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【旧作】それゆけ、孫堅クン! ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第1章 立身出世編

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幕間: 孫堅の弟たち

【呉景】


 うわ、孫堅さんだ。

 なんかまっすぐに近づいてくるよ。

 しかもあの顔は、なんか厄介事だろうな。


「よう、呉景ごけい。久しぶりだな」

「あっ、孫堅さん。お久しぶりです。なんか富春で、役人になったらしいですね」

「おう、今じゃ正式な県尉だぜ。ちょっとガラじゃないけどな」

「ですよね? ついこの間まで、一緒に悪さしてたのに」

「なんのことかな~」


 あれ、この人なんか、雰囲気変わった?

 以前はもっと、狂犬みたいにギラギラしてたのに。


「ところで呉景。姉さんは元気か?」

「えっ、ええ、元気ですよ」

「そうかそうか。お前の姉さん、美人だよな~」

「ええまあ、そう言われますね」

「頭も良さそうだしな」

「……ええ、悪くはないと思いますね」

「だよな。そこでお前に頼みがあるんだ。俺に紹介してくれ」

「うええっ! マジですか?」


 え、なに言ってんの、この人?

 バカじゃない?

 もう一度いう、バカじゃない?


 姉さんがあんたの相手なんか、するはずないじゃん。

 ちょっと県尉になったからって、舞い上がってる?

