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ターン1 会心のリスタートを決めたい俺は

 眼前に近づいては離れてを繰り返す、フローリングの床。


 そこにポタリ、ポタリと汗の(しずく)(したた)り落ちる。




「ふっ……ふっ……ふっ……」




 荒い息遣い。

 これは、俺自身のものだ。




 10セット目。


 よし!

 腕立て伏せは、これで終了。


 次のメニューは、腹筋だ。




 仰向けになり、膝を立てた状態から上半身を起こす。


 カールアップクランチという、定番のヤツだ。


 俺は適度な負荷をかけながら、回数を重ねていった。




 ん?

 何でお前は、そんなに筋トレ頑張ってるのかって?

 

 よくぞ聞いてくれました。


 こいつは、夢を実現させるためのファーストステップ。

 

 俺の夢である職業に就くためには、(じつ)に様々な能力が要求される。


 その必須能力のひとつが、(きょう)(じん)な筋力ってわけさ。


 スポーツ選手にでも、なるつもりなのかって?


 その通り。


 俺が目指す職業は、アスリートの(いっ)(しゅ)

 



 その職業とは――

 



 ――レーシングドライバー。




 平たくいえば、4輪の自動車でレースをするレーサーだ。




 俺はかつて、全日本(エフ)(スリー)というレースに出場していた。


 F3っていうのは、まあ(エフ)(ワン)の孫みたいなもんだね。


 レースに興味が無い人でも、F1って言葉ぐらいは聞いたことがあるだろ?


 タイヤが剥き出しで、でっかい羽根のついた細い胴体を持つ1人乗りの車。


 そういうのを、フォーミュラカーっていうんだ。


 俺はそのフォーミュラカーの頂点である、(フォーミュラ)(ワン)を目指していた。




 え?

 プロのレーサーだったのかって?


 それを尋ねられると、ちょっと答えづらい。


 


 (じつ)は俺、プロのレーサーじゃなかった。


 


 父さんが、大企業の経営者でさ。


 チームに資金を持ち込むことで、何とか乗せてもらう――いわゆる、ペイドライバーってヤツだった。




 「このボンボンがー!」とか、言わないでくれよ。

 

 俺自身、結構気にしてるんだからさ。 




 それに日本のレース界じゃ、チームとの契約金やスポンサー収入だけで食っていける純粋なプロってほんのひと握りなんだぜ?


 もちろん、親父に頼りっぱなしってのも恰好がつかないよな。


 プロになるべく、必死で走ったよ。


 速くなるためなら、何でもやった。


 自動車やそれに関わる工学系の勉強はめちゃくちゃやったし、ハードなトレーニングで体を鍛えていった。


 それこそ、サイボーグかよっていうぐらいに。




 それでも、結果は出せなかった。


 

 

 F3に上がって1年目でチームを放り出され、その後は色んなチームを転々。


 経験を積んで成績を伸ばすどころか、毎年成績が落ちていった。




 そんな落ち目だった俺だけど、新しい環境で走る機会(チャンス)を与えられたんだ。


 この機会(チャンス)、絶対に(のが)しはしない。


 今度こそ――


 今度こそ俺は、プロのドライバーになってみせる!




 そのためにも、まずは筋トレだ!




 何で自動車を運転するのに、体を鍛える必要があるのかって?


 いっつもそれ、言われるんだよな~。


 「車を走らせるだけなんて、楽なもんでしょ?」ってね。


 普通に街中で車を走らせるのと、レーシングスピードで競技用の車を走らせるのは全然違う。


 例えばカーブを曲がる時。


 俺の乗ってたF3だと体重の約2.5倍の遠心力で、体が外側に吹っ飛ばされる。


 体重60kgの人だと、150kgぐらいの力でだよ?


 そんな力に耐えながら、まともに運転できると思う?


 どうだい?


 レーシングドライバーに筋力が必要な理由、分かってもらえたかな?




 というわけで俺は、黙々と筋トレをこなす。


 熱くなった体からは、湯気が立ち昇っていた。




 腹筋運動が、3セット目に差し掛かった時だ。


 天井に備え付けられたLEDシーリングライトと(いっ)(しょ)に、2つの人影が視界に入ってきた。




 俺の両親だ。




「お前、いったい何をやってるんだ?」


 彫りが深い顔から心配を(にじ)ませて、(のぞ)き込んできた巨漢の男性。


 俺の父さんだ。


 何って、そりゃ筋トレさ。


 男なら人生で(いち)()()()は、筋トレに打ち込む時期があるもんだろ?


 そう答えようと思ったんだけど、今は息が上がっている。


 (しゃべ)るのは、少々(おっ)(くう)だ。




「もしかして……トレーニングをしてるの? やめなさい! そんなことをして、体を壊したらどうするの?」


 栗色の髪をハーフアップにしている、耳が少し()()()美女。


 こちらが俺の母さんだ。




 母さんは、過保護だな。


 ちゃんと過剰トレーニング(オーバーワーク)にならないように、計画的なトレーニングをしているんだよ。




 それに、俺の体は()()()だ。


 数時間も経てば筋肉痛がきて、明日の朝には完全回復してしまう。


 心配ご無用。



 

 ――あ。

 ひょっとして、息子が筋肉ムキムキになるのが嫌だったりする?


 そんなことはないよな?


 母さん、筋肉好きだろ?


 だって父さんが、ゴリマッチョだし。




 母さんを不敵なスマイルで安心させて、トレーニングの続きを始めようとした。


 だけど、どうやら失敗したみたいだ。


 さらに不安の色を深めた母さんは正面に回り込み、俺の両肩を押さえて腹筋運動をやめさせた。






「だから、やめなさいってば! ランディ、あなたはまだ子供……2歳児なのよ!」






どうも、この物語の主人公、ランディことランドール・クロウリィです。

第1話を読んでくれてありがとう。

図々しい話だけど、ついでにお願いがあるんだ。


「2歳児が筋トレなんて面白い」とか、「続きが気になるよ、早くレースするシーンを見せろ」とか思った人は、この作品をブックマークしたり、評価をして欲しい。


やり方は簡単。

画面上に出ている黄色いボタンからブックマーク登録。

この下にある★★★★★マークのフォームから、評価の送信ができるよ。


評価してもらえたらどうなるかって?


スポンサー企業がつくかもしれない。

自動車レースって、物凄くお金が掛かるからね。お金大事。

……というわけで俺がレースできるよう、みなさんよろしくお願いします。

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本作にいただいた、イラストやファンアートの置き場
ユグドラFAギャラリー

この主人公、前世ではこちらの作品のラスボスを務めておりました
解放のゴーレム使い~ロボはゴーレムに入りますか?~

世界樹ユグドラシルやレナード神、戦女神リースディースなど本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[良い点] 2歳児筋トレw いつかネットで見た超マッチョな海外の幼児の画像を思い出しました。 [気になる点] 面白い1話目だと思いますが、おそらくレースシーンが山場の作品ですし、読者もそれを期待すると…
[良い点] 2歳児の筋トレ面白いですっw 面白い出だしですっっ
[良い点] ワクワクな始まりに期待度が高まりますっ! 待ってましたっ! これでまた日々の楽しみが増えます。
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