対立と融和
第二次世界大戦終結後世界は西側と東側の対立による冷戦の時代を迎えた。歴史上最大の戦争は熾烈を極めた。結果的に枢軸国は連合国に降伏。日本は戦争の敗北により関西、九州をアメリカが、関東、東北をソ連が分割占領した。だが冷戦の激化はアジアにも及び南北に分断された朝鮮やベトナムのように日本も南北分断された。ソ連占領地域は日本人民共和国(北日本)が成立。アメリカ占領地域は大和民国(南日本)が成立。同じ民族同士が激しく対立した。北日本は共産主義を掲げる国家で秘密警察、強制収容所、一党独裁が特徴だ。首都は札幌市。一方の西日本は資本主義を掲げる国家。自由貿易が行われ人権が尊重されている民主的な政治体制だ。首都は福岡市。正反対の国家が存在する分断列島に朝鮮戦争の影響で戦争が起きた。日本戦争と呼ばれる戦争である。列島統一を目指す北日本が南日本に侵攻したのだ。当初はソ連軍の支援を受けた北日本が優勢だったが徐々にアメリカ軍が支援する南日本が反撃を始め、一進一退の攻防の末に朝鮮戦争と同様に南北停戦協定を結ぶに至った。現在も南北日本は非武装地帯を挟んで激しく対立している。あれから七十年以上が経過した。この分断された国にとある軍人の女性がいた。この国を変革させる人物である。そしてあと二人。北日本の赤い大地に一人の女性が生まれた。彼女の名は嶋村雪香。南日本の青い大地に一人の女性が生まれた。彼女の名は坂村未来。この二人の娘が分断された列島を統一しようとする。
北日本の首都札幌市では今年で七十年となる日本戦争停戦記念日を祝うため、続々と軍部隊が集まっていた。北日本の軍隊である日本人民赤衛軍は五つの軍から構成される総軍だ。陸軍である日本人民赤衛地上軍、海軍である日本人民赤衛水上軍、空軍である日本人民赤衛気上軍、上陸してくる敵部隊を殲滅する国土防衛軍、戦略兵器で瀬戸際阻止をするロケット戦略軍。この五軍が各師団や大隊を率いてパレードを行うことになっている。式典には国家の最高幹部のみならず共産圏や同盟国からも来賓が来られる。国家の威信をかけ、盛大に行わなければならない。式典には執権政党の日本共産党の最高権力者である書記局長が出席なされ、演説をなさる予定だ。偉大な指導者である。兵士達は皆、指導者のために働いているのだ。その式典で一人タバコ吸っている軍人がいた。目付きの鋭い女性だ。共産主義国らしい軍服には少佐の勲章が着いていた。大隊の隊長である。殺気を忍ばせた凄腕の軍人。阿知波涼華少佐はタバコは深々と吸い込むと、北日本の革命気運満載の空を見上げた。ここには偉大なる指導者様がおられる。私の役割はその守護だ。そのために厳しい訓練に勤しんできた。北日本の建国者宮本主席に仕えた将校だった祖父や祖母は誇りだ。父母も曽我委員長に忠誠を誓った。今度は私が仁科書記局長に忠誠を誓う。大変名誉なことだ。そしてこのパレードも必ず成功させる。北日本の誇りを世界にアピールチャンスなのだ。阿知和少佐はタバコを捨てると、部隊に向かう。いよいよ式典が始まるようだ。興奮が頂点に達している。兵士達が最敬礼をしている。