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エッセイ

広告が見てるっ!(改稿)

前作N2435HQ『広告が見てるっ!』を大幅に手直ししたものです。

実用的な文章として、さすがにちょっと読みづらかったので……。

 皆様、こんにちは(再)。

 広告、見てますか?


 世の中、広告だらけです。

 新聞広告。折り込み広告。テレビの広告。

 ラジオとか雑誌とか電車の広告、なんてのも。

 そして何より、インターネットの広告。


 本稿では、インターネットの広告について、そもそもこれってどういう仕組みになっているんだろう、というところのお話をします。

 今『仕組み』と言いましたが、これは、広告を作る側とか、広告を配信する側とか、広告を見せられる側まで含めた広告ビジネスの仕組み、なんかのことではありません。

 そうではなく、皆様の目の前にあるパソコンとかスマホとかが、一体全体どのようにして広告を画面に表示しているんだろう、という辺りのお話です。


 あまり専門的、技術的な言い回しはしないようにしますが、説明する内容自体は技術的なものです。

 なんか細かい裏側のお話です。

 裏側と言っても、ちょっと詳しい人なら、普通に全員知っているようなお話です。

 それでもよろしければ、どうかお付き合いください。


 最初に、皆様の目の前には、パソコンにしろスマホにしろ、ブラウザーの画面が広がっていることと思います。

 『小説家になろう』の、今お読みになっているエッセイのページが表示されているはずです。


 このページ。

 そもそも一体なんなんでしょう。


 「HTML だろ」と思われた方。

 正解です。

 詳しいですね!

 本稿は読まなくていいかも……。


 「HTML って何?」と思われた方。

 ちょっと検索して、調べてみてください。(そうすると本稿の意味はないですが。)

 皆様がご覧になっている、インターネットの Web サイトのページは、どれも HTML で書かれています。

 この HTML には、例えば『小説家になろう』とかであれば、小説の本文の情報がそのまま書かれていたりします。

 他には、画像とか、つまり挿絵とか、それこそ広告とかの情報を、どこからか取ってくるための指令が書かれていたりもします。


 HTML の中には、画像の情報は入っていないわけです。

 入っているのは、「どこそこに画像があります」という、画像の置き場所の情報だけです。


 ここまでよろしいでしょうか。


 この『画像とかの置き場所』というのが、例えば『小説家になろう』のサーバーだったり、他のどこかだったりします。

 今『サーバー』と言いましたが、これは英語で『serve する人』、ここでは、データとかサービスとかを提供するコンピューターのことを意味します。

 例えば、「小説の本文を送ってください」と言われたら、「はいどうぞ」と言って、小説の本文を送り返すのが、サーバーの仕事です。

 「これこれこういう画像を送ってください」と言われたら、その画像を、そして、本稿のテーマですが、「これこれこういう広告のデータを送ってください」と言われたら、それを送り返すわけです。


 サーバーって、色々あります。

 さっき言った『小説家になろう』のサーバーもあるし、広告を配信する会社のサーバーもあります。

 『小説家になろう』のサーバーでは、広告のデータは持っていないわけです。

 広告は、それを取り扱う専門の業者がいて、その業者が管理しているサーバーに、広告のデータが保存されているわけです。


 それで、例えば、皆様が今ご覧になっているページの HTML。

 多分ですが、ページのどこかに広告が表示されていると思います。

 このページの HTML には「どこそこの広告の会社の、このサーバーに保存されている、(うちの Web サイト用の)これこれこういう広告を、画面に表示するのですよ」という指令が書かれています。

 この指令をパソコンやスマホのブラウザーが読み取って、言われた場所に保存されているデータを取りに行って、広告を表示しているわけです。


 ここまでが、最初に申し上げた、『広告が画面に表示される仕組み』です。


 難しくないですよね。


 簡単な仕組みです。


 これは、複雑な仕組みにしてしまうと、それを処理するコンピューターも大変なので、できるだけ簡単な仕組みになっています。


 それでです。


 このお話には続きがあります。


 具体的に言うと、画面に表示される広告の中身です。


 例えば、何か……例えば、育毛について検索したら、それからどの Web サイトを見に行っても、ずっと育毛の広告が表示されるとか。

 漫画の広告をクリックしたら、漫画の広告ばっかり表示されるようになるとか。

 特に何もしてないけど、なんとなく若者向けとか、なんとなくおじさん向け、おばさん向けの広告が表示されるとか。


 そういった経験のある方は多いと思います。


 これって、どういう仕組みで、こうなっているんでしょう。


 『Cookie(クッキー)』って、聞いたことのある方。

 そうです。

 その Cookie です。


 「いや知らん」という方。

 ちょっと検索して…………本稿でご説明します。


 Cookie というのは、サーバーから送られてくる、ちょっとしたデータです。

 サーバーが、「小説の本文を送ってください」とか「画像を送ってください」「広告のデータを送ってください」とか言われて、それを送り返すとき、実は、この Cookie を一緒に送ってきます。

