点 〜 街道付近の森 早朝 〜


身を刺すような寒さに目が覚める。 

まだ朝日は顔を出していない時間帯、白い息を吐き出すと大きく身震いし、羽毛の中の空気を入れ替える。


(寒いのは嫌だけど、汗とかでベタ付くのはもっと嫌なんだな〜)


もう一度ブルッと震えて羽毛が立ち上がり、外観がふんわりと丸くなる。

季節は《春先》だが、朝晩は非常に寒い。 しかも、現在地(ココ)は山地に当る地形。下手すれば雛鳥なんて簡単に凍死してしまう。


(寒ぅ〜 今更ながら山賊のいた洞穴内は暖かかったなぁ… まだ、充分に周りが見えないし、 行動はもう少し温まってから〜 )


そうボヤいて数十分──


(さて、 まずは飯の調達に向かいますか。)


昨日、都合良く見つけた樹のウロから顔を出す。

薄く霧のかかった早朝の森はただ静かで、風に揺れる枝葉の音がするのみだった。


(……物音ナシ! 気配ナシ! )


羽ばたき音を極力出さないように意識しながら飛び立つ。 そして樹の周囲を哨戒する。


この辺り… というか、ぶっちゃけ崖下の森(巣の下側)なんてほとんど気にしていなかったため、どんな生き物がいるのかなんて全然知らない。

まぁ、その為の”哨戒”なんだけど。


梢に一匹のリス(と、思われる小動物)を発見。 向こうもこちらを視認したようだ。 警戒させないように近くの梢にとまる。


『おはよう、 突然だけどそこの木の芽はおいしいかな?』


リス(?)の側には最近芽吹いたと思われる若芽があり、リス(?)はそれを手に取ろうとしていた。


『……… 』


言葉が通じないのかリス(?)は少し首を傾げたあと若芽をひと齧り、数回の咀嚼の後、眉間にシワを寄せペッペッと吐き出した。


くぅおぉ〜…


よほど苦かったのかシッポの毛は逆立ち、中々にスゴい表情になっていた。

リス(?)も首を左右に振った後、前脚を顔の左右で広げる。


(あ~ダメダメ… ってヤツか。  って、感情表現豊かだなぁ!)


予想以上のリアクションに思わず突っ込むが、リスは下の方を指している。 ちょうど真下に赤色の実が成った低い木がある。

リス(?)のオススメってヤツかい?


『ありがとう、 さっそく行ってくるよ。』


片翼を上げて返事をすると梢から急降下する、脇目で見るとリス(?)は再び不味かったと思われる若芽を齧り、吐き出していた。


(なんで不味かったのをまた齧るん?)


気にしてもしょうもない事なので、気にせず赤い実を付ける木に降りる。



──うん、以前に食べた実と同じ種類の様だ。

葉っぱの形、実の成り方、前に採ってきた物と酷似してる。

ひと齧り、すると馴染んだ酸味が広がり、気分が冴える気がした。


(……兄弟姉妹(みんな)で食べたのを思い出すなぁ… )


あの襲撃から丸と二日過ぎたが、母からも姉からも連絡が無い。(ついでに兄も)

と、言っても、こちらとて捕われていた身の上、入れ違いがあったのかも知れない。


食べれるだけ食べて、幾つかを《羽毛収納》に仕舞う。

さて、捕らわれていった(ミコ)の情報収集だ。



まずは話を聞いてくれそうな相手を探さなくては、声をかけた途端パクリは洒落にならない。 相手の見極めが大切だ。 (なるべく肉食系は避けよう)


赤い実の木(勝手に命名)から飛び立つと、別の木の若芽を齧るリス(?)を見かけた。


くぅおぉ…


アイツ、まだやってるのか?…




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




やま けむり もくもく


うま はこ がらがら 


とり ばたばた もくもく


にんげん こんがり ざまぁ


とり けもの ばたばた


りす むしゃむしゃ くおお〜 



森の中に住む色々な獣達に昨日の事を聞いてまわった。

中には理解出来ていないのか、変な事を言うのもいた。


比較的、話の通じやすい(草食系の)方々に聞いたのだが、やっぱり朱雀大鷲とニンゲン達の戦闘が一番の大事件だった様だ。


聞くところによると、母は山の中腹の広場一帯とたくさんのニンゲン達を焼き払い、ニンゲン達に討たれるも屍をニンゲンに晒すことなく、大きな火柱となって消えたそうである。

その後の山火事は翌朝まで燃え続けたそうな。


母… 短かったけど今まで育ててくれてありがとう。 (ミコ)を連れ帰ったらキチンと挨拶に行くから…… 



その中で《馬車》について”見た”という、カラフルでオシャレな鳥マダム達にお話を聞いている。

同じ樹に集まっているが、みんなそれぞれ派手な体色だ、 さすがオバちゃん… と感心する。(←無関係です。)


これまでの経緯を話すと、オバちゃん達も興味本意なのか色々と喋りだす。



親切なマダム(オバちゃん)が言うには、


朝早くから赤い大きな鳥がニンゲンと戦っていた事。(←一昨日の母だな。)


昨日たくさんの洞穴から煙が立ち上った事。(←俺は知らない。)


この先の道沿いに進むとニンゲンの街があること、その途中で馬車が派手に事故を起こした事。 (街…… )



馬車か… 雛鳥を()()()って言うからには何処かへ連れて行くのだと思う。

まずはその事故った馬車を調べにいった方がイイかも。


一羽のマダム(オバちゃん)がそっと頭を側に寄せる。


おおきい かあさん いない ……へいき?

(………… )


母程では無いが、大きな大人の鳥に撫でられる。

そして、二羽、三羽と側に寄ってくる。


できない たくさん とうぜん

(出来ない事が多いのは当然って事?… )


おおきく なる だいじ

(確かにまだ、雛鳥だけど… )


むりする すぐしぬ

(……… )


『ありがと、 ……でも兄妹の事心配。 』

(((……… )))

『……無理しない程度で頑張る。 皆さんお元気で!』


身体を寄せて励ましてくれるマダム(オバちゃん)達にお礼を言うと、事故った馬車の確認に、ニンゲンの街の方へと向かうのだった。


行動範囲が広がり、ようやく活躍出来そうな主人公です。

しかし、彼はまだ【弱者】です。

成長を見守って下さい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