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【旧作】それゆけ、孫堅クン! ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中華分裂編

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27.董卓、暗殺さる!

初平3年(192年)5月初旬 荊州 南郡 襄陽


 荊州で改革を進めつつ、華北の動きにも神経を尖らせていた矢先、とうとう恐れていたことが起こってしまう。


「なんだとっ! 董卓が暗殺された?!」

「はい、護衛のはずの呂布に殺され、その後すぐに王允おういんが実権を掌握した模様です」

「くそっ、さんざん注意するように言っていたのに……」


 周瑜からその報告を聞いた途端、俺は目がくらむような怒りに包まれた。

 薄々、起こるのではないかと思っていた悲劇が、とうとう起こってしまったからだ。

 そうならないよう、董卓には再三注意を促していたというのに。


 しかしこの世界では、俺が董卓に味方したおかげで、史実と大きく異なる道を歩んでいたはずなのに、なぜだ?

 これが歴史の修正力というやつなのだろうか。

 もしそうなら俺も、安心してはいられないことになる。


 俺はそんな思いを振り払って、周瑜に状況を確認する。


「一体、何が起こったんだ?」

「はい、これによると、やはり王允と呂布が共謀して、董卓を暗殺したようです」


 周瑜の手元にある手紙は、董卓の周囲にひそませていた密偵が送ったものだ。

 その伝送は伝書バトを用いたもので、情報としては非常にホットなものである。

 実は2年ほど前から、インド方面からカワラバトを仕入れ、連絡に使えるよう訓練していたのだ。


 おかげで1日と経たずに情報を得られたのはいいが、その結果は最悪だ。

 俺が何回も警備体制を見直すよう、進言していたにもかかわらず、董卓の暗殺が実現してしまったのだ。

 しかしその原因は分かっている。


 董卓が呂布という男に、過剰な信頼を寄せていたからだ。

 元々、丁原に仕えていた呂布を口説き、上司を暗殺させて味方に引き入れた董卓は、なぜかヤツを無条件に信じていた。

 一度うらぎった人間が、また裏切らない保証などないというのに。

 それは呂布が無双の武人であり、護衛として都合が良かったのもあるかもしれない。


 いずれにしろ董卓は、呂布のことを信頼して、護衛として使いつづけた。

 生粋の武人であった董卓は、粗暴なところもあったが、身内と判断した人間には優しい、情の厚い男だったのだ。

 そんな隙を、まんまと突かれてしまった。

 悔やんでも悔やみきれない失態だが、今は嘆いている場合ではない。


「それで、洛陽の防備はどうなっているんだ?」

「どうやら董卓と一緒にいた親類も殺され、その他の武将は外に出払っています。なので呂布の掌握する5千ほどの兵が、守りを固めているようです」

「おそらくすぐに、華北で兵を挙げる奴らが出てくるだろうな」

「はい、すでに準備しているとすれば、ここ数日が決め手となるでしょう」

「よし。大至急、南陽の兵を動かすとしよう。例の仕掛けは、うまくいきそうなのか?」

「それはまだなんとも。続報を待たねばなりませんが、可能性は高いと思っています」

「分かった。いずれにしろ、洛陽へ出発するぞ」

「はい」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後、張紘たちに状況を伝えると、俺はただちに魯陽ろようへ向かった。

 その前に伝書バトを使い、魯陽に兵を集めるよう指示を出してある。

 普通なら募兵に何日も掛かるところだが、ある程度の準備はしてあった。


 南陽郡では常備兵の数を増やし、さらに農民兵の訓練も頻繁に行うようにしていたのだ。

 これによって一旦、招集を掛ければ、短時間で多くの兵が集まる仕組みになっている。

 おかげで俺が魯陽にたどり着いた頃には、1万人ちかい兵が集まっていた。


「3日ほど前に、洛陽で政変が起こった。どうやら相国閣下が、逆賊の刃に掛かったらしい。我らはただちに洛陽へおもむき、逆賊を捕縛もしくは討伐する。そのためには誰よりも早く、洛陽へ着く必要がある。遅れる者は置いていくから、そのつもりでいろ。全軍出撃!」

「「「おお~~っ!」」」


 俺の号令に従って、万を超える兵士が動きだす。

 しかし歩兵に合わせていては、洛陽まで何日も掛かってしまう。

 そこで俺は千人の騎兵隊を率いて、洛陽へ先行した。


 ここで問題となるのが、魯陽と洛陽の間をふさぐ大谷関たいこくかんだ。

 こいつは洛陽8関のひとつに数えられる関所で、南側を守る要害である。

 そして当然ながら、許可のない軍勢を通さないよう、王允から指示が出されていた。


 さすがに人員補充は間に合わず、数百人しか詰めていなかったが、そう簡単に抜けるような関所ではない。

 しかし今回のような事態を想定していた俺は、ここでも手を打ってあった。

 1年以上前から、隊長クラスの兵を送りこんでいたのだ。


 そして俺たちが大谷関にたどり着くや否や、内側から門を開けさせ、逆らう指揮官や兵を拘束した。

 これによって俺たちは、あっさりと大谷関を手に入れたのだ。

 そしてひとまず兵を休ませると、翌日には洛陽の城門前にたどり着いていた。

 それは俺が襄陽をってから、わずか5日めのことだった。


「荊州牧の孫堅である。洛陽に異変ありと聞いて、駆けつけた。開門を願う!」


 もちろん洛陽の城門は呂布の配下で固められていて、開く気配はない。

 おそらく今は、伝令が呂布の下に走っている頃だろう。

 さて、敵はどんな行動に出てくるのか?


