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【旧作】それゆけ、孫堅クン! ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中華分裂編

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幕間: 反逆者の末路

 俺の名は蔡瑁さいぼう 徳珪とくけい

 襄陽蔡家の嫡男だ。

 我が蔡家は荊州の名門であり、伯母上は元太尉の張温さまに嫁いでいるほどである。


 そんな俺に、今度、荊州牧になる孫堅という男から声が掛かった。

 初平元年(190年)のことだ。

 ぜひ、荊州の建て直しに力を貸してほしいと言う。


 他にも蒯良どのや蒯越どのにも声を掛けているらしい。

 ふむ、荊州を治めるため、俺たちに声を掛けるのは正しい。

 我らのような名家こそが、漢朝の政治の礎だからな。


 聞けば孫堅は揚州出身の平民らしいが、長沙郡の太守まで務めた男だ。

 しかも先日の反乱騒ぎではうまく立ち回り、董卓政権の存続に貢献したとか。

 董卓なぞという田舎者に協力するのは気に入らないが、勝てば官軍であるのも事実。


 実際にこの荊州の権力を握るのは彼なのだから、手を貸すにしくはないか。

 な~に、どうせ力だけが自慢の武骨者よ。

 いずれ我らの助けなしには、まともに仕事もできんくなるだろうよ。

 そうと決まれば、仕官を了承して、準備をはじめるか。



「はじめまして、孫堅さま。蒯良かいりょう 子柔しじゅうと申します」

蒯越かいえつ 異度いどにございます」

蔡瑁さいぼう 徳珪とくけいと申します」

「うむ、貴殿らの助け、頼りにしているぞ」


 こうして彼のところへ仕官したのはいいが、思っていたのとは少し違った。

 なんと張紘や張昭、韓嵩といった文官や、程普、黄蓋、黄忠といった武官がいるではないか。

 どの男たちもそれなりに優秀なようで、我らの存在感は思っていたよりも薄い。


「どうも、思っていたのとは違いますな、蒯越どの。孫堅さまの周囲には、意外に人材が揃っているようだ」

「うむ、おかげで我ら荊州閥の立場は、あまり高くない。もっとこう、腕を振るえると思ったのだがな」

「おまけに孫堅さまは、我ら豪族の力をごうとしておられる。今はまだ良いが、いずれはどうなることか」

「まあな。しかし我らがまじめに働いていれば、悪いようにはせんであろうよ」

「本当にそうであれば、よいのですがな」


 やはり蒯越どのも、不満を感じているらしい。

 孫堅さまは我らよりも、古参の臣を頼りにしているようだからな。

 しかし問題はそれだけではない。


 彼は富裕な豪族の土地や私有民を調べ上げて、税をむしり取ろうとしているのだ。

 これは我らが、長年かけて築き上げてきた財産だというのに。

 今のところは私有民の把握を優先させて、税は減免しているが、いずれどうなるか分からない。


 たしかに州の建て直しには、徴税や徴兵の見直しが必要であろう。

 しかしだからといって、我ら高貴な身分と、ただの平民を同列に扱ってもらっては困る。

 孫堅さまは平民出身だから、その辺が分かっておられぬのだ。


 まあ、今言っても取り合ってもらえそうにないから、いずれ機を見て進言するか。

 そのためにも俺が使えることを、理解してもらおう。

 どうですか~、俺って有能ですよ?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 なにやら洛陽で、董卓が暗殺されたらしい。

 それで孫堅さまが慌てて出発したと思ったら、あっさりと騒動を鎮めてしまったとか。

 う~む、相変わらず、凄まじい行動力よ。

 やはり今後も、彼についていくしかないのだろうか?


 そう考えていたら、なんと袁隗えんかいさまから、内応のお誘いがあった。

 袁隗さまといえば、四世三公の汝南袁家を事実上まとめており、一時は太傅たいふまで務めたお方だ。

 その名声や権威は、孫堅などとは比べ物にならん。


 この書状によれば、孫堅を殺すか捕らえるかすれば、洛陽で引き立ててくれるとある。

 フハハ、俺もそろそろ荊州だけでは、物足りないと思っていたのだ。

 あんな田舎者に使われるよりは、よほどやりがいがありそうだ。


 しかし俺だけでは、孫堅をはめるには心許ない。

 うむ、蒯良どのや蒯越どのを誘ってみよう。

 きっと快く、話に乗ってくれるだろう。


「蒯越どの、蒯良どの。実は折り入って相談があります」

「む、何かな?」

「実はですな、汝南袁家の袁隗さまから、このような書状が」

「ふむふむ…………なんと! 孫堅を捕らえれば、栄達は思いのままであるか。これはなかなかに魅力的よのう」

「うむ、前々からあの山猿の下は、働きにくいと思っていたのだ。これは千載一遇の好機かもしれんな」

「やはりそうですか。では?」

「うむ、大至急、私兵を集めよう。そして他の豪族に反乱を起こさせて、孫堅を呼び寄せるのよ」

「フフフ、孫堅がどんな顔をするか、今から楽しみじゃのう」


 こうして蒯越たちも仲間に加わり、我らは準備を進めた。

 蔡家と蒯家で私兵を編成すると同時に、各地の豪族に反乱を促したのだ。

 やはり豪族たちも、不安に思っていたのだろう。

 続々と我らに呼応する者が現れた。


 そして万全の準備を整え、孫堅を待ち伏せて、多数の兵でヤツを囲んでやったのだ。

 てっきりこれで終わりかと思っていたのだが、そこまでは甘くなかった。


「うおお~っ! この孫堅 文台。簡単には討ちとられんぞ。てめえら、覚悟しやがれっ!」


 孫堅は獣のような声を上げながら、暴れはじめた。

 その暴力たるや凄まじいもので、ヤツが剣を振るたびに兵が倒れていく。


「矢を射てっ!」

「「「はっ」」」


 げえっ、矢を切り払いおった。

 しかも包囲網を振り払って、外へ逃れてしまう始末。

 化け物か、ヤツは?