 困っちゃうな~、ほんとにも~。


「頼むよ。いっぺん話したいと思ってたんだ」

「話すだけですか?」

「そりゃあ、あわよくばお友だちになってだな」

「失礼ながら、難しいと思いますよ。こう見えてうちは、それなりに名家めいかですからね」

「そんなの分かってるよ。だから紹介してくれるだけでいいって」

「いや、でも……」

「なんだよ。紹介してくれないんなら、この間の悪さ、ばらしちまうぞ」

「ちょ! 孫堅さんだって一緒にやったじゃないですか!」

「いいんだよ。俺は庶民だから」

「うぐぐ……」


 とうとう脅しまで掛けてきやがったよ、この野郎。

 しかし俺の悪評をばらまかれるのは、得策じゃないな。

 向こうも役人になったんだから、ここは恩を着せておくか。


「これっきりですからね」

「おう、感謝するぜ」



 それで姉さんに紹介することになったんだが、なんか予想と違ってた。


「はじめまして、孫堅といいます。今、富春で県尉やってます」

「はじめまして。呉雨桐ご うとうです。富春の県尉さんというと、例の海賊退治の?」

「ええ、そうです。よくご存じですね」

「ウフフ、それはもう、けっこうな噂になってましたから」


 あっれ~、なんかいい雰囲気じゃん。

 姉さんて、こういうのが好みだったのかな。

 ちょっとこれは、ヤバイかもしれない。




 その後も孫堅さんはまめに姉さんを訪ね、2人の仲は深まっていった。

 そしてとうとう姉さんが、恐ろしいことを言いだしたのだ。


「景、孫堅さまから結婚を申しこまれました。あなたはどう思いますか?」

「ちょ、マジで? そんなの無理に決まってるじゃない」

「無理とは、どういう意味ですか?」

「うちとは家格がつり合わないから、絶対に反対される。叔父さんたちが黙ってないよ」

「まあ、そうでしょうね」

「そうでしょうねって、ひょっとして姉さんは前向きなの?」


 すると姉さんはちょっと頬を染めながらも、はっきりと答えた。


「悪くないお話だと思っています。若くして県尉になってますし、私を大事にしてくれそうですから」

「マ・ジ・で?!」


 最悪だ。

 あんな人が俺の義兄になるなんて。

 だけどこうなったら、姉さんの気持ちは変わらないだろう。


 この人はおとなしそうに見えて、けっこう強情なとこがあるからな。

 下手をすると、家を出るぐらいは言いかねない。

 それぐらいなら、ここで味方をしておくか。


「はぁ……分かったよ。協力するよ」

「まあ、けいったら。ずいぶんと物分かりが良くなったのね。でも助かるわ。叔父さんたちの説得には、協力してね」

「うん、協力はするよ……」


 その後、予想どおりに親戚衆は、姉さんの結婚に大反対したが、なんとか押しきった。

 姉さんが断固たる意志を示したし、孫堅さんが県尉だっていうのも、大きかった。

 こうして姉さんと孫堅さんは結婚し、俺は彼の義弟になったのだ。




 それからしばらくは、平穏な日々が続いていた。

 孫堅さんは心配していたほど、無茶は言わないし、けっこうまじめに仕事をこなしている。

 だけどある日、その平穏は崩れ去ったのだ。


「おい、呉景。今度、会稽に妖賊ようぞくの反乱を鎮圧に行くから、ついてきてくれ」

「うええっ、マジですか?!」

「大マジだ。郡の司馬になったのはいいんだけど、信頼できる部下がいないんだ。孫静と一緒に、俺を補佐してくれよ」

「ちょ、ま、待ってくださいよ。俺、戦いとか苦手なんですよ」

「行きゃあ、なんとかなるって。頼んだぞ」


 俺の意志はガン無視で、反乱鎮圧に連れてかれることになった。

 そしてここから俺の苦難の日々が、始まったのだ。


「よし、俺はちょっと行って、城門あけてくるから、お前らは後から来い」

「分かったよ、兄さん。気をつけて」

「うええっ! マジですか、孫堅さん?」


 おいいっ、大将が単身で突っこむなよ~!

 うわっ、マジで城門が開いた。

 相変わらずメチャクチャだ。

 だけどこうなったら、突っこむしかない。


「開いたぞ! 突っこめ~!」

「「「おお~っ!」」」


 その後も何度も死にそうになったけど、俺は生き残っていた。

 そして恐ろしいことに、我が軍は妖賊の討伐に大きく貢献し、堂々と故郷に凱旋がいせんしたのだ。

 そして別れ際に、彼は俺の肩を叩きながら、こう言ったんだ。


「今回は助かったよ、呉景。今後もよろしくな」


 どうやら俺の苦難の道は、まだまだ終わらないらしい。





【孫静】


 最近、兄さんの様子がおかしい。

 前は血の気の多い単純バカだったのに、海賊を討ち取ってから、妙に冷静な一面を見せるようになったんだ。

 その後、兄さんは県尉の代理に就任し、バリバリと山賊や海賊を取り締まってた。

 そしてとうとう、正式な県尉になったんだ。


 なんか以前の兄さんからは考えられないくらい、要領がいい。

 それどころか、何をトチ狂ったのか、呉家のお嬢さまとつき合いだしたんだ。

 周りは長続きしないと思ってたのに、とうとう結婚にまで漕ぎつけちゃった。


 まさか兄さん、脅迫とかしてないよね?

 だけど相手の呉雨桐ご うとうさんは、けっこう幸せそうに見えるんだよな。

 ちょっと何が起きているのか、よく分からない。


 その後も兄さんはまじめに仕事を続け、近隣に名が轟くほどになった。

 そしたらある日、太守さまに呼ばれて、郡司馬になって帰ってきたんだ。

 そして思いがけないことを、僕に言う。


「おう、孫静。今度、会稽に妖賊の討伐に行くんだけどよ、ついてきてくんないか?」

「えっ、なに言ってんの? 兄さん。僕、戦いとかしたことないよ」

「何事にも最初はあるもんだ。大丈夫。お前には才能あるから」

「えっ、そ、そうかな?」


 面と向かって才能あるとか言われると、やっぱ嬉しいよね。

 まあ、僕も15歳になったんだし、いいかな。


「分かった。ちゃんと守ってね」

「おう、俺のそばにいれば、たぶん大丈夫だから」


 こうして僕は、妖賊の討伐に行くことになったんだ。

 だけど実際の戦場では、予想外のことが起こる。


「おいい~っ、なんで俺たちがこんな重要なとこ、任されてんだよ~!」

「知りませんよ。孫堅さんが受けてきたんでしょう?」

「なんか口答えできる雰囲気じゃ、なかったんだよ~!」


 着任してすぐに、最前線に放りこまれるとはね。

 でもなんだかんだ言って、兄さんはちゃんと戦えてるんだ。


「でもなんとかなってるじゃない。さすが兄さん、強いんだね~」

「まあな。よし、こうなりゃヤケクソだ。野郎ども、なんとしても生き残るぞ」

「「「おうっ!」」」


 その後も無茶な戦闘が続いたけど、僕たちは生き残っていた。

 それどころか、朱儁しゅしゅんさんていう人と協力して、勝ち続けたんだ。

 兄さんはどんどん大将首とるし、ちょっと何が起こっているのか、よく分からない。


 そして運命のあの日、兄さんは決死隊を率いて、敵城に突入したんだ。


「開いたぞ~っ! 突っこめ~!」

「「「うおお~~~っ!」」」


 兄さんは見事、内側から城門を開け放ち、味方を引き入れることに成功した。

 その姿はまるで話に聞く英雄のようで、とてもまぶしかった。

 そうか、僕たちでもがんばれば、英雄になれるんだ。


 いや、そうじゃないな。

 実際に英雄になれる人間なんて、ほんのひと握りしかいない。

 だったら僕たちが支えて、兄さんを英雄にすればいいんだ。

 そして僕は、英雄の弟になろう。

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本作の改訂版を始めました。

それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~

しっかり校正して、ストーリーも一部変更予定です。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

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