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不細工

その若い女は長く白い髪をしていた。光の加減で薄桃色に光るのを前髪もすべて後ろに流しひとつに束ねている。

髪と似たような色の狭い額の下に硬そうな眉が生い茂り、眉間には不機嫌そうな深い縦皺が2本。皺によって押し出された肉がコブのように堂々と鎮座している。

目は開いていても、薄い瞼がたくさんの襞と共に垂れ下がっており眼球の上半分を覆っている。その奥では瞳が澱んだ沼のような青緑色をたたえて執念深そうに光っている。

何より目立つのは鼻だ。鼻は筒となって顔から飛び出し、平均の10倍の大きさはあろうかという鼻の穴が正面から世界を見据えてその尖った頭は真っ直ぐ上を向いている。

その下の口は鼻よりも横幅が狭く、鼻に肉を奪われたのか上唇が持ち上がり、常に人を嘲るように前歯が剥き出しになっている状態だ。

と、顔面にこれだけのものを揃えておいて耳だけ普通の耳をしているのが何とも薄気味悪い……というのはわがままだろうか。

そんな頭が頑丈そうな顎から首につながり、体は大量の荷物と男物女物の入り交じった妙な組み合わせの服を纏っている。

そして、もう一人いた。

身長は平均的なその女の陰に隠れて、背の高い男より頭ふたつほど大きい女が。先に店に入った女が部屋があるのを確認し手招きすると、入り口が低いのでぶつからないようにかがんで入ってきた。

こちらの顔は何も特徴がない。目が2つ、鼻と口が1つずつ。耳はわからない。強いて挙げるとすれば瞳が茶色なことだ。顔以外の全身をフードの付いたマントで覆い、手袋をして、髪も纏めて意図的に隠しているようである。

「姉さん方、2人で旅してんのか?こんな所?」

ロトクは警戒されないように陽気に話しかけたが、不細工な女はそれに答えずカウンターの前、座っているロトクの横に立った。

店主が帳簿を取り出し訊ねた。

「何泊だい?」

「一晩」

「名前は?」

「俺はソエでこっちはミンフ」

不細工なソエの紹介を受けて長身のミンフは慌てて背筋を伸ばした。頭はぎりぎり天井に付いていない。

店主はそれだけ書き記して代金を受け取り、2階の奥から2番目の部屋だと告げた。

「ありがとう。あと飯も食いたいんだけど」

「おっ、案内するぜ?甘いのとか辛いのとか色々知ってるからよ」

ロトクは諦めずに話しかけた。

「ここの料理も上手いけど酒のつまみばかりだからよう。夕飯だったらいい所知ってるぜ」

「そうだなぁ。さっきこの兄さんはこんな所って言ってたが(わかってるよ、悪気はないって)この辺は旨い飯屋がたくさんあるんだ。姉さん達はどこからどこ行くんだい?」

「……ダーケからルギウムまでだよ。ルギウムにいるこいつの姉に用があるんだ」

ソエがミンフを指したので、ミンフはまた背筋を伸ばした。

店主はこの都市より規模の小さい2つの地名を聞いて頷き、気さくにロトクを頼るよう薦めた。

数日間逗留している髪飾りの行商人のこの男は長話によく付き合ってくれるので、店主は好感を持っている。

のけ反るようにしてミンフの顔を見たソエは、そこに怯えや嫌悪感がないのを感じて小さく溜め息をついた。

「じゃあ、頼む」








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