 その後も追手を掛けるが、まんまと逃げられたと報告があった。

 なにやら襄陽の民からも、妨害を受けたらしい。

 おのれ愚民どもが、邪魔をしおって。

 しかし凶報は、それだけにとどまらなかった。


「蔡瑁さま、孫堅の家族が、敵に奪われたそうです! さらに襄陽の街中で、不穏な気配が高まっております」

「ば、馬鹿な。人質もなしでは、対抗できんではないか…………やむを得ん。襄陽から撤退しよう」

「蔡瑁どの、しかしどこへ?」

「江夏に味方がいる。すでに夏口城は奪っているはずだから、なんとかなるだろう」

「そ、そうだな。荊州豪族の力を結集すれば、孫堅にも対抗できるかもしれん」

「そうと決まれば、一刻も早く脱出だ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 こうして俺たちは、一族郎党を引き連れて、江夏郡へ逃れた。

 無事に夏口城を占拠していた連中とも合流でき、我らは来たる決戦に備えたのだ。

 しかしその兵力は2千5百ほどと、それほど多くはない。


「敵、孫堅の軍が接近中です。その数およそ5千!」

「む、さすがに多いな。しかし城を盾に戦えば、そう簡単に負けることはあるまい」

「うむ、そうだな。それに我らが健闘していると知れば、他の豪族も合流するかもしれない」

「ああ、そうだそうだ」


 そう言って味方を鼓舞したが、はたして大丈夫だろうか?

 敵は精強をもって知られる孫堅軍なのだ。

 俺も一緒に練兵をしてきたから、その強さはよく知っている。

 しかもあの孫堅が陣頭指揮を執るとしたら……



 やはり嫌な予感は当たってしまった。

 敵は最初、慎重な攻略に終始しており、陣内には安堵する雰囲気が広がった。

 しかし攻略5日めにして、敵は豹変したのだ。

 おそらく今までは、こちらの弱点を探っていたのだろう。


 突如、烈火のような総攻撃が始まり、孫堅みずからが城壁に取りついてきた。

 ヤツは我らの罠を食い破ったときのように、鬼神のように暴れまわり、味方の傷口を広げていった。

 そして気がついた時には、城門が内側から開け放たれ、敵軍がなだれ込んできたのだ。


 ば、馬鹿な!

 なんと非常識な戦い方だ。

 おかげでこの場も、長くはもちそうにない。

 かくなるうえは……


「孫堅さま、我々は決して、あなたが憎くて反逆したのではないのです。あまり豪族をないがしろにしていると、今回のような反乱が起こることを、お伝えしたかったのです」

「そうですぞ。この国を動かしているのは、我ら名士なのです。しかし孫堅さまは、平民に肩入れしすぎる。それをおいさめしたかったのです」

「それに加えて、我らが煽動したことにより、多くの反乱分子があぶり出されました。それこそが我らの狙いだったのです」


 敵軍に降伏した我々は、孫堅の前に引き出されると、必死に弁解した。

 我ながら苦しい言い訳だとは思うが、背に腹は代えられん。

 それについこの間まで、一緒に働いていたのだ。

 そう悪いようにはせんだろう。


 しかし孫堅は隣の周瑜と顔を見合わせると、呆れたように言った。


「お前らなぁ。俺のこと、気に入らねえって言ってたじゃねえか。”下賤の出のくせに、えらそうにしやがって”とか、”庶民に媚びを売ってる”とかな。そのうえでお前らを信じろって、無理があり過ぎだろう」

「そうですね。私には名家の誇りはないのか、とも言われました。あなたたちの価値観は、ようく分かったつもりですよ」


 そう言う周瑜の目は、ゴミでも見るかのように冷たい。

 いかん、このままでは殺されてしまう。


「い、いや、だからあれは演技であってですな、本音は今もこうして、孫堅さまを慕っているのです。どうか、どうかもう一度、機会をいただけませんか!」

「そうです! この蒯越、今まで以上に働いてみせますぞ」

「私もです! 我らと共に、この荊州をさらに住みやすい場所にしましょう」


 すると孫堅は、腕を組んで考えるそぶりを見せた。

 こ、これはひょっとして、可能性があるか?

 ククク、まったく甘い男よ。


 しかしヤツの口から出てきた言葉は、期待にはほど遠いものだった。


「ダメだな。お前らはどうしても許せないことをやった。その罪は命で償ってもらう。もちろん、お前らの親類は3族まで皆殺しだ」

「そんな馬鹿な!」

「お、お考え直しを!」

「ひい~~、死ぬのは嫌だ~!」


 くそっ、やはりそんな甘い話はなかったか。

 おまけに俺の判断まちがいで、名門蔡家を滅ぼしてしまうとは、なんと情けない。

 む、無念だ。

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本作の改訂版を始めました。

それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~

しっかり校正して、ストーリーも一部変更予定です。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[良い点] サイボウやカイ兄弟の心的描写、反乱からその収束までの経緯を描いてくれた所。 [気になる点] 何故5日目に孫堅軍が豹変した描写が無いところ。これも、後日談であるのでしょうか? サイボウは“…
[良い点] 朗報「蔡瑁等、命乞いの上、処刑」 [一言] リクエストに応えて頂きありがとうございます。スカッとしました
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