壮大な音楽の元、遂に書記局長閣下がお出でになられる。少佐も最敬礼で応じた。ついに始まった式典。中央広場を見下ろす巨大な宮殿は革命のシンボルでもある。その最上階から姿を表したのは北日本の現指導者、仁科誠人書記局長だ。仁科書記局長は北朝鮮との関係を重視してきた。共に東アジアの分断国家であると同時に中国とも関係が深いため同盟も結びやすかった。仁科書記局長は南朝鮮や南日本との関係上、ソ連や北朝鮮との外交から戦争中の損害は南日本に責任があると見なしていた。第二次世界大戦の敗北は南日本に賠償を要求しろと言うことだ。これに対し、南日本は激怒した。だが、南日本は北日本と北朝鮮程南朝鮮とは上手くいっていない。南朝鮮、韓国は戦争中の賠償を南日本に求めているのだ。仁科書記局長の政治力は卓越している。阿知和少佐は絶対に書記局長に付いていくと決心していた。
「諸君!親愛なる人民達よ!我が同士達よ!今日は祖国統一戦争七十年目の記念すべき日だ。南日本に我々の力を見せた時、奴等は恐れ戦き震え上がった。我々の力は強大である。低俗な南側とは士気も精神も違う。よって日本列島は我々共和国が支配して当然なのだ。資本主義者達に我々の偉大な思想を思い知らせてやる必要がある。不当に占領された南側を解放しなければならないのだ。共和国の未来のために、共に戦おうではないか!日本人民共和国万歳!」
書記局長の演説に会わせて観衆から熱狂的な歓声が上がる。阿知和少佐は感嘆の拍手を送った。続くパレードでは軍部隊が壮大な行進を見せる。北日本の頑健ぶりを見せる機会なのだ。盟友達も喝采を送っている。少佐の部隊も行進する。この何とも言えぬ高揚感が堪らなく好きだ。何れ訪れるであろう南北日本の戦争開始の為にも訓練に励まねばならない。南北日本統一は日本人民の切なる願いだからだ。パレードは圧倒的な熱気に包まれていった。
式典終了後、北日本の兵士達は宿舎に戻った。ゆっくりと疲れを癒し明日の訓練に備えねばならない。訓練された兵士達も主席を前にしての大パレードはさすがに疲れるらしい。早く風呂に入るもの、ベッドに入るもの、食事をとるもの様々だ。その中でも人民赤衛地上軍の伍長である嶋村雪香は何も感じていないとでもいうかのように筋トレに打ち込んでいた。伍長はとても優秀な兵士で将来の出世は間違いなし、阿知和少佐の期待も掛けられていた。そんなエリートである嶋村伍長の胸にはある野望がある。それは南北日本の統一だ。この列島が超大国に真っ二つにされて七十年以上が経過した。それでも未だに進展しない状況に彼女は苛立っていた。それもそのはずでお互いの戦争状態を廃棄しないからだ。どちらも虎視眈々と攻め入る時を窺っている。私が何とかしなくてはと意気込んだとき阿知和少佐が宿舎に入ってきた。真剣な面持ちである。
「嶋村伍長!いるか」
「はっ!少佐」
嶋村は敬礼し少佐と向き合った。
「君に最重要任務の召集が出た。伍長には南北合同の軍事会談に出席して貰いたい。これは書記局長のお達しでもある。」
少佐は開口一番にとんでもないことを言った。私が選ばれた?
