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元走り屋の思い出話  作者: 走り屋次郎
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走り屋に勝てると調子に乗った若者の末路

走り屋をやっていると時々、目にする人間がいる。

大半はセダンに女を助手席に乗せて現れ、走り屋の後を追って、どこかで突き刺さって止まっている。

他人ができるんだから自分もできるというのは、走り屋の世界にとって正気を疑うレベルの一言だ。

私は2,3年で"峠の走り屋"をやって、今は辞めたがそれでもなかなか腕のいい走り屋になれたと自負していた。


それはある日の夜、私がスタート待ちしていた時、後ろから黒いセダンが止まった。

マジェスタの型落ち車。

いざスタートすると、ベッタリと煽られたのだ。

前半区間はストレートだらけ、最高速度200km近くは出るコースで、後半から一気にコーナーだらけの恐ろしい場所なのだ。


こちらはスイフト、相手はマジェスタ。

直線だけならもはや勝ち目はなく、あっさりとマジェスタに追い抜かれてしまった。


追い抜いたマジェスタはちょこちょことブレーキを踏みながら危うい走りで先行していく。


2,3年も走り屋をやっていると技量を瞬時に見抜くこともできる。


マジェスタが明らかに無茶な走り方で私は嫌な予感がして思わず、距離を開けて様子を見ていた。


"長いストレートの後にはヘアピンがある"このセオリーは実在していた。

私がホームグラウンドにしていた山も、そのセオリーが値した。

長いストレートからの左ヘアピンカーブ。


マジェスタはそれを知らないのか、コーナー手前のブレーキングポイントで踏まず、コーナーの中腹でブレーキを踏み込んで突っ込んでいった。


キキキキキィイィィ~…ガシャン!パリン…という事故を防砂堤で奏でて跳ね返ってくる。

人は危険な事になるとスローモーションに見えるというが、あれは事実なのだろう、私にはスローに見えたのだ。

マジェスタが衝突の反動で、私の車に向かってバックで跳ね返ろうとしてるのを目撃した。


私は内側のガードレールをガリガリガリと擦りながら、1台分ギリギリの所で抜けて止まった。


あのとき、不思議な事に冷静にハンドルを右に切れたのは未だに鮮明に覚えている。


その後、私は停止し、マジェスタの運転手を見ると、エアバッグで鼻をやったのか、鼻血が出て痛そうにうずくまる若者と、泣いてる女が横に座っていた。


事故の音は割りと響きやすい。

ギャラリーコーナーから下ストレートギャラリーゾーンまであの事故の音は響き渡った様で、ぞろぞろと大量に走り屋達が集まった。


マジェスタはクラッシュの衝撃で、両方のドアが開かず、やむを得ず走り屋達は窓ガラスを突き破って運転手と、その女を救助した。


そこからまた警察が現れて、いい加減な現場写真を納めてそそくさと帰り、また積載車を呼び、運ばれて行った。

聞けば、若者は私の家の近くだと言われたので、仕方なく、若者の家に送ってやったのだった。


「もう二度と走り屋を追いたくない」


若者は真っ青な顔で私に言ったのだった。

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