 送られてきた Cookie は、ブラウザーが保存します。

 ただ保存するだけでなく、次回以降にサーバーと通信するとき、その Cookie をサーバーに送り返します。


 別に難しい仕組みではないですよね。

 だけど、変な仕組みです。

 どうしてこんな仕組み——Cookie が必要なのかと言うと、これは『名札』とか『割符わりふ』として使うために、必要なのです。


 例えば、お店に行くと『会員カード』や『ポイントカード』をもらうことがあると思います。

 このカードを使って、お店の方では、お客さん一人一人を見分けているわけです。

 見分けた上で、そのお客さんの買った物を記録したり、特別なサービスを提供したりします。


 例えば、ここ『小説家になろう』でも同じです。

 『ユーザ登録』して『ログイン』すると、「あなたは誰々さんですね」という情報の入った Cookie が送られてきます。

 この Cookie をやり取りすることで、『小説家になろう』のサーバーは本人確認をしています。


 広告の会社のサーバーも Cookie を送ってきます。

 これは「送りますよ」とかの断りがあって送られてくるものではなく、勝手に送られてきます。

 この Cookie を『会員カード』のように使って、広告の会社のサーバーは、広告を見に来た人たちを見分けています。


 ここまでよろしいでしょうか。


 現実の会員カードやポイントカードは、受け取らなかったり、捨てたりできます。

 Cookie の場合も同じですが、何しろ勝手に送られてきますので、ちょっと大変です。

 ここをなんとかして、余計な Cookie を受け取らないようにするあれこれもあるのですが、本稿では、ひとまず置いておきます。


 それでです。


 本稿の最初の方で、広告はそれぞれの Web サイトではなく、広告を取り扱う業者が配信している、と言いました。

 広告の会社は複数あるのですが、同じような会社の広告が、あちこちの Web サイトに貼られています。

 ブラウザーは、「広告を表示するのですよ」という指示に従って、広告の会社のサーバーと通信して、広告のデータと Cookie を受け取ります。

 サーバーの方では、どの Web サイト用の広告を、誰が見に来たのか、記録します。


 「この人は『小説家になろう』用の広告を見に来る人なんだな」、といった感じです。


 広告がクリックされたら、それも記録します。


 こうして、あちこちの Web サイトを経由して、広告の会社は、広告を見に来る人たちの情報を記録します。

 記録した情報を使って、どの Web サイトに、どんな人に、どの広告を表示するのがいいか。

 広告の会社が決めています。

 例えば、髪の話をするのはおじさんかおばさんだから、この人たちには、そういう広告を表示しよう、みたいな感じです。


 ここまでが『画面に表示される広告の中身』についてです。


 ちょっと難しかったでしょうか。


 ですが、これで『インターネットの広告が画面に表示される仕組み』については、大体のところをご説明できたと思います。

 そして、ここまでお読み頂いた方であれば、本稿のタイトルの意味についても、おのずとご理解頂けるはずです。


 広告が見てるっ!


 複数の Web サイトにまたがって誰かを追跡することを『トラッキング』、そのための足掛かりとなる広告などのコンテンツのことを『トラッカー』とか『トラッキングコンテンツ』などと呼びます。


 本稿でご説明したような仕組みで、広告の会社は、広告を見に来る人たちの行動を追跡しているわけです。


 最近では、こういう仕組みの是非についてとか、こういう仕組みをなんとかしよう、という動きもあります。

 しかしながら、本稿では、そうした部分には立ち入らず、仕組みの説明だけで終わることにします。


 広告が見てるっ!


 あなたが広告を見ているのではありません。


 広告があなたを見ています。

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― 新着の感想 ―
[一言]  知ってはいたけど、為になりました。  簡潔で分かりやすくて、さっくりした、良い読後感。いやはや……まるで、広告は追っかけをする読者みたいだ。作者を縛る。  有り難う御座いました。
2022/08/16 12:12 退会済み
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