「少佐!お言葉ですがどう言うことでしょうか?」
「我が列島が南北に引き裂かれてから七十年以上が経った。書記局長は南の首相と連絡を取り、向こうでも行われていた式典に会わせて軍事的会談を開くことで合意した。両軍の兵士を連れての出席になる。これは歴史的な第一歩だ。我が軍で最も優秀な伍長にこの任務を任せたいそうだ。」
「ありがとうございます!」
嶋村伍長は感動していた。まさか自分が国家的プロジェクトの中枢に入れるとは。これはもしかしたら私の計画が実現の時を迎えたのでは。伍長は使命感に震えた。
「来月の予定だ。それまで訓練に勤しむように。」
阿知和少佐はそれだけ言うと立ち去っていった。嶋村伍長の胸に熱い思いが込み上げてきた。
その頃南日本でも式典が執り行われていた。
南日本の首都福岡市では日本戦争停戦の記念行事が行われ、軍人達は皆忙しなく動いていた。パレードの前の首相の演説を聞くために皆最敬礼で集合している。南日本の国防を担当する大和守衛軍は五つの軍から成る軍である。陸軍相当の大和守衛陸軍、海軍相当の大和守衛海軍、空軍相当の大和守衛空軍、国土を未然に敵の上陸から守り抜く大和守衛奇襲軍、ミサイルを撃墜する大和守衛ミサイル防衛軍の五つ。敵国は依然として北日本だ。日本戦争停戦後はいつ侵攻してくるかわからない北日本軍を警戒してきた。日々の過酷な訓練も身に染みる。そろそろ首相の演説だ。大和守衛軍少佐の青崎智也少佐も演説を心待にしていた。観衆の声援を受けて首相が登壇した。演説の部隊は首相官邸の最上階だ。大和民国首相の明智幸紀の登場だ。明智首相は国民に向かい合うと礼儀正しく一礼し、文書を取って読み始めた。
「国民の皆さん!この所日本列島を巡る情勢は悪化の一途をたどっています。北側日本の武力衝突の挑発、対南工作、経済妨害等キリがありません。私はこの事態を解決するため北の同胞に南北首脳会談を提案しました。北側も快く受け入れてくださり、会談は順調に進み合意にいたりました。しかし、それだけで平和を掴めるわけではありません。問題は山積みです。それに北は現在も軍事行動を仄めかしており油断ならない状況です。建国以来、食料時給などで来たに遅れをとった我々ですが今日では先代首相の卓越した政策の元見事北を越える経済力を身に付けました。これを維持し更なる発展を目指していく。今は南北国境を警備させ北の侵入を封じ込める。北の妨害を防ぎ円滑に経済を成長させる、これが優先的な策であります。これから最悪の結果である日本戦争の再開は避けたいところです。しかし、北の指導者達が武力に訴えてきたという場合は全力をもってこれを迎え撃つ覚悟です。我々は決して悪には屈しない!強い日本を作っていきましょう!」
首相の演説を聞き民衆達が沸き立つ。さすが日本の首相は言うことが違うと青崎少佐も感心する。パレードも大成功だった。資本主義の同盟者達も日本の力を見て絶賛していた。俺の部隊も絶好調!何とも気分が良い日だ。
式典終了後も守衛軍の伍長坂村未来は沈黙していた。何故なら南北の対立が激化すればするほど緊張状態が続く。今の現状を打破したい。それにはどうすればいいのか。青崎少佐は良き理解者だ。私はこの事態を重く見ている。何十年も経ったまま分断されていても何に成るのか。
「日本が一つになれば」
他の兵士達が休憩するのも省みず坂村伍長は兵舎を忙しなく歩き回った。そこへ青崎少佐が入ってきた。
「坂村伍長、いるか」
「はい、何でしょうか」
「伍長、君にはある重大な任務を下すことになった。南北合同の軍事会談に出席してもらいたい」
「わ、私がですか?」
「全軍で一番優秀な君に首相も期待しているんだよ」
「はっ!」
最敬礼で応じたのを見て青崎少佐は宿舎を去っていった。
「では後程な」
なんということだ。私は統一を夢見てきたがここにきてこんな貴重な任務を与えられるとは。これは決して無駄にしてはならない。決意を胸に伍長はトレーニングに励んだ。
三ヶ月後、非武装地帯