 そんなことを考えながら、部下にも城内へ呼びかけさせながら、敵の動きを待っていると、やがて城門が開いた。

 そして大勢の騎兵と歩兵が、姿を見せたのだ。

 その先頭に立つのは、見覚えのある偉丈夫である。


「孫堅! 貴様、洛陽に異変ありとは、何事だ? あらぬ噂を流して民心を動揺させようとしても、この俺が許さんぞっ!」

「フフン、あらぬ噂でもないだろう。なにしろ貴様が、相国閣下を害したのだからな。この親殺しめっ!」


 そう、偉そうに出てきたのは呂布だった。

 丁原に続いて董卓までもを裏切って殺した、裏切りの常習犯だ。

 呂布は本当のことを言われ、わずかに動揺しながらも、堂々としらを切った。


「フン、知らんなあ。たしかに董卓さまは亡くなられたが、病死だ。俺が殺したなどと、言いがかりは困るな」

「ハハハッ、今さらしらばくれるんじゃねえよ。薄汚れた野良犬がっ!」

「ぬう……」


 俺が思いきりののしってやったら、ヤツが血相を変えた。

 これだけの悪事をなしておいて、あおり耐性の低いやつだ。

 ヤツは矛先をかかげると、背後の軍勢に号令を掛けた。


「全軍、突撃! 孫堅を討ち取れっ!」

「「「おお~!」」」


 こちらの倍はありそうな軍勢が、怒号を上げながら迫ってくる。

 それに対して、こちらも号令を掛けた。


「全軍、散開! 正面からは当たるな!」

「「「おおっ!」」」


 すると千の騎兵隊が、4つの部隊に分かれて動きだす。

 それぞれの部隊がバラバラになって、洛陽城から距離を取った。

 ちなみに俺の他には、程普ていふ黄蓋こうがい黄忠こうちゅうが、それぞれ部隊を指揮している。


 それに対して呂布は、500人ほどの騎兵を率いて、一丸となって俺に向かってきた。

 しかしこちらはそんな攻撃など、まともに受ける気はない。


「俺に続け!」

「「「おうっ!」」」


 俺は脇目もふらず、南側に走りつづけた。

 すると呂布はそれを追いかけ、どんどん洛陽から離れていく。

 当然、歩兵部隊との距離も離れるが、呂布はそんなことお構いなしだ。


 よほど自分の腕に自信があるのと、俺さえ討ち取ればおしまいだと思っているのだろう。

 そんなヤツをさんざん引き回したうえで、やがて小高い丘の上に、俺たちは陣取った。

 すると少し遅れてきた呂布も一旦立ち止まり、陣形を整える。

 やがて準備が整うと、ヤツは酷薄な笑みを浮かべながら、号令を掛けた。


「突撃ぃっ!」


 500騎もの兵が一丸となって、向かってくる。

 当然、こちらも負けずに迎え撃った。


「負けるなっ!」

「「「おうっ!」」」


 敵の半分ほどの騎兵が、地響きを立てて爆進する。

 それぞれ先頭に立つ俺と呂布の距離が、ぐんぐんと縮まった。

 そして間近に迫ったところで、互いの矛を突き出す。


 しかし互いに相手を傷つけられずに、そのまますれ違った。

 後続の騎兵たちも俺に続くが、中には対処を誤り、落馬する者がいた。

 なにしろこの時代、まだあぶみがないため、馬上で踏んばりが利きにくい。


 なので太ももで馬体をはさんでこらえ、武器の使い方も突き主体になる。

 下手に大ぶりなんてしたら、それだけで落馬しちゃうからな。


 その後も集団突撃を繰り返しているうちに、やがて乱戦になった。

 こうなると馬の機動力もいかせず、敵味方がバラバラになって、組み合う形になる。

 そして俺の目の前には、呂布がいた。


「貴様の命、今日で終わりにしてくれるわ。とうっ!」

「ほざけっ! こっちこそ仇をうってやる! おりゃっ!」


 互いに馬上で矛を振るう、危険な戦いが始まった。

 俺も必死で馬を操って、矛を繰り出す。

 しかし騎馬戦に関しては、呂布の方に分があった。


 なにしろ呂布は、遊牧民も共存する并州へいしゅうの出身だ。

 おそらく幼少の頃から乗馬に慣れ親しみ、経験を積んできたのだろう。

 対する俺は江南のド貧民の出身である。


 そもそも馬自体が少ないし、役人になるまで馬には乗れなかった。

 もちろん乗れるようになってからは、自分なりに訓練を重ねている。

 しかし根っからの騎馬民族とは、大きな差があるのも事実なのだ。


 俺の懸念どおり、やがて呂布に追いこまれるようになってきた。

 こちらも必死で食らいついていたが、やがて俺はバランスを崩し、落馬してしまう。


「ぐおっ」

「フハハッ、勝負あったな」


 やべえ、ちょっと無茶をしすぎたか?

 しかしなんとしても、この劣勢を覆さねばならない。

 がんばれ、孫堅おれ

董卓の救済が裏テーマだと言ったな?

あれは嘘だ!

正確に言うと、董卓の名誉の救済でしたね~。

董卓ファンの方にはすいません。

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本作の改訂版を始めました。

それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~

しっかり校正して、ストーリーも一部変更予定です。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[気になる点] 鎧作らないのは騎馬民族に知られたらヤバイからかな?
[良い点] 登場人物(呂布、王充)の追加ありがとうございます♪ [気になる点] 連合を乗り切ったのに董卓の退場が早すぎる・・孫堅が主人公上仕方ないけど、もう少し引っ張って欲しかったです^_^; [一言…
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