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春待月  作者: 音月風香
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暗闇に呑まれて

 こ、こは……ど、こ?


 くら、い……。


 っそうだ……。もね、は……。


「ずっと、そばにいる」


 ……って……いっ、て……くれ、た……の、に……。


 …………。


 ……ひ、と、り…は…………い、や、だな……。








※※









「っなんで!けんちゃんー」


 立花たちばな瑠璃るりは幼馴染で義姉弟の勿来なこそけんが倒れたと聞き、彼の運び込まれた病院に慌てて駆けつけた。繁盛期なのに仕事を早退したほどに瑠璃が急いで来たと言えば、彼女にとっての絢の大切さがわかるだろう。よって、瑠璃は病室で泣き声で看護師に説明を求めていた。

 ちなみに、絢の両親は彼の幼少期に蒸発し、絢は瑠璃の家に引き取られ、瑠璃の両親は数年前に交通事故で亡くなった。つまり、絢は瑠璃の唯一の家族ということになる。


「落ち着いてください。立花さん。

 勿来さんは、すぐに処置が必要な状態ではありません」

「じゃあ、なんで、絢ちゃんは倒れたんですかっ!」

「立花さん、もう一度言いますが、落ち着いてください。勿来さんはいたって健康体なんです。身体は。

 先生によれば、精神病の一種ではないかと。」

「っそんな……。

 私の家族は、もう、絢ちゃんだけなのに……。」


 ここ数年、ロボットと創作活動をするというのが流行っている。実際のところ、あまり進捗率が上がるという話は聞かないが、その値段も相まって、モチベーションを上げるのには効果的だそうだ。


 さて、問題はここから。ロボットが原因と推測される、特殊な精神病が増えてきたのだ。症状は様々だが、発症してしばらくすると急に倒れること、家族など身近な者に関わる症状が出ることは共通している。

 具体的に説明するならば、軽い者なら顔が認識できない、視界に入ると声が出ない程度。重篤な者になると、社会復帰が困難なほど何も理解することができないと言われている。詳しいことは本人しかわからないが、同じ感覚を共有できる者は他にいないのだから、何も分かっていないと言えるだろう。

 勿論、特効薬や改善方法は見つかっておらず、罹ったが最後、大切な人との別れになる。




───────この病は巷では、文字通りの意味で『離縁病』と呼ばれている。





※※





 病室にいても仕方ないので、看護師さんに促され、一旦落ち着くために私は外に出た。

 驚きと後悔で涙は止まらないけど、ちょっと落ち着いてきたかも。看護師さんには悪いことしちゃったな。後で謝ろう。顔を覚えるのが得意でよかった。




─────────────────────────────────────




「絢ちゃんが、絢が、離縁病なんて……嘘ですよね。先生。」

「『離縁病』……。そう呼ばれることが多いらしいですね。しかし、医学的には具体的な病名は付けられておりません。

 ……まあ、間違ってはいないでしょう。この病は、本人が大切な存在だと認識している者との間に障害になる症状が出ると言われてますね。私も、まだ疑いがある状態とはいえ、実際の患者を見るのは初めてです。

 まさか、こんな信じ難い症状の患者を実際に目にすることになるとは。」


「絢ちゃ、絢は治るんでしょうか?」

「……その可能性は低いでしょう。」

「っやっぱり。」


 絢ちゃんを診てくれたお医者さんとお話しすることになった。



「まず一つ目に、この病気はまだ専門的な病名がついていない事からも分かるように、治療法も確立されていないことが挙げられます。そして二つ目に、治癒例が少ないことです。なぜ治ったのかが分かっていない以上、治し方も分からず、全て手探りに近い状態です。

 なので、立花さんには勿来さんを家に帰すかの判断をして頂きたいです。」


 絢ちゃんは、いつもの絢ちゃんなら、きっと家に帰る、よね。でも、私は仕事が忙しいし、絢ちゃんを看病する為の休みだってそんなに取れるわけじゃない。だから、私は、絢が病院にいることの方が良いと思う。そういえば、絢ちゃんの持ってた家庭用ロボットってどうすればいいんだろう?


「絢の健康のためにも、入院の方が良いと思います。そもそも元の生活が不健康すぎたのも倒れた原因でしょうし。

 よろしくお願いします」

「分かりました。では、入院に必要な物を持ってきて頂いてもよろしいですか?詳しくは看護師に聞いてください。」


 そう言うと、お医者さんは手元の端末で看護師さんを呼ぶように看護用ロボット──なんか難しい名前がついてた気がするに指示した。


「おや、どうやらすぐ近くにいたようです。」

「入院の準備ですね?」

「そう。あと、7番の書類とKS-5をお願い。」

「分かりました。

 立花さん、諸々の説明は別室で行います。こちらへどうぞ」

「はい。先生、ありがとうございます」


 私はテキパキと仕事のできそうな年配の女性の看護師さんに連れられて、別室へ向かった。そこで書類を貰い、私は家に帰った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

もしよろしければ、評価・感想等よろしくお願いします。

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