北日本と南日本の国境線であるこの地帯は南北両方の部隊がそれぞれの境界線を警備することになっている。そこには大小様々な施設が建設されていた。中央の巨大なホール。そこに南北両軍の兵士が集っていた。北側は金谷博之中将と阿知波涼華少佐と嶋村雪香伍長、南側は美月勇次中将と青崎智也少佐と坂村未来伍長だ。両者は敬礼したがその本心は敵対心で煮えくり返っていた。当然と言えば当然だが。両者は会議場がある建造物に入った。資本主義と共産主義の意匠がバランスよく組み込まれたこの部屋は南北融和の願いが込められているようだった。両側に両軍の軍人が座る。阿知和少佐が椅子に座ると口を開いた。
「今日は南側との合同会談。余計な話は無しで終わりにしたい。わかったか、青崎少佐」
阿知和少佐が鋭く言うと青崎少佐はやれやれといった感じで返答する。
「そんなに噛みつくなよ。俺とお前は合同作戦以来の中だろ。もっと慕ってくれても良いんだぜ。」
青崎少佐が軽口を叩くと阿知和少佐は黙り混んだ。相手にしたくはないようだ。上官達の言い合いを聞いていた伍長達は顔を見合わせたがすぐに真顔になり挨拶を交わす。
「日本人民赤衛軍所属嶋村雪香伍長」
「大和守衛軍所属坂村未来伍長」
お互いに敬礼した。ここは素直に敬意を払っておきたい。相手の出方を見るのだ。中将達の挨拶も終わりいよいよ本題に入る。
「本日の軍事会談は南北両国の軍事力と兵器開発、防衛戦略についてだ」
「それについて少佐たちから説明してもらう」
それを聞いていた阿知和少佐と青崎少佐が立ち上がり資料の書類を見ながらスクリーンの画像を説明する。スクリーンには列島の全図と各防衛拠点、そして南北の主要軍事基地が写し出されていた。
「我が共和国の予算は数十年間国防に注ぎ込まれてきました。軍備の拡張です。最新鋭の武器装備、錬度の高い兵士を育成する人件費、そして豊富な燃料というように幅広く軍拡をしてまいりました。そのためには予算を浮かすため自国内の資源確保を検討しております。主な場所は北海道です。資源は豊富ですがそれを発掘するための技術力の不足は否めません。しかし大国の助けを借りると必ず横取りされる。対価を要求してきます。そうなっては元も子もありません。そこでわが共和国では南側の信頼できる技術を提供していただきわが共和国の莫大な地下資源を発掘していただきたいと思っています。南北両方の企業が作業をいたします。そちらの返答次第では案を考えます。」
阿知和少佐は説明を終えた。嶋村伍長は思った。なるほどこの会談では工業力を軍備に一点集中させている北日本の力を越えたレベルの資源発掘作業を条件を掲示して南側にやらせる狙いもあったのか。
「良い案だと思います。北海道は数多くの資源が眠っておりますが、わが共和国の力だけではとても採掘には持っていけません。南側の最先端の技術があれば大幅に改善できるでしょう。」
嶋村伍長が意見を述べた。
次は青崎少佐が紙を持って出る。「私からは南日本の現状について説明させていただきます。我が国では最近の経済成長を受けて新たな分野の開拓が必要であると考えました。新規開拓は更なる経済の発展を期待します。これは我が国の軍備を拡張する上でも重要なことです。そこで豊富な資源があるといわれる北日本の北海道を開拓し、一層の発展を共同で行うという合意を持ち込みました。鉱石、水源、油、これら資源はとても重要な資源です。これを南北で独占ではなく共有するというのは南北対立緩和の面でも有効かと思います。提供物資としては我が国が発掘のための技術、重機、予算の提供は半分、北日本は発掘のための人員、輸送手段、予算は半分を提供願います。」
「我々は輸送を担当すれば良いんだな」
北側中将が言った。
「その通り、機材は我々が用意します」
南側中将は丁寧に言った。
「では、異論はありませんね」
阿知波少佐の論。
「可決と言うことで」
青崎少佐の説明を受けて北側中将は沈黙した。意義はないのだろう。南側中将も黙っている。少佐達は何か言いたそうだったが黙ったままだ。伍長達は同じ言葉をいっていた。
「「話は揃ったようですので一旦休憩しませんか」」
その後も話が一段落すると休憩に入った中将達はお互いの話を続けている。少佐達は昔の話をして言い合っていた。阿知和少佐と青崎少佐は以前この地帯を警備する任務で一緒だったらしいが、常にお互いをライバルとして見ていたらしい。阿知和少佐はキツイ女性だが、青崎少佐は緩い男性だ。合わなかったのだろう。
「阿知和少佐は青崎少佐と因縁があるのだろうか」
「青崎少佐は立派な軍人ではあるんだが女性関係が奔放でな。阿知和少佐にしつこく言い寄っていたらしいんだ。」
「それは大変だな…」
坂村伍長の話を聞いて嶋村伍長は戦慄した。阿知和少佐は極限に男性に対してキツイことで知られていた。恋愛など興味もなく、男の話も一切聞かない、更に国家の忠誠だけを考える。そんな女性に言い寄る青崎少佐は命知らずなのか。
「常に争いが絶えなかったんだそうだ。」
坂村伍長も青崎少佐の女性関係の多さには驚いた。女性を見つけるととにかく口説く。それでいて何人も一度に相手にするようだ。ベッドには常に女性の下着があるそうだ。一夜を過ごした相手の。どれほど体力があるのだろうか。青崎少佐は隙あらば阿知和少佐にもそうしたいのだろう。それは不可能だが。その時阿知和少佐の声が聞こえた。
「智也!貴様は何故いつも軽率なのだ!弛んでいるぞ!恥を知れ、国家以外のことにうつつを抜かしている暇はない!」
「涼華は固いよな~まあそういうところもいいんだけどさ。北じゃこんなこと言われたことないだろ?今夜ベッド空いてるぜ?」
「貴様ッ~!」
少佐達はお互いに言い争っている。何だか微笑ましくもあるがこれはしばらく終わりそうにない。伍長はここで阿知波少佐のことを考えていた。私をよく理解してくれる理想の上官だった。私は阿知和少佐から戦闘を叩き込まれた。阿知和少佐は正に戦いを生き甲斐にしているかのような人物だ。最優秀兵士として対南作戦では輝かしい功績を上げたと言われている。その戦闘で青崎少佐と渡り合ったのだろう。私は阿知和少佐に列島分断の話をしたことがある。南北日本を統一してこそ真の平和があるのではないか。しかし、阿知和少佐の返答は極めて細部を練ったものだった。
「列島統一には交渉ではいかないかも知れない。もしかすると戦争かもしれん。その時お前はその思想を見いだせるのか?話し合いでは解決できない相手もいる。お前は戦争の極限で真の平和を知るだろう。」
阿知和少佐は厳しい言葉をかけてくれた。私の考えは愚かだった。列島が統一されてもそれに至る過程で用意されているのは戦争だろう。ここまで緊張した情勢で話し合いでの解決はとても難しい。それに阿知和少佐は統一後もとてつもない差が開いた南北日本の経済力がそれを阻害すると言った。北日本の経済力では南日本の経済力に太刀打ち出来ない。北日本は農林水産業が中心だが南日本は重工業がメインだ。それを鑑みても無理矢理統一したところで国民の反発は必須。統一後の情勢も鑑みて物事を考えないと結局は戦乱の要因に成るだけだ。そのため、この南北の軍事会談で北日本の埋蔵資源を南日本の力を借りて採掘するのは良い案だと思った。他国に取られるよりは南北で分けあった方が互いの利益に成るし、北日本も、南日本の技術を吸収して更なる発展が期待できる。南側と近い経済力が持てれば統一後も均衡が保てる。そのためには両国がバランスよく配分しなければならない。偏りがあってはならない。物資は南に出してもらい採掘は北がやる。掘り出した資源はきちんと分配する。これでお互いの良い所悪い所を理解しあい補え会えればこれ程良いことはない。私の夢も叶うかもしれない。統一は恐らく国民の願いだ。私は会議の資料を取り出して坂村伍長に見せた。
「この部分」
「ああ、これか」
それは次の議題である兵器の提供について。そこには南北共同の兵器開発